~After~さらなる……

 私達が保健室から出て教室に戻るとオサナ組はもう教室に戻っていて、あの後の食堂での事を聞いた。


 委員長達に絡んでいた二人はその場で少し注意を受けて、生徒指導室に翔にぃと行ったと葵ちゃんから聞いた。


 なんでも、その二人の男子生徒は、同い年で、クラスは一組だそう。

しかも、予想通りのヤンキーみたいで、あまり学校には来ないとの事だ。


 翔にぃなら大丈夫かな。

翔にぃは男子生徒や女子生徒にも人気で、少しやんちゃな生徒にも人気がある。

兄貴肌……っていうのかな……そういうのは昔からあったんだ。


「あ、そういえば、理央ちゃんのお弁当。

はい、これ」


「ありがとう、葵ちゃん」


「あの……一条さん……」


 ん?

 委員長と伊藤さん……どうしたのかな。


「さっきは助けてくれてありがとう……。

ちゃんとお礼、言えてなくてごめんね」


「私も……ありがとう……。

ごめんなさい……」


「そんな、二人が無事でよかったよ」


「あの時の一条さん……かっこよかった……」


「うん……口調とか、それに……腕っぷしも強くてビックリした」


「腕っぷしは……武術を習っていたから……」


 二人とも、あの時の事はあまりの出来事に驚きすぎて何も言えなかったんだな……。

周りの人達も同じように……。

そうだよね、普通……そんなもんだ。


 でも……何はともあれ、皆に何事もなくてよかった。


 私たちが少し話していると、お昼休憩が終わるチャイムが鳴った。


 午後の授業も何事もなく全部が終わり、皆で帰路に着いたんだ。


あの揉め事で私に関しては、多くの生徒が見ていて、その生徒達や委員長、伊藤さんが証言してくれて、お咎めなしになった。


***


 その翌日。


 私はいつも通りに学校に登校してきたんだけど……。

何故か玄関先にプレゼントを持っている女の子達の大行列が出来ていた。


 なんの行列か疑問に思いながら靴を履き替えようと自分の下駄箱に行ったら、一人の子を筆頭に、その行列が私に押し寄せてきたんだ。


 え、ちょ、何?!

 こわ!

 この人数はさすがに怖すぎる!

 私は出待ちを受けるアイドルか何かなの?!


 その子達いわく、昨日の食堂での私の食べっぷりや、腕っぷしの事を見たり聞いたりして、再度惚れ直して差し入れとしてプレゼントを用意したとの事だ。


「理央ちゃん、おはよう~……って、すっごい人混み!」


「あ、葵ちゃん、助けて~」


「……うーん……私にはムリかも……。

身長的に埋もれる。

頑張って!!」


「そんな! 葵ちゃんの薄情者~!!」


 あ~葵ちゃん、巻き込まれまいと、この場からか離れた~!!


 私はいつもより倍の人数を一人一人どうにか対応していて、女の子達からの気遣いの大きい紙袋とかももらってその中にプレゼントを仕舞っていたんだけど、時間的にも厳しそうだったから、お昼休みに受け取る事を伝えたんだ。


 そうしたらわかってもらえて、教室に来ると皆言ってくれた。


 教室……教室か……クラスの皆にも一応伝えなきゃ。


 そういえば、もらってばかりも悪いしな……少し先のクリスマスにまとめてお礼をしよう。


 クリスマス……か……オサナ組とは過ごすけど、緋月とも……。

 あれ、その前に……緋月の誕生日っていつ?

 私、付き合ってるのに、全然聞いてない!!

 わー!おバカ!

 今日聞こう!

 今すぐ聞こう!!


 私は急いで靴を履き替えて、たくさんのプレゼントを抱えて教室まで走った。

 

 私、どんだけ廊下走るんだろう……。

 いつか罰がくだると思う……あ、教室!


「緋月! いる?!

いた!!」


「……おはよう、理央……。

どうした? そんなに慌てて……。

というより、またプレゼントもらってる……しかもいつもの倍の量……」


「おはよう……じゃない!

緋月の誕生日っていつ?!」


「え……誕生日? ……二週間後……だけど……」


 二週間後か……よし、間に合う!

 よかった!

 いろいろ準備出来る!

 あ……でも……。


「その日……って……何か予定……ある?」


「あー……いつも父さんと家で過ごしてる。

そういうイベント事はいつもより気合い入れるんだ」


 あ……緋月、照れた……。

 そっか……お父さんと……。


「今年は……私も……お祝いしたいなと思ったんだけど……」


「え……いいのか……」


「うん……。

一応、彼女だし……」


「……サンキュ。

ちょっと……調整してみる……」


 わ、また照れた……しかも嬉しそう……。

 二週間後……楽しみだな。


「そしたら、いつものメンバーで祝う時は日を考えないとだなー」


「あ、悠、おはよう」


「はよ。

というか、ホームルーム始まるぞ。

その荷物……どうにかした方がいいんじゃないか?」


 あ、そうだった!


 そうして午前中が過ぎ、午後になる頃、私はクラスの皆に朝あった事を話した。

少しだけ教室が騒がしくなる事も伝えたんだ。

皆優しくて、快く受け入れてくれた。


 それと同時に昨日の事を称賛されたり、イジラレたりもした。

緋月は少し眉間にシワが寄っていたけど……。


 で、迎えたお昼休憩。

 

 案の定、教室はプレゼントを持った子達で人だかりが出来た。


 その中で一人が転びそうになって、私がすかさず胸で受け止めたんだ。


「大丈夫? ケガはない?」


「は、はい……ありがとうございます……」


「よかった」


 彼女にケガがなくてよかった。

 安堵して笑みがこぼれた……それだけなのに……。


「……カッコイイ」


「ん?」


「……イケメン……。

キャーー!!」


「へ、あ、ちょ?!」


 なんで?!

 逃げられた!


「あーあ、理央ちゃんたら……罪な男……」 


「いや、私、生物学的上、女なんだけど?!」


 何言っているの葵ちゃん!


 もうしばらくこのプレゼントの嵐というか、ほとぼりというか、それらが収まるまで時間がかかりそうだなと私は他人事のように思った。

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