第9話

「セカイの特殊能力?」

「うん、そういうのない?」

 朝、私は少しでも戦いを楽にしたいのでミナにセカイ・ヤマダに最強チート能力は存在しないか聞いた。

「んー。セカイは物理的に強いから魔法みたいな能力は私も知らないのよ。あるにはあるみたいなんだけどってセカイ本人に言ってるの変な感じ、早く記憶戻ると良いわね!」

「ありがとう。うーん、あるにはあるんだ」

 強すぎて誰にも見せたことないというパターンか。

 その能力が強すぎて見た者は必ず死ぬから知名度が広まらないみたいなモノかな。

「アタシは回復魔法専門だからセカイにいつも守ってもらって……うん、いつもありがとうね。セカイ。なんだろ、記憶失ってるからセカイなのにセカイじゃない人と話してるみたいで、記憶がちゃんとあるときにもっとありがとうって言っておけば……」

 ミナは思いが溢れたのか泣いてしまった。

「嬉しいよ、ミナ。私もミナの回復のおかげで何度も助けられてきた。記憶があるときに私も、もっとありがとうって言っておくべきだったよ。ありがとうミナ。これからもよろしくね」

 私はそう言うとミナの手を握っていた。

 確かに私の口から出た言葉だけど私の言葉ではない。

 手を握ったのも私ではない。

『セカイ』の言葉、『セカイ』の行動だ。

 ミナの手を握るまでの間、私にセカイが憑依したかのような感覚に囚われた。

「セカイ……記憶戻ったの?」

「一瞬だけね」

「そっか……これから少しずつ記憶戻していこうね」

 ミナの涙に罪悪感がわく。

 記憶が無いんじゃない、私は別人なんだ。

 魔王と戦う前に情報として徹底的にセカイを知る必要がある。

 これはラオ、カカノシン、ブリキロボの三人にも話を聞く必要がある。

 セカイ・ヤマダについて。


 捜査パート突入みたいになってしまった。

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