すれ違い
生徒会長さんから、後夜祭のイベントにサプライズゲストとして出演の話をもらった翌日。
私は昨日の緋月との連絡の事をずっと考えていた。
なんか……様子が変だった。
どこが……とも断言できないし、顔を見たわけじゃないから気のせいかもしれない。
でも……なんとなくそう思った。
ホームルーム中に聞けるといいな。
そんな事を思いながら、いつものように教室を目指す。
あ、緋月……もう登校してる……。
「おはよう、緋月。
昨日はごめんね?」
「おはよう。
いいよ。
俺もごめん、変なこと言った」
あれ……普通だ。
よかった……と安心するべきなのかな……。
でも、本人は気にしていないみたいだし……。
私も気にするのはよくないよね。
オサナ組も登校してきて、時間が来るまでいつもみたいに和気あいあいと話して、いつも通り……のはずなんだけど……。
緋月……やっぱり様子が……変?
気のせい?
なんか……そっけない……気が……。
私がそんな事を考えていると、ホームルームのチャイムが鳴り、翔にぃが入ってきた。
「おーす。
えー……今日は~……文化祭のお知らせだな。
日程は……――」
あ、この間、生徒会長さんが言っていた件だ。
「んで……出し物は、今年から公平になるようにくじ引きせいに変わって、さっきの職員会議で俺が引いたんだが……。
うちのクラスは劇になった」
「「「えー!!」」」
「……ごめん……」
「くじ運悪すぎ~」
「本当に、ごめん!
その代わり、午後の数学潰して、配役とか決めていいから!!」
翔にぃは昔からくじ運悪いからなぁ……しょうがないよね。
クラスのみんな……お化け屋敷とか屋台をしたかったみたいだな。
そうこうしている間にホームルームが終わり、午前中の授業も過ぎていった。
私達はいつも通りに教室でお昼ご飯を食べていた。
「ねぇね、如月さん! 服飾得意って本当?」
「ムグッ?!……ンンッ……ゲホゲホ!!
だ、れが……ゲホ!」
委員長が葵ちゃんに話し掛けて来たのか。
それで葵ちゃん、むせてるんだな。
ってむせてる?!
「うわ、葵ちゃん! 大丈夫?!
しっかりして!!」
「おい、理央、落ち着け」
「でも、陸!
誤飲は危ないんだよ!」
「わかってるけど、お前が慌ててどうする」
「だ、大丈夫だよ……。
はぁー……ビックリした。
でも、なんで私が服飾得意なの知ってるの?」
「
『劇するなら、衣装が必要だろ?
オサナ組の葵に言えば、力になれると思うぜ。
服飾得意だし』って」
「か、け、る、ちゃ~ん!!
またぁ?!
服飾は好きだけど!
そうじゃないの!!
あ~もう、ばかぁ!!」
うわー……葵ちゃんがオーバーヒートした。
「理央ちゃん、私ちょっと行ってくる!!
この間の件も合わせて!!」
「あ、俺も行く。
別用」
「なら、俺も!
結局、鬼電取らなかったから」
そりゃ、鬼電取る人はそうそういないと思う。
「あ、俺も行きます」
わー……皆行くんだ……。
「あ、服飾の件、とりあえずは引き受けるよ。
クラスの出し物の為だし。
でも、さすがに一人じゃダメだから、何人か手伝ってもらえたら助かるかな」
「わかった、それじゃぁ、次の数学の時に役割で決めるね」
委員長と葵ちゃんの話がまとまったみたい。
それにしても……皆して翔にぃの所に行っちゃった……。
てことは……私と緋月の二人きりだ。
「如月は……服飾が得意なのか?」
「うん……。
コスプレ衣装とかよく作ってるよ」
ライブ衣装とか言えないし。
コスプレ衣装も作ってるからウソではないよね。
「……そうか……。
この間の……って?
悠も鬼電とか……言ってたし……。
悠がそこまでするのは何か理由があるんだろ?」
「えっと……その……」
「……俺には……言いにくい事か?」
う……そんな寂しそうな表情……。
胡蝶の事は言えないし……。
でも……ウソも……言いたくないし……。
「ごめん……今は……言えない……」
「……そうか……」
わかって……くれたのかな。
しばらくして皆が戻って来て、幾分かスッキリした表情をしていた。
そうしてお昼も着々と進んでいき、午後の数学の時間で劇の詳細を決めた。
劇の内容はアドリブをふんだんに入れた眠れる森の美女に決まり、配役は適当の方が面白そうという意見のもと、あみだくじで決める事になった。
くじの結果、クラスの何人かと私と緋月が服飾担当で、準人が王子様、悠がお姫様で、陸が敵国の王子様に決まった。
葵ちゃんはもともと服飾係になる事から、配役のくじは参加していない。
悠はすっごく文句を言っていたけれど、クラスの皆は大喜びしていた。
「ほんとは一条さんの王子様とかお姫様見たかったんだけど……」
「ねー」
「でも、
悠の女装姿……一応可愛いからなぁ。
あ、隣の葵ちゃんがすっごいやる気出してる。
「理央ー……お姫様変わってくれ」
「イヤ」
「……ケチ」
「はいはい」
「……理央と悠……仲いいよな。
いや、他のメンバーもか……」
「ん?
うん、幼馴染だし……緋月も仲いいほう……だと思ってるんだけど……。
違う……?」
「……違わない……」
なんだろう……この間から感じるこの違和感。
いつもならこんな事言わないし、気にしないのに……。
「……緋月……なんか……あった?」
「……別に……」
あ……そっぽを向かれた。
今……どんな表情……してるんだろう。
そう言えば今日……あまり目を合わせてくれないな。
この日を境に、緋月との距離がどんどん遠くなっていく感覚がしたんだ。
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