第3話
いやな教師をいたぶる前に、玲にはやりたいことがあった。
入学した時から気になっている理科の先生。
丸眼鏡が可愛くて、入学式で見たときから、ひとりで熱をあげている。
先生が好きすぎて、必修クラブは科学部を選んだくらいだ。ちなみに普通の部活はテレビの影響で、バレーボール部だ。
ついでに言うと、薫もテレビの影響で剣道部、といいたかったが二人の中学には剣道部はなくて、ブラスバンド部に入っている。
それでも剣道がやりたかったらしく、警察の道場に通っている。
昭和四十年代の中学生の平均像だ。
先生の名前は
大学を出てまだ二年目、当然奥さんはいない、たぶん彼女もいないと思う。
まあ、いても構わない、奪い取るだけだ。
先生は、土曜の放課後に理科室にいることが多い。一か月かけて調べた結果だ。
バレー部の練習がなければもっと早く行動に移せたのだけれど、そうもいかない。普通の生徒としての方は真面目な優等生なのだ。
まあ一学年六百人もいる大きな中学だから、普通に生活していれば悪目立ちすることはない。
玲と薫はそこそこの顔立ちをしている、しかも二卵性双生児ということもあって、何かをすれば人目を引くということはほんの十数年の人生でもわかっていた。
なのに教師を誘惑しようというのだから、玲は自分のことながらあきれている。
でも先生としたい、そう思ったのだから仕方がない。
薫とセックスをしたのも、処女だと先生にいらぬ重圧をかけると思ったからだ。
本当は先生に開通してほしかったけれど、まあ薫だからいいとしよう。一人でいやらしいことをするのと、あまり変わりはないからだ。
まあ妊娠だけはまずいだろうとは思っている。
「先生、いらっしゃいますか」
玲は理科室に入ると、扉に鍵をかけた。
普通の教室は築数十年の木造校舎だけれど、理科室や視聴覚教室、家庭科の調理室、音楽室といった特別教室だけは鉄筋三階建ての新しい建物にある。
これらの教室は基本的に防音で、鍵をかけることができる。
玲は轟に好かれていると思っている、多分勘違いではないはずだ。
部では早々に玲と呼ばれているのもその証拠だと思っている。
幸か不幸か、先生は女子生徒から嫌われはしないけれど、あこがれられるというタイプではない。
だから玲が付き合ったとしても、誰もやっかんだりはしないはずだ。
「お、玲じゃないか、どうした」
「先生がここにいるかなと思って」
言葉遣いを少しフランクにしてみた。
「私もう十三になりました」
そういうと、ほんの少しスカートのすそをつまみ上げた。
中学生は迂闊だ、授業中なんかでもつい見せてしまうことがある。そんな時に先生は目ざとく目を動かすのを玲は知っていた。
先生は『むっつりスケベだ』玲は自分と同じ匂いを彼にかぎ取っていた。
たぶん先生が好きになった理由は、そこにあるのだろうと思っている。
「先生にこの中身見てほしくて、私処女じゃありません」
先生は一瞬言葉を呑んだが、すぐに笑顔を見せた。
「はいはい、冗談は置いといてね」
「本気です、だから見てください」
玲はスカートを持ち上げた。
下は、はいていなかった。理科室に入る前に脱いでおいたのだ。
十分後先生の頭は玲のスカートの中にあった。
「奇麗だね、もう処女じゃないってホント?」
「うん。やだ、遊んじゃ」
先生は玲のスカートの名まだ弄んでいる。
「誰にあげたの、体育の秋田?」
体育の秋田とは中学で一番人気のある教師だ、若くてサッカー部の顧問をしている。
「秋田先生も、生徒としてるの?」
「生徒だけじゃなくて」
「ああ、川村か」
先生はスカートから顔を出した、驚いた表情が可愛い。
「知ってるのか?」
「女子は結構知ってるんじゃないかな、というよりあの態度見てたらわかる」
「ふうん、そうか、女の子は怖いな」
「じゃあ、俺も玲としたらばれるのかな」
「いや?」
「さすがにまずいだろうね」
先生は正直だ。
「でも、まあそん時はそん時だ、別に教師やめても俺の場合は」
「本で食べていくですか?」
「なんでしてるの?」
「先生話してくれたよ」
「そうだったかな、まあそれはいいや、それよりだれとやったのかまだ聞いていない」
「妬ける?」
「少しは」
「そうかぁ、じゃあ先生にあげればよかった。責任取るとか先生言いそうだったから」
「あ、そういう理由か、確かに言うかもな」
「でしょ、こんなことで先生の重荷になりたくないから。ただやりたいの先生と」
玲は先生の唇に唇を押し付けた。
「薫だよ、相手は」
「薫? 弟の?」
「うん、近親相姦、そそる?それとも嫌いになった?」
先生はちょっと黙り込んだ。
「そそるかな、でもなんで薫?」
「他の人なら好きとか愛してるとかが絡むから、薫なら黙って膜だけ破ってくれる」
「俺とするために?」
「それもあるし、薫は私だから、一人でオナニーするのと一緒、違う?」
「わかった、でも、もう終わりにしような、したいときは俺がしてやる」
「うん、わかった」
「ここでするか?」
「先生の部屋行きたい」
「そうだね、その方が安心できるかな」
先生の車は、テレビで最近コマーシャルを始めたT社の乗用車だ。みんなの車は軽が多いのに、先生のは千二百ccらしい。もちろん薫の受け売りだ。
とにかくゆったりと座席に座れる。
「先生、何人女の子乗せたのこの車に」
「玲が初めてだよ、ちなみに女の子とするのも玲が初めて」
「うそ、彼女いなかったの大学に」
「もてないから、っていうよりさ、なんで俺なの、そんなにかわいいのに」
可愛いと言われて玲は自分の顔が、にやけるのがわかった。
「知らない、入学式で見かけてからずっと好きなの」
好きになる理由なんてわからない。
先生は実家から通っている。京都市内から老ノ坂を超えた亀岡のはずだ。バスと電車で通うのは時間がかかりすぎるので自動車で通勤していると聞いた。
帰りは遅くなるということで、先生は玲の家によって母親に挨拶して着替えた玲を車に乗せた。
実験で手伝ってほしい、ということにしたのだ。母親は先生のさえない風貌に逆に安心したらしい。遅くなれば先生の実家で泊まるという申し出にも疑わず承諾した。
先生の手伝いができるというだけで、信じ込んでしまった。ごめんね。と礼は少しだけ胸が痛んだ。あとのことは薫に頼んである。
薫には川村をいたぶる準備といって納得させてあった。あながち間違いではない、川村を好きなだけやらせてあげるから、勘弁ね。
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