第9話
私の願いは中途半端に叶って、出向いた塾は近からず、遠からずといった具合だ。
塾の確認を済ませた事で殺人する準備は整った。
実行日まで待つのみである。
因みに和貴を殺す日は私の通う学校が午前帰りの週のうち1日だ。
健一の母が営む塾もかなり私の通う学校と癒着しているので、午前帰りのその週は午後1時ごろから特別に塾の授業をするらしい。
その週に合わせると元々予定していた殺害する日より少し延びてしまうが仕方ない。その週の何処かで殺そう。
私は静かに時を待つ事にした。
その間特に何もしなかったが、時間は早く過ぎ去った。
早帰りの週の最初の日、つまり月曜日に私は和貴を殺す事にした。
つまり、今日私は和貴を殺すのだ。
12:32
健一の兄のいる塾に向かう前に私は廃墟に立ち寄った。
手持ちだと危ないので廃墟の2階に銃を忍ばせておく。
そして和貴を釣るために廃墟の敷地を奥に踏み入れた場所にある物を置いた。
それはダンボール箱に入った子猫だ。
おびき寄せるのが目的なので廃墟の中の薄暗い場所に猫を隠しておく。
猫、それは和貴には価値があり、ガク君は疎むものだ。
2人を遠ざける事で和貴への狙撃に集中できる。
子猫はかなりうるさく鳴くので気付かない事はないだろう。
準備は整った。
私は塾へと小走りで向かう。
塾には私の学校の制服の人々が沢山おりその中に私も溶け込む。
そんな中甲高い声が私の背後で響いた。
「あれ、瑠璃子ちゃんこの塾通ってたんだっけ?」
「あ、夏子ちゃんじゃん。私今週中はこの塾に通うつもりなの!よろしく」
私は表情を明るくして言った。
夏子とは私の学校で同じクラスの友達だ。
成績は良い方。しかも優しい子だ。
塾で知り合いと会うという既成事実が今できた。
この子も私のアリバイ工作の一員になってくれるだろう。
夏子の素敵な笑顔に魅せられて私まで微笑む。
「そーなんだ!見かけたら声かけるね」
「うん!私も声かけちゃお。じゃあね」
そう言い残し、私は健一に教えられた教室へと向かう。
特進Aクラス、特進Bクラス、基礎Aクラス、基礎Bクラスという四つのグループがあり、そのうち私が行かなければならないのが基礎Bクラス。
基礎Bクラスは廊下の突き当たりにあり、そこで健一の兄が私を待っている。
教室に入ると健一の兄は私に席を案内する。
無論私は授業を受ける気はない。
銃殺で失敗した場合について健一と電話で話すつもりだ。
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