~After~皆に恵まれて

 緋月と仲直りした日の朝。


 リビングに緋月と顔を出し、朝っぱらからタコ焼きパーティーを称して仲直りパーティーをしている私達オサナ組と翔にぃ。

 私の隣……左側には翔にぃがいて、右側に緋月が座っている。


「なぁ……俺、誓った事があるんだけど……」


 ん?

 なんだろう……向かい側に座っている悠が珍しく真剣な表情。


「絶対、理央には酒は飲まさねぇ!!」


 ……え?


「「同感」」


 同感……って……。

 陸や隼人まで……。

 え……私、ほんと、昨日何したの……。


「飲むなら、俺の前でだけ飲んでほしい……」


 緋月まで……。


「理央、一応、保護者的な立場で言わせてもらうが、お酒は二十歳になってからな」


「ご、ごめんなさい……」


「でも、昨日の理央ちゃん、可愛かったな。

普段かっこいいから、珍しい一面だったよ」


「……ちなみに、何したの?」


「……覚えてないの?

あんなに激しかったのに……キャッ」


「キャッ……って……その中身を教えて欲しいんだけど……」


「葵に抱き着いて、可愛いから食べていいかって腰あたりをお触りしてたぞ」


「え……悠、それほんと?」


「あげく俺にまで抱き着くし、お前の胸で窒息しそうだった……。

そんで陸が俺から引き剝がしてくれたけど、今度は隼人に抱き着いてたぞ」


「……葵ちゃんならまだしも……悠や隼人にまで抱き着いたの?

しかも、窒息って……」


 悠の顔を胸に埋めたって事?!


「……その時……緋月は……」


「棒立ちしてましたよ。

ちなみに、緋月のところに行くように言いましたが、見事にイヤだと振ってました」


「……緋月……」


「……ほんとの事」


 緋月に目配りしたらそっぽを向かれた……。

 そ、そんな……緋月の前で……。

 だからリビングに起きてきた時、あんなに散らかっていたの?

 でも、そんな事より。


「緋月……ちょっと来て」


「え、理央、ちょ、どこ行くんだ?!」


「いいから、こっち来て!」


 私は緋月を少し強引に引っ張って廊下に連れ出した。


(ドン)


「あ、あの……理央さん? なんで俺……壁ドンされてんだ?」


「緋月……お願い、私の顔をぶって」


「え……」


「お願い、私をぶって」


「いやいやいや、彼女の顔を殴れる訳ないだろ!」


「お願い! じゃないと気が済まない!

記憶がないから浮気していいって事にはならないでしょ!!」


「そりゃ、そうだけど、だからって殴れる訳ないだろ!」


「……なら……どうやって罪を償えば……」


「いや……そもそも、理央は浮気してないだろ」


「……したよ……。

緋月の前で、悠や隼人に抱き着いた……。

私にとっては幼馴染で、家族同然だけど、緋月は……。

緋月から見たら……二人は男の子でしょ……」


「……それは……そうだが……。

オサナ組なら……許せる……」


「……ウソ。

だって……この間、屋上で隼人と私のお昼のやり取りを見てた時の緋月、無表情だった……。

他の女の子達に向けるような興味なさそうな目だった……」


「……それは……ごめん。

正直……嫉妬した……。

俺だって……理央の隣に座ってお昼食べたかったし……隼人みたいに絡みたかった……」


「……うん。

だから……浮気の分類として、私をぶって」


「……ムリ」


 え……わ……おでこ……くっつけられてる。


「……理央を殴るなんてできない……というか、しないし、したくない。

だから……」


 あ……キス。


「……これと……あとは――」


 わ……耳元。


「皆がいない時に……」


「……」


 そんな事……耳元で言われたら、黙って頷くしか出来ないよ……。

それに……今、頬が……熱いのがわかる……。


「……戻ろう。

まだ食べてる途中だし」


「うん……」


 そうして私と緋月は、気恥ずかしさが残る中、また皆がいるリビングへと戻った。


「やっと来た!!」


「理央も酷だよな、彼氏に殴れって」


「え……陸、なんで……」


「お前、声でかすぎ……」


「ほぼ聞こえてたぞ」


「翔にぃまで……」


「青春だね~。

酒が進む~」


「翔ちゃん、おっさんくさいよ」


「なんだと、葵?!

俺はまだ二十半ばだ!!」


 うわー……廊下に出てドアを閉めたとはいえ、声の大きさ的に聞こえてたのか……恥ずかしいー……。


「そういえば、如月に聞きたいんだが……」


「名前」


「……あーさん」


「何?」


「き……あーさんは……理央の事、恋愛感情はあるのか?」


「……なんで?」


「いや……この間、屋上でキス……しそうだったし。

それなら、ライバル……だな……と」


「……はぁー?

緋ーちゃんがライバル?!

そんなの百年早いよ!!

この私が緋ーちゃんみたいなヘタレに負けるわけがないでしょ!」


「う……ヘタレ……」


 わー……葵ちゃん……緋月にヘタレ呼びだー……。


「はぁ、まったく……ないよ、恋愛感情。

理央ちゃんを少なからず傷つけたから、仕返しだよ。


屋上での事は、緋ーちゃんに見せつけてヤキモチ焼かせるため。

その後の隼人ちゃんの絡みも、きっと緋ーちゃんにヤキモチ焼いてもらうためだよ」


 あ、あの時の葵ちゃんの行動や隼人の行動……そうだったんだ。


「緋ーちゃんが全然素直にならないし、理央ちゃんの事ものすごく好きなのに、顔に出さずに気持ち押し込めるから、あーするしかなかったの」


「なんで……そこまで……俺に……」


「だって、緋ーちゃん、理央ちゃんが転校してくる前から胡蝶の事知ってて、RIONNの事知ってて……すごく惚れ込んでいたから。


だから、私たち、二人が恋心持ったら協力体制を取るって決めてたの」


「……だから、陸や悠、隼人もあんなに背中を押してくれたのか……」


 葵ちゃんの話……初耳だ……。

 あ、だから、陸や悠は私が緋月の事を好きって知っても、何も言わなかったんだ……。

そして隼人や葵ちゃんは気づかせてくれたり、見守ってくれてたのか……。


 男子組も……私の知らないところで見守ったり、背中の押し合いをしてたのかな……。


「だから、緋ーちゃん、私たちの理央ちゃん……頼んだよ」


「……任せろ」


 あ、……みんなの目がすごく優しい……。

 こんなに思われてたんだな……。

 翔にぃまで嬉しそうにお酒をぐびぐび飲んでる。

 

 恵まれてるなぁ……。

 ありがとう、みんな……。

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