第6話 策略

「秋田先生、来てくださったんですか」

「えっと君は、たしか一年十一組の倉橋玲さんだっけ」

「嬉しい、名前覚えてくれているんだ」

 すごいな、と単純に思う、一学年十六クラスのマンモス校なのだ。全校生徒二千人、女子だけで千人はいる。


「君みたいなかわいい子ならね」

 どこまで本気か、確かに玲はかわいいはずだ、それは自分でも否定はしない。それでも適当な奴と思ってしまう。実は例はこの手のやつが大嫌いだ。なぜなら自分の父親がそうだからだ、まあそのことはいい。


「先生に相談があります、体育館の奥の用具室に来てください。一年の女子です」

 こんな手紙を秋田の下駄箱に入れておいた。こんなもので釣られるかと思ったが、直樹先生は絶対に来ると太鼓判を押してくれた。

「君一人?」

「はい、こんなことしてくださいって言うのに、人なんか」

 そういうと、玲はスカートをパンティぎりぎりまで持ち上げた。


「脱がしてほしい」

「脱がすだけ?」

「それ以上は何をするのかわからないから、教えてほしくて」

「なんで俺に」

「先生格好いいから、初めてなら先生にしてほしくて」

「初めてなの」


 玲はうつむいた。

 秋田の呼吸が荒くなる。

「先生何人も女の子としてるって、上手いから痛くないって、そうなんですよね」

「誰がそんな、うんまあ、生徒で何人かは、あ、でも君みたいな素敵な子は」

 こいつ何言ってんだ、張り倒してやりたい、でももう少しの我慢だ。

「脱げばいいですかそれとも」

「俺が脱がしてあげる」


 秋田の手が制服のリボンをほどきシャツのボタンが外されていく。

 白いブラジャーがあらわになった。フラッシュが光る。

「はい、そこまで、いい写真が撮れました」

「お前、轟、何のつもりだ」

「君にちょっと頼みがあってね、ノーと言われないためにちょっと細工を」

「頼みだぁ、なんでお前のために」

「今のだらしのない会話も録音してあるんだけど、聞く?」

 玲は隠してあったカセットデッキをたたんであったマットの上に置いた。直樹の家から持ってきたものだ、いくらするんだろうとは思ったけれど聞かない。


「お前、こいつとグルか」

「というより私が頼んだんです、轟先生に」

「おとなしく、写真とテープを渡せ、でないと」

「でないと、どうなるんだろ」

 直樹が笑いながら言う。

「こいつ、なめんなよ」

 秋田はいきなり直樹に殴りかかった。


「きゃあ」

 玲は思わず悲鳴を上げ、手で顔を覆った。

 どさっという人が倒れる音に恐る恐る目を開けると、秋田が腹を抱えて倒れていた。

 直樹が空手の黒帯だということは知っていたが、現実に見るまでは信じられなかったのだ。


「たいした頼みじゃないんだ。川村直子をさ、玲がいたぶりたいんだとさ、だから呼び出してくれないかな」

「川村をなんで俺が」

「付き合ってるんだろ」

「つきあってなんかいないさ、向こうから頼まれたから、やってやっただけだ」

「じゃあ、どうなってもいいの?」

「ああ、俺は全く」


 こいつ最低だなと玲は思う、やっぱりこいつにもなにか罰は与えてやりたい。

 それについてはまた今度、まずは川村だ。どうしてやろう、玲は頭を巡らせた。


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