第6話


 退院後にレベル確認のためバトルさせる仲間たち。

 うーん。ゲームならあるだろうイベントだけど、実際やらされると

「こいつらマジか?」てなる。

 そして第一ステージでザコ敵がいる森に入った。

「やっぱスライムから倒すの?」

「スライム? 今のセカイにはまだ早いわよ」

「私、スライム以下なの?」 

「はっはっは! いきなりスライムと戦いたいとはさすがセカイだな! 退院直後にスライムと戦わせるほど俺たちも鬼ではないぞ!」

 スライムってザコ敵の代表じゃないの?

「まあ、前のセカイなら楽っちねー」

「我の計算もそうだそうだと言っている」

「えーじゃあ何と戦うの?」

「やっぱ最初はねー」

「「「「コドモドラゴン」」」」

 私以外の4人が声を揃えて言った途端、キシャーーー!と2メートル程の羽の生えたトカゲが現れた。

「退院後に戦う相手じゃなくない?」

「大丈夫だよ。コドモドラゴンは子どもでも倒せるドラゴンて意味だから!」

「え、子どもってそっちの意味!?」

 ドラゴンの子どもじゃなくて、子どもでも倒せるからコドモドラゴンて、なんてネーミングなんだ。

 私は不慣れながら腰の剣を抜いた。

「ほう、剣の構えは忘れてないようだな?」

「私も驚いてるよ……ラオ」

 中学の剣道部の経験がここで発揮されるとはね。

 セカイの筋力のおかげで剣が竹刀より軽く感じる。

「ん? セカイ何やってんだ?」

「我の計算にもなんだあれと出てる?」

「セカイ、その構えはなんだ?」

「ん? あっ」

 私は剣道の流れで膝を曲げ、腰を落とす蹲踞そんきょまでしていた。

 蹲踞そんきょとは試合前にする作法みたいなモノである。

 これは試合ではないからする必要はもちろんないがしてしまったから仕方ない。

「ああ、これは新しい構えだよ……」

 私がそういって立ち上がった瞬間、コドモドラゴンが突っ込んできた。

 しかし、不思議とドラゴンの動きが見えた。

 真っ直ぐ突っ込んできたドラゴンを横跳びで避け、私は叫ばなくても良いのに叫びながら剣を振り下ろした。

「でぇああああああああああああああああああ!」

 ドラゴンの首がドチャっと音を立てて落ちた。

 血がドバドバで断面図が見えてグロい。

「さすがセカイね!」

「退院後にコドモドラゴンを一振りで倒すとはな! すげーぜ!」

「セカイ、退院してまた強くなったんじゃないっち!?」

「うむ、そうだな」

「でもスライム以下の敵なんでしょ?」

「スライム以下だとしても退院直後に一撃はすごいよ! 最低でも10回は攻撃しないと倒せないのに!」

 この世界の基準がわからなくて何がすごい基準なのかわからないけど、気分はとても良いな。

「私のレベルどれくらいだった?」

「コドモドラゴンを一撃だからレベル20だね!」

「いきなり上がり過ぎじゃない? 慣れるまでレベル5くらいに……」

「レベル5で戦ってたら前に進まないわよ。これなら数日でまた魔王を倒しに行けるわね!」

「いや、今すぐにでも行こうぜ! 旅の途中でレベル上げてけば良い!」

「賛成だっち!」

「我の計算も……」

 ええい、人の意見を聞かない奴らめ。

 しかし、セカイ・ヤマダもこのような苦労をしていたのだろうか?

 

 

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