出会いは
何でだろう……赤面続出。
この光景は……あれだ。
たまに葵ちゃんもなるやつ。
これは……どう反応していいかわからないんだよね。
たしか、以前は……満面の笑顔を見せたんだっけ。
でも、あの時、葵ちゃんからは「追い打ちやめて」って言われたんだよね。
うーん……わからん。
私には解決策がわかんないから翔にぃに助けてもらおう。
「…センセイ、タスケテクダサイ」
「おい、棒読み」
だって仕方ないじゃない。
今まで翔にぃと呼んでた親しい間柄だったのが、いきなり先生という壁が出来たんだよ。
距離感がわかんなくなるよ。
棒読みとか許してほしい。
「はぁ……お前はほんと無自覚だよな……。
とりあえず、質問タイム設ける。
何かあるかー?
特にお知らせとかないから、ホームルームの時間、全部質問タイムな」
「え……」
翔にぃ……それはいくらなんでも適当すぎない?
それで七つ上?
助けを求めたのに、助けてくれないの?
どんだけなの……。
「はい!
あと、後ろの如月さん達とはどういう関係ですか?」
「あ、なら俺も!
一条って、あの一条だよな?
海外に行ったんじゃなかったっけ?
いつ戻ってきたんだ?」
「あ、なら俺も!―――」
「私もいいかな……―――」
ほら来たー。
質問攻めの嵐。
先生が放任したら、無法地帯になるんだよ。
え、これ、ホームルーム中ずっと?
つら……。
あとどれくらい時間あると思っているの……。
この質問全部私が対応するのか……いや、するけど……。
「えーっと……先生は私の兄の親友で……如月さん達とは幼稚園からの幼馴染で……。
日本に戻ってきたのはひと月前で……」
あー……聖徳太子……私に力を貸してください……。
この質問攻めをさばける力を……。
「みんな、その辺で……。
理央がキャパオーバーしそうです……。
質問があるなら後で個人的に済ませればよいでしょう。
翔先生も、放任しないでください」
「ありがとう……聖徳太子……」
「聖徳太子?」
「あ、いや、ありがとう、準人」
つい聖徳太子と呼んでしまった。
しかし、立ち上がって質問の嵐を止めた準人には賞賛をあげたい。
ブラボーだよ。
助かった、ほんとありがとう。
翔にぃにも見習ってほしいよ。
「んーじゃぁ……知り合いという事も分かった所で、遠慮なくいかせてもらうぜ」
え……なに……何が始まるの……。
「お前たち、幼馴染組……全員を下の名前で呼ばせてもらう!」
「いやいやいや、先生がそんな事言っちゃダメだろ?!
立場わきまえろよ!!」
陸の言う通りだよ。
何を言っているの?
あ、この
「……この席……私の席で合ってるよね?」
一応、空いている席の隣の葵ちゃんに確認を取ってみる。
間違っていたら嫌だし。
「うん、間違いないよ。
理央ちゃんとまた会えただけじゃなくて、隣の席だなんてラッキー。
よろしくね!」
葵ちゃんの笑顔……やっぱり対面すると落ちつく。
あぁ……こういう時、知り合いがいるのっていいな。
ちなみに黒板向かって私の左隣の席が葵ちゃんで、葵ちゃんの後ろに悠がいて、悠の右隣が陸。
私の後ろの席ね。
そして陸の右隣に準人がいる。
あれ……てことは、私の右隣は……。
「……一条……理央……。」
「はい?」
いっぺんにいろいろあり過ぎて失念していた。
そういえば、私の右隣の席に人がいたな。
その人に呼ばれたから返事を返したのに、そっぽを向かれた。
え、何?
人の名前を呼んどいてその態度は?
感じ悪くない?
見た目はすごくかっこよくて、モデルにいてもいいくらい整っているのに。
いや、でも隣の席だし、挨拶大事だよね。
ほら、お隣さんとか、近所付き合いは大事って言うじゃない?
「えっと……隣になりました、一条です……よろしく」
「ふはっ……何それ。
隣に越して来ましたみたいな挨拶……うける。
なんだ、女って聞いていたけど、声とか見た目とか……まんま男子じゃん」
おぉ……この人、こんな風に笑うんだ。
なんだ……なんか可愛いじゃん……。
あーでも、男子に可愛いって言ったら怒るか。
陸とか悠が怒るの実際に見てるし。
可愛いって思った事は内緒にしておこう。
「俺、
よろしく」
「う、うん……よろしく」
ふぅ……ホームルームだけでいろいろあったな……。
疲れた。
でも一日はこれからなんだよね。
いつの間にか陸と翔にぃの論争が終わっている。
結局どうなったんだろう。
「なー理央、お前もいいだろ? 下の名前呼び」
もう一回言うね。
あれで七つ上なんだよ。
立場わきまえて欲しいよね。
んで、陸と論争していたのに結局、終止符が打たれていないのか。
クラスの視線集めるのはいたたまれないんだけど。
そんな愚問投げないで欲しい。
まったく……返事するしかないかぁ。
「立場わきまえて」
これしか言えない。
これ以上に言う必要ないと思った。
「よし!
なら下の名前で決定な!」
人の話を聞けってんだ。
「…最初から答えが決まってんなら私に聞かないでよ。」
なにその満面の笑顔。
まったく……先が思いやられる。
「一条も大変だな。
……というか……一人称とか、口調とかは女子なんだな」
「ん?
あぁ……こればかりは、直せなかった。
変……だよね……。
声は……女子じゃないのに」
そう、私がまだ女を捨てきれないという証。
見た目も、口調も、一人称から声の低さも最初は意識して男子に近づけた。
けど、一人称や口調だけは……どう意識してもダメだった。
「別に……いいと思う……。
如月がさっき言ってた『訳あって男装している』ってやつと何か関係があったとして……その中で自分らしさ……が残っているのはいいと思う」
「……雨宮くんって……優しいんだね。
今まで変って言われていたから、素直に嬉しい。
ありがとう」
そう、声に合ってないって口調や一人称を幾度も変だと言われた。
正直、バカにされてイジメにあった事もある。
もちろん幼馴染以外の人に。
なのに、雨宮くんは受け入れてくれた。
それが素直に嬉しかったから自然と笑顔になれた。
けど、なんでだろう。
またそっぽを向かれた。
それに……受け入れてくれた言葉に聞こえたけど……なんか……様子が変。
そっけない感じ……。
この時の私はただ、変わった人だなという印象だった。
それがまさか好きになるなんて…。
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