第4話

 

 山田世界と違ってセカイ・ヤマダの身体は筋肉で引き締まっていた。

 おかげで剣が軽い。

 山田世界なら一ミリも持ち上げられなかっただろう。

 セカイ・ヤマダで過ごせば過ごすほど山田世界の欠点が見えてくるだろう。

 セカイ・ヤマダは一ヶ月くらい眠っていたらしく目覚めたら三日後に退院した。

「私の家どこ?」

「そうか。家も忘れたんだな。ここまで記憶喪失だと危ないから、しばらくはアタシの家に住もう。家賃は魔王討伐のパーティ費用で国が免除してくれるし」

 パーティってファンタジー用語で仲間とかだよね。

 パーティ費用だと遊ぶ金にしか聞こえん。

「あれ、魔王って倒してないの?」

「あと少しのところでみんな瀕死になって……セカイがみんなを魔王から逃げる道を作ったんだ……セカイの機転が無ければ瀕死じゃ済まなかったわ」

「へぇー……」

 私が推しの死でショック死したのにセカイ・ヤマダはずいぶんな活躍ですな。

「そうだ! セカイの退院祝いにみんなを呼ぼう!」

「あ、パーティの人たち? 会ってみたい!」

「じゃあ、『RAIN《レイン》』入れるね!」

 ミナは手のひらサイズの薄い板を指で操作し始めた。

「うーむ。まぁ、ファンタジーもこれくらいの連絡手段はないと不便だもんな……」

「ああ、セカイは記憶を失ってたわね。これはスマフォだよ」

「え、スマフォなの!?」

「スマフォだよ?」

 え、ここでもスマフォなの? 全国共通過ぎない?

 あーでもゲームも時代に合わせて現代機器取り入れるしな……。

「スイーツ・マトン・フォンデュの略でスマフォ」

「食べ物並べただけの略だ」

「セカイの記憶の混濁は変わってるわね。覚えてるようで覚えてないみたい」

「うーん。知ってるけど知ってるものと違うみたいな。パラレル的な」

「でも、セカイ自体は変わってないから安心した」

「そうなの?」

「うん。どこかとぼけてるけど頼れるところは変わってない」

 私まだ頼れるところ見せてないよ。

 ミナは良い子だけどたまにテキストがガバガバなゲームみたいなことを言うな。

「夕方にみんな来るって!」

「わあ、楽しみだなー!」

 新キャラとの対面はいつでも楽しみだ。




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