~After~レッツ、食堂

 緋月と仲直りして休みが明けた学校。

私はいつものように差し入れを受け取りながら教室にきた。


「おはよう~」


「おはよう、理央。

相変わらず、すごい量の差し入れだな」


 緋月、もう、登校してる。

 あれから、目も合わせてくれるし、笑ってくれるんだ。

 ちゃんと仲直り出来てよかった。


「失礼します、一条さんは……あ、いた」


「……生徒会長さん?」


 どうしたんだろう。

 朝から私の所に来るのはあの後夜祭イベントの提案以来だ。


「おはよう、一条さん。

今日はこれを渡しに来たの。

遅くなってごめんなさい。」


「おはようございます、これは……学食のタダ券?!」


「ふふっ……藤堂先生の言ってた通りね。

食べることが大好きと聞いていたのだけど……ふふ」


 あ……笑われてしまった。

 思わずテンションが一気にあがってしまったから……。

 まぁ、いいか、食べることが大好きなのはほんとだし。


「このタダ券、そこに書いてある期限内なら何回でも使えるようになっています。

それに、さっそく今日から使えますよ。

後夜祭では本当にありがとう。

企画通り、大成功に収まったのは貴方がたのおかげ……。

本当にありがとう」


「いえ、生徒会の皆さんにも手伝ってもらいましたし、私たちは何も……」


「ふふっ……それじゃ、用は済んだので、私はこれで」


「はい、ありがとうございます!」


 わー……学食のタダ券……いろんなものが食べ放題!

嬉しい!

何食べようかな。


「ふっ……理央は本当に食べるの好きだな……すっごいキラキラした目……」


 あ……そういえばここ、教室だった……。

 緋月だけじゃなくて、クラスの皆もにこやかだ……。


「良かったですね、理央」


「あ、隼人、おはよう」


「理央は本当、食べるの好きな」


「色気より食い気……」


「理央ちゃんらしいよね」


「皆、おはよう。

あ、そうだ!

さっそく今日から使えるみたいだから、学食いかない?!」


「別にいいが……お前、弁当忘れたのか?」


「いや? 持ってるよ、お弁当」


 陸ったら、何を言っているの。

 私がお弁当忘れるなんて言語道断よ。


「……今日も爆食決定だな」


「皆の分も注文するよ?

私のおごり!」


「いや、別にお前のおごりじゃねぇだろ……。

学校のおごりだ……」


「陸のくせに細けぇ……」


「おい、悠、どういう意味だ……」


「じゃ、今日は学食だな!!」


「無視すんじゃねぇ!!」


 やった!!

 学食楽しみ!!

 

 そうしてホームルームが始まり、私は午前中の間ずっと学食で何を食べようか

考えていた。


***


 ついに来たお昼休み、いつもは屋上か教室で食べるんだけど、今日はいつものメンバーでお弁当を持って食堂に来ていた。

ここに来るまでの間、私はずっと浮足立っていたと思う。

 

 終始緋月ににこやかな笑顔を向けられていたんだ……。

それはそれで恥ずかしいけど……。


「わー! 学食だー!」


「お前……はしゃぎすぎ……」


 だって学食だよ?!

 しかも、タダ券!!

 そりゃあ、テンション爆上がりよ!!


「あ、一条さんも学食? 珍しいね」


 委員長と伊藤さんだ。

 二人も学食なのかな?


「二人も学食?」


「うん、いつもここなの」


「そうなんだ」


「お~い、りおー。

ここ空いてるぞ~」


 あ、悠たち、もう席を確保した。

 仕事早いな。


「あ、じゃぁ、行くね!」


「うん、またね」


 ん~と……私の席はここかな。


「俺たち、ここで待ってますね」


「うん、さっそく並んでくる!!」


 私は食べたいものを注文して、席に運んで……を何度か繰り返した。

その結果……。


「おい……この間のファミレスみたいになってんじゃねぇか……」


「それに加えて自分のお弁当もあるんですよね」


「というか、あの時より多いと思うぞ」


 見事にテーブルいっぱいになったし、周りからの視線も浴びた。

 ちなみに私の席は真ん中だ。

 左側に悠がいて、右側に緋月がいる。


「……理央、入るのか? この量」


 あ……緋月……さすがにドン引くかな……。


「えっと……入るけど、緋月……ドン引く?」


「いや、引くというより、理央のお腹が心配になる……」


 緋月優しい……これは……言葉にすると、ハゥ!キュンって感じだよ。


「これくらいじゃお腹壊さないから大丈夫だよ。

心配してくれてありがとう」


「ならいいんだが……」


「では、いっただきま~す!


ん~……美味しい……幸せ……いくらでも入る……」


「理央ちゃんの食べる姿、やっぱり可愛い。

写真に納めとこう」


 あ、葵ちゃんがまた写真撮ってる。

 まぁ、いいか、いつもの事だしね。


「あ、そうだ、緋ーちゃん」


「……なんだ?」


「緋ーちゃんが男として覚悟を決めたら、私に相談してね」


「……なんでだ?」


 緋月の前に座る葵ちゃん……突然、緋月に提案した……なんだろう。


「理央ちゃんの可愛いさをその視界に納めたくないの……」


「……どういう事だ?」


「これ……」


「んぐ?!」


 ちょ、葵ちゃん?!

 緋月にスマホを突き出して見せてるもの……それ下着?!

 しかも、以前、体育祭の時に男装を解いた時に持っていた際どい下着!!


「……」


 ほら!

 緋月もフリーズしてる!!


「……きさ……あーさん……なんでそんなの持ってるんだ?」


「理央ちゃんの可愛さを引き出すのが私の使命だから!」


 まったく回答になってない!


「葵ちゃん、本人の目の前でそんな売り込みを緋月にしないで!」


「え~……可愛いし、絶対似合うと思うのに……。

ん~……じゃぁ……こういうのもあるよ!

緋ーちゃんはどんなのが好み?

谷間を強調させるタイプ? それとも……デザイン重視?

あ、あと、機能をほぼ欠いてこんなのもあるよ」


 またしても際どい!

 レースフリフリ!!

 セクシー過ぎんだけど?!

 最後に見せたやつなんて布の面積少なすぎ!


「……私、着ないからね」


「……着ないのか?」


「なんで二人してそんな残念そうなの……」


 まったく、どんなところで意気投合してるのこの二人は……。


 そうして私たちがおしゃべりしながら、自分の目の前のご飯を全て食べ終わって食堂を出ようとした時だった。

食堂の奥の方で人だかりが出来てたんだ。


 どうしたんだろう?


「ねぇ、あれやばくない? 先生呼んできた方がいいよ……」


 かすかに聞こえた話し声。

 

 なんか……やばい事が起こっているの?

こういうのは関わらずに先生に任せた方が無難で得策かもしれない。

 

 ……でも、私の性格上、黙って見過ごすなんてできない……。


 人混みをかき分けて見えた先には……。

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