~After~理央の弟子?

 緋月の誕生日を聞いた日の翌日。


 この日、私は誕生日に渡すプレゼントや、いつも差し入れをくれる女の子達に渡すお菓子の事を考えながら登校した。


 そしてやっぱり教室に向かう道中で、いつもの子達から差し入れをもらいながら教室に着いた。

そしたら二人の男子生徒の後ろ姿が見えたんだ。


 何?

 誰だろう?


「一条理央さんにもお話があります!!!」


 え、私?

 なんか……威勢がよくて怖いからそっと違う入り口から教室に入ろう。


 私がそろりそろりと静かに教室に入ったのに、オサナ組の悠に声かけられてしまったんだ。


「お、理央、おはよ~。

お前にも客だぞー」


 悠ってば……私が何のために静かに教室に入ったと思ってるのよ……空気を読んでほしいな……。

 というか……お前にも……って?


「「一条理央さん!!」」


 またか……。

 ここは返事しないとだよね……。


「は……はい……って、あれ……この間の……」


 この二人の男子……この間食堂で委員長と伊藤さんに絡んでいた人達だ。

 なんか……雰囲気変わった……というか、変えた?

 金髪とかピアスとか派手な見た目が一変して控えめな茶髪になってピアスもない……。

 にしても、すごい体育会系のノリなんだけど……。


「あの! 俺たち、この間はすみませんでした!!」


「すみませんでした!!」


「え……」


「委員長さんやかわいこちゃんも、ほんと、すみませんでした!!!」


「すみませんでした!!!」


 委員長はわかるけど……かわいこちゃんって……伊藤さんの事かな……。


「う、うん……もういいから……」


「……さっきも聞いた……」


 私が来る前からこの状態なんだ……。


「あ、あの~……いったいどういう心境の変化が……」


「あの後、俺たちは気づかされました!!

自分たちがいかに未熟で、恥ずかしいやつだったかを!!」


「う、うん……。

……その大きな声……ちょっと抑えられないの?

廊下からすごく注目浴びてるんだけど……」


「すみません! あにさん! いや、あねさん!」


 おい、誰が姐さんじゃ。

 私はどっかの極道の者なの?


「理央……いつの間にあねさんに……」


「うわ……緋月……そんな目で見ないで……」


 緋月が若干引いてるじゃん!!

 なんなのこの人達!!


「理央すげぇ……とうとう弟子というか、子分が出来たんだな……」 


「子分の面倒はちゃんと見ろよー」


「悠や陸まで何言ってるの……。

というか、ほんと、どういう心境の変化なの?!」


「「俺たちを……弟子にしてください!!!」」


「人の話を聞きなさい!! 心境の変化を聞いてるの!!

あと、弟子にはしないから!!」


「俺たち……翔っちと話して目が覚めたんだ……」


 あ、なんか語りだした……しかも、翔っちって、翔にぃだよね……ほんと、何があったんだろう……。


「王子様みたいに颯爽と現れたやつに負けたのがただでさえ悔しかったのに……。

まさか女子だったとは!!」


「そうだ!

女子に負けただなんて屈辱!!

だけど、かっこよすぎてムカつきを通り越して惚れちまったんだ!!」


「その漢気に惚れ込んでこうして弟子になりたいと思ってきました!!

俺たちを漢にしてください!!!」


 ……。

 漢気……ですか……。

 あの一連の流れで何を間違えたらそうなるんだろ……。


「……なぁ……お前ら……漢気ある理央に惚れてるって言ったか?」


 ん?

 緋月?

 どうしたんだろう……というか……めっっっちゃ声低!!!

 しかもいつも以上に無表情!!!

 こんな緋月初めて見た……。


「へ……あ、あぁ……」


「ふーん……。

たしかに理央はかっこいいが……今後、恋愛感情持つなら許さねぇし、それに……本人が弟子にしないって言ってるんだから、この話はしまいでいいよな?」


 わー……緋月……とどめの笑顔……。

 目が笑ってないけど……。

 緋月は相手よりすごく身長が高いから、見下ろす形になってるよ……。

 それが余計に恐怖を感じさせるのかな……。

 相手の一人、顔真っ青でひるんじゃってるよ……。


「……」


「……かっけぇ……。

俺……あねさんの弟子もいいけど……こっちのイケメンあにさんにも面倒見てほしいかも……」


 あ……片方は緋月にうっとりしてる……。

 うんうん、たしかに今のはかっこいい。

 わかる。

 でもね……そんな目で緋月を見ないで欲しい。


「おーい、ホームルーム始まる時間なんだけどー」


「あ! 翔っち!!

俺たち、あんたの言葉のおかげで目が覚めました!!

ありがとうございました!!」


「っした!!」


「おー、そうかそうか!

ならほい! ご褒美にアメちゃんやるよ。

明日も頑張って学校来いよな!

俺がジュースご馳走してやる!」


「「マジっすか!! あざーす!!」」


「それじゃ、あにさん、あねさん! 失礼しました!」


「失礼しました!!」

 

 ……嵐が去った……。

 ほんと、なんだったんだろう。


「んじゃ、ホームルーム始めるぞー」


 よくわかんない出来事が起こったけど、何事もなかったかのようにホームルームが始まった。


 そういえば、あの時の緋月、無表情でものすごく声が低かったな……。

 ……女子の前でも無表情で……私が隼人達とじゃれていても無表情……。


 もしかして……ヤキモチ焼いたり怒ったり、嫌だと思ったら、無表情に……なるのかな……。


 ホームルーム終わったら……怒った理由とか聞いてみようかな……聞いてみよう。

 って言ってる間にホームルーム終わった……。


「ねぇ、緋月……」


「ん?」


「……さっき……あの元ヤン達に怒ってた?」


「んー……うん、まぁ……」


 やっぱり怒ってて……それで無表情になったのかな……。


「嫌なら……いいんだけど……怒ってた理由、聞いてもいい?」


「……」


 あ……言いづらい……かな……でも、無表情じゃないや……。

 これは……どう話そう……って顔だ。


「……突然、弟子になりたいとか言って、理央を困らせたのと……あいつらが理央の弟子になったら……理央と過ごす時間が減ると思った……から」


 陸が言っていた面倒見ろ……っていう言葉を気にしたのかな……。

 私との時間を確保したくて……それに、ちょっとだけ困ったのも見ていてくれたんだ……なんか、嬉しいな。


「……なんで笑ってるんだ?」


「ううん……なんでもない……」


「……ニヤついてる……」


「え、それはヤバい、引っ込める!」


「ふはっ……引っ込めるって……引っ込むのか?」


 あ、緋月も笑ってくれた。


 やっぱり、緋月は笑ってる方がいいな……。

 誰でもそうだろうけど……緋月に関しては、かっこよさが引き立つんだ……。

 ひいき目過ぎかな……。


 今は……無表情に関することは聞かずにいよう……。

 この笑顔……壊したくないな……。

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