バレーでは
無事に第一試合のサッカーで勝利を収めて、私は急ぎ足で応援に来ていた葵ちゃんやクラスの女子達とバレーの試合の為に体育館に向かった。
男子達は後ろの方でゆっくり体育館を目指して歩いている。
体育館に着いたのはいいけど……クラスの子達は……あ、いた。
「みんなーお待たせ!」
「一条さん、お疲れー!
勝ったって聞いたよー。
大活躍だったって事もね」
「そんな、皆が頑張ったからだよ」
「ふふっ、それじゃぁ、その勢いで、バレーも勝ちに行こう!」
「うん!」
球技大会当日までに、クラスの中でポジション決めをしていたのだけど、私は身長が172センチもあるから、スパイクやブロックに対応できるように左側にいる事が多いポジションになった。
そろそろ試合終わりそうだな。
軽くストレッチしとこう。
「お、そろそろ女子の試合始まりそうじゃん。
それでストレッチしてんだな」
「あ、悠に陸、準人に雨宮くん……と、クラスの男子達……」
また皆してぞろぞろと……えらい人数だな。
「女子の応援!」
なるほど。
にしても、悠も翔にぃみたいに太陽みたいに笑うんだよね。
うーん……眩しい……。
あ、そんな事考えている間に集合だ。
「それじゃ、行ってくる!」
「いってらっしゃい。
ケガには気をつけてくださいね」
「……見てる……」
わ、雨宮君のフワッとした笑顔……。
「うん!」
雨宮君がそんな風に笑ってくれるなら……頑張れる気がする。
私は任せてって意味を込めた笑顔で返事をして、クラスの子達のもとへ行った。
よし、皆自分のポジションについているし、いよいよ試合が始まる。
(ピーーー)
サーブは相手だな……。
あ、ボール拾ってくれた……誰にトス上げるのかな……。
助走に入って私も打てることをアピールして……。
真ん中にトス行った……うん、ブロックは完全にこっちよりだったから、ナイス判断。
(ピーーー)
やった! 一点目。
この調子でブロックを引き付けたりしよう。
次はうちのサーブ……これは相手に拾われたな……ボールは……こっち!
(ピーーー)
やった、ブロック成功!
「一条さんすごーい! ブロックのタイミング完璧!」
「ありがとう! さ、次の攻撃だよ!」
サーブ……これも拾われた……あ! ボールそっちか! 間に合って!
(ピーーー)
あー……ブロックの手に当たっての場外だからブロックアウト……相手のポイントだ。
「あー……惜しかったー!!」
「ドンマイ、ドンマイ! にしても、あの場所からブロックに飛び込むなんて足早すぎ!」
「そんな、ただ必死だっただけだよ」
あ、相手のサーブだ。
そしてポジションのローテーション。
右にズレなきゃ。
サーブこっちに来た……よし、拾えた……あ、ボールこっちに上がった……。
今のブロックの位置からして…クロス打ち!!
(ピーーー)
「すっげー!! 何だ今のー?!」
「めっちゃ内側だったぞ?!」
「あれクロス打ちだろ?! バレー部じゃないのに、出来んのかよ?!」
「「「キャーー!! 一条さん、かっこいいーー!!」」」
すごい……うちのクラス以外のいろんな声が聞こえる……。
女の子達からの黄色い声援? も、さっきのサッカーより増えた気がする……。
今は試合に集中しよう……まだまだ試合は始まったばかりだし。
あ、そうこうしているうちに私のサーブだ…。
「おーい、りおー! サーブ外すんじゃねぇぞー!!! 前はヘタクソだったからなー。
ヘタクソりおー」
「……」
はぁ?
ヘタクソ?
いつの話をしているんだ。
確かにサーブが入らなくて、ヘタクソな時期はあったよ。
小五の頃だけど。
陸……あんたの方がいまだにヘタクソじゃん……。
アンダーサーブで打つならちゃんとコート内に入れなさいよ。
(ピッ)
「ヘタクソに……ヘタクソって言われたくないんじゃ、ヘタクソーー!!!」
(バッシーン!!)
(ピーーー)
「……すんませんっした」
「すっげー……サーブもやべぇ……」
なんか陸の声が聞こえた気がする。
外野の声もすごいし、やり過ぎたかも…。
(ピッ)
よし、もう一本……強めに!
って、あー……拾われた……結構きわどい所狙ったのに、拾った人上手いなぁ……。
あ、スパイク……でも、真ん中の伊藤さんが取れそう。
「きゃっ……」
「伊藤さん!! 大丈夫?!」
スパイクの威力が思いのほか強くて、伊藤さんが体制崩しちゃった……。
どこかケガしてたらいけないし、タイムアウト取らなきゃ!
「すみません! タイムお願いします!」
皆、伊藤さんの周りに集まってきた……そりゃ心配だよね。
大きく体制崩したし……。
「「伊藤さん!!」」
「伊藤さん、どこか痛いとこある!?」
「えっと……右足……ちょっとだけ……。」
伊藤さんはたしか……運動部だったはず。
早く手当しなきゃ……たしか……。
「伊藤さん、ごめんね」
「え……」
背中と膝の裏に手を回して……よし、抱き上げられた。
「「「キャーー!」」」
「お姫様抱っこだよ! かっこいいーー!!」
「いーなー私もされたーい」
なんかいろいろ聞こえるけど、今は早くコートの外に出て手当しよう。
「葵ちゃん! たしか、テーピング持ってたよね?!」
「うん、あるよ! はい、これ」
「ありがとう」
葵ちゃんはふわふわしているように見えるけど、体育祭とかスポーツする時はいつも簡易な救急セットを持っているんだよね。
すっごく頼りになるんだ。
葵ちゃんから受け取ったテーピングで伊藤さんの足を固定して……。
「そのまま保健室行く?」
「ううん、このまま試合見てたい。
試合終わったら保健室行くから……今はここにいたい」
「わかった……」
「それにしても、一条さん……テーピング上手だね」
「そうかな? ありがとう」
彼女にはこう言ったけど、本当は巻き慣れているんだよね。
「よし、出来た!」
「一条さん、ありがとう」
「でも……どうしよう……伊藤さんのほかにボール拾うのが上手な人いないよ……」
「……ボールが上がらないと、トスが打てない……得点につながらない……なら、私がやる」
「え?! 一条さんが?!」
「うん。
相手の身長を考えても、私がボール拾いに専念しても支障がないように思う」
「……お願いしてもいい?
ボールが上がらない事には始まらないから……」
たしかバレー部だったっけ。
さすが、分かってくれてよかった。
「任せて。
ポジション変更……リベロとして、皆の背中は私が守る」
反応がよくてボール広いが上手な伊藤さんが抜けて幾分か空気の重い今、私にはこれしか言えない。
でも、やってみせる。
「かっこいい……」
「イケメン……」
そんなこんなでトラブルがありつつも、私達は試合続行した。
接戦だったけど、何とか勝つ事が出来た。
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