打ち合わせ
生徒会室をあとにした私は、中庭でご飯を食べながら先ほどの生徒会長さんとの話しを思い返しながら、今後の事を考えていた。
後夜祭というイベントにサプライズゲストとして出演する事になった私達のバンド、胡蝶。
皆にも報告をしないといけないし、今日の夜にでもオンラインで話さなきゃ。
学校では誰に聞かれるかわかんないからね。
にしても……翔にぃは……もう。
でも、知られているのが生徒会長さんだけでよかった。
生徒会長さんの言う通り、最近動画の視聴回数やコメントで応援しているというメッセージをよく見る。
賛否両論……というのはあるけど、それでも比較的、嬉しいコメントが多い。
今まで顔出しNGを通してきたけど……バレるのは……うん、やっぱり少なからず抵抗があるな。
このままバレずにいれたらいいけど……。
うーん……いろいろ考えていたら眠くなってきちゃった……。
天気もいいし、木陰だし。
お昼寝日和とはこの事だよね。
お弁当も食べ終わって時間もまだあるし、ちょっと寝よ……。
私はスマホを持っていないのに気付いたけど、それでも起きられると思ったから、少しだけ目を閉じた。
感覚的には一瞬のように感じたけど、実際の時間的にはだいぶ経っていたみたい。
私は自分で思っていたよりも寝過ごしてしまって、優しく揺り起こす声で目が覚めた。
「理央、おーい。
こんな所で寝てると風邪ひくぞ? 理央ー」
「んー?」
「お、目ぇ覚めたか?」
「……陸?」
「……。
違う、緋月」
「あ、ごめん……寝ぼけた」
ヤバい……寝ぼけたとはいえ、好きな人と他の人を間違えるなんて……。
最悪……。
「いいよ。
それより、風邪ひく」
緋月……ちょっと怒ってる?
表情が……ちょっとだけ無になってる。
「遅いから様子見に来た」
「そっか……。
起こしてくれてありがとう」
「……ん」
やっぱり……なにか……怒ってる?
「緋月?」
「ん?」
「えと……何か……怒ってる?
さっき……陸と間違えちゃったし……。
ごめんね……」
「いい……気にしてないし、怒ってない」
ウソだ。
だって……少しだけ、そっけないよ。
初めて会った時のあの感覚。
少しだけ気まずい雰囲気の中、私達は教室に戻った。
それからは午後の授業を終えて皆で帰宅した。
皆に連絡入れとこう。
『話したい事があるんだけど、九時に集まれそう?』
よし、これでいいかな。
あ、葵ちゃんからはOKの返事。
陸や悠、準人も大丈夫みたい。
良かった。
それまでにいろいろしてしまおう。
私は時間までお風呂にご飯…済ませられるものは済ませた。
そろそろ時間だ。
「みんなー……音声は問題ない?」
『理央ちゃん、やっほー。
こっちは大丈夫だよー』
『こっちも問題ないぞー』
『こっちも大丈夫』
『俺のとこも大丈夫です』
「よかった。
えっと……皆さんに報告があります」
私は生徒会長さんと話した内容を皆に全部話した。
『お前……マジか……。
学食のタダ券にやられたのか……』
『というより、そもそも翔にぃが原因だな。
後で鬼電する』
『わー……悠ちゃんが激オコだぁ……』
『まぁ……タダ券もありますが……巧みな脅しですね。
さすが生徒会長です』
「うん……。
まぁ、そういう事だから……文化祭まで約二か月……。
秘密裏に準備しなきゃ」
『ま、しゃーねーよな。
で、演奏場所は?』
「一応、貸しスタジオを予定しているよ」
『まぁ、無難だよな』
『衣装と、シルエットになるような布は任せて!』
「おぉ……葵ちゃんがやる気だ……」
『こういうのは一番適任だしな』
『陸ちゃん、わかってる~』
葵ちゃんと陸は相変わらずノリノリだ。
悠や準人も幾分かソワソワしているように見える。
『それじゃ、本番間近は練習の時も貸しスタジオでメイクアップしてしようよ!
衣装合わせも!
雰囲気大事!!』
『いいですね。
葵の衣装はなぜか気分が上がります』
『だな。
任せた!』
「あ、作詞も出来たから、皆に送るね。
あと、曲も付けてみた」
『お前……いつの間に……』
「夏休みの間にしてた。
ちなみに失恋ソング」
『……これ……失恋ソングか?
どう見ても応援ソングだぞ?』
『恋は……恋だろうけどな。』
「もう~悠も陸もちゃんと歌詞見てよ~。
ちゃんと失恋じゃん」
『……何か……あったのですか?』
「いや……ただ単に叶わない恋を書いてたらこうなった」
『そんな事ないと思うけど……。
まぁ、理央ちゃんが決める事だしね。
それじゃ、この曲をもとにベース練習するね!』
『では、各々曲を把握して練習…という事で、今日は解散ですね』
「うん、皆ありがとう。
また学校でね」
『『『『おやすみ~』』』』
「おやすみ」
よし、報告終わり!
また少しの間忙しくなるかな…。
二か月後にはイベント…ちょっとだけ楽しみだな。
あれ…緋月から連絡来てる。
今掛けたら…出てくれるかな?
あ、声…気を付けなきゃ…。
でも、最近男装の方の低い声に慣れてしまって、息をするようにそっちで話してるんだよね…。
逆に女子の時の声を忘れてしまう事がある。
『……はい』
「あ、緋月?
ごめんね……連絡にすぐ出れなくて……。
何かあった?」
よかった、電話出てくれた。
『……いや……。
……何してたんだ?』
「えっと……」
準人たちとの会話は……主にバンドの話だったし。
それは言えないし……。
「お風呂入ったり……ご飯食べたりしてた」
ウソは言ってない。
大丈夫。
『準人にも繋がらなかったから…二人で何か話しているのかと思った』
あ、準人にも連絡入れたんだ。
おおまかになら……伝えてもいいよね。
「あー……ごめんね……。
一応、準人達とも少し話してた。
だから、連絡取れなかったんだと思う」
『……そうか……』
「……何か……急用あった?
それならごめんね……」
『いや……そういう訳じゃ……。
……理央』
「ん?」
『用がなきゃ……連絡するのはダメか?』
「え……ダメじゃ……ないよ」
緋月?
どうしたんだろう……。
声のトーン……下がった。
それに……昼間に感じたそっけなさ……。
いつだったか……他の女の子達が言っていたな「ちょっとだけ冷たい」って。
これの事だ。
『ごめん……なんでもない。
……おやすみ』
「え……」
切られた…。
緋月…どうしたんだろう…。
明日…学校で話してくれるかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます