20ツギハギ!!!!!!!!

救援に駆け付けた沼津縫栄の参入で4人となったキマイラは猿、ハッピースライム、ヤマアラシ、蛍を各パーツに従え出力勢い士気を上げて戦う。


忍縫にんぽう、ミミズ縫い!」


狡くも針を飛ばすETハリネズミには同じく針を。

左脚から土中に潜らせたハッピースライムの紐を拝借した青いミミズ針の集は散り、

再び顔を出す、顔を出したときには模したミミズの頭にあたるヤマアラシの大針が反応おろそかなハリネズミの腹を貫きその身を縫い往復。

地下からの急襲に縫われたまらず次々にETハリネズミの小隊は爆散した。


「これはすごいっ相変わらず天才か委員長!!!」


「ううん、わたしは【天】才じゃない。才をホノウの使い方をキマイラがみんなが教えてくれるから、忍縫だってできる」

「えへへへイインチョーにんぽーーーっ」

「うむ。下手な例えだとおもうが全員の持ちうる出力ステータス値や思考感覚の一部をキマイラというメガサーバーに共有クラウド化することでまた個人に還元し個人では本来到底できないことができるようになる……。集まれば集まるほどに未知数に深まるこれがキマイラのわかりやすい強みということだな……興味深いなっ」


「はははならもっと忍法だって鞭だって光だって教えろおおいくぞもっと教えてくれクラウドキマイラアアアア」


押し寄せる敵勢にもパワーアップしたキマイラならば後れを取らない、取る気はしない。

ぐるっとスライムシルド三日月、複雑に縫い上げた青い三日月を宙へと投げつけた。

夜空を舞う青い三日月はその軌道に汚らしくも美しい爆発の帯を咲かせていく。


仇を取りに転がって来たハリネズミに炸裂する鋭い左脚。

ヤマアラシの逆立つ針にはご用心、それはハリネズミより長く近寄りがたく強い。

それを従える赤猿キマイラはもっと強い。

炸裂したのはただの蹴りではなくツギハギの忍縫であり……ソコナシにデタラメな夢のリクエストだ、

数多の針が突き刺さり抜ける……左右に打ち分けた三日月蹴り、そして前蹴り、一連の流れるような動作で3度蹴り振りぬいた。

野の景色を疾風の如く流れていくハリネズミはとうにダメージ限界、

受け取った吐く程に鋭い三蹴りでやがて爆散、そしてビッグバンのように光り輝き大爆発を引き起こす未知の技、あふれる虹色の針々が一帯に生まれ広がっていく。


「ハッ────────【甲賀流忍縫底無充力ビッグバン蹴り】、ってどうかな?」

「最強に分かりやすくていいんじゃないか委員長ッ、ソコナシに!!!」

「ソコナシびっばんげりびっばーーーっん」

「うむ、名付けてライブラリ化し共有しておくのは重要、重要だなッ」


とてつもない蹴りが生まれ多勢のイーターが死滅した。

だがまだまだ、チワワスナイパーから送られてきた3Dマップには続々と敵が補充され集結しているようにも見える。

勢いのあり過ぎるキマイラはこれらを殲滅するために走った。





夜……時間もわからない程に夢中だ。だが夢中であふれる熱に任せる一辺倒でなんとかなるほど、今日のハッピースライムヤードの攻防は決して楽な戦いではない。


「デンデンジュウが5体かよ、それにッ」

「敵も連携してるリーダー、勢いに乗りたいところだけどチカラ押しだけじゃダメだわイチド冷静に充くん」

「うむ……じっくりと鼠やカエルやトリの雑兵にけしかけさせて主力が叩くということか。まださっきみたいに森に潜ませているかもしれん私が注意警戒しておこうヒトミくん」

「わたすもおおお目はひとつじゃないよぉーハピスケーーぇひーふーみー」

「あぁ。まったくその通りだっ! 怪獣イーター野郎にせかされて攻め急ぐのは充瞳さんのシュ」


仲間たちの声と意を聞き冷静さを取り戻していく充瞳パイロット。見つめる先の距離を取り帯電し陣を敷くデンデンジュウの軍団より、

聞こえ振り向く先、


右の森がさわがしい、ざわざわどころではないバキバキと木々がなぎ倒されていく音がきしむ、

直後に────不吉な黒いシルエットがカエルの脚を手持ち跳んできた。そして着地。

握りしめていた拳をひらき、二本足で立つ片耳の折れた黒い獣は討ち取った残骸を野に投げ捨てた。


『まったく訳の分からないファンタジーときゃきゃっとキャットファイト中だというのに青いやつらはどいつもこいつも某生徒みたいに話にならんっチッ頭がぎゃぎゃっと痛い……それはそうとぬぬぬなんだこれは? この勉強もろくにしてない公式のひとつすら覚えてこない馬鹿もんノートに書いてあった味のない人型ロボットに試乗したはずがいきなり姿が変わったぞ !? って黒猫ォオオオオううう……うさぎか、チッ……オッ! ──いたァァァ!!? おいこいつには武器がないのかおい生徒充瞳!!! そこのフザケた妖怪ツギハギロボに乗っているんだろう!!!』


独り言を長々とのたまう……通信ビジョンを開きっぱなしのメガネ女子はその充血したような赤目でじーーっと見つめている生徒に気付き更に激しくしゃべり倒した。


「ってなんでネコ先生ここに……? ってなんだその黒ウサギ!? なんで先生乗ってるんすか! えっ全く意味不ってやつでしょ!」

『しらん沼津にきけっ! まったく砲はないのか……さっきのようなステゴロの野蛮なのは本当に得意じゃないぞ、って誰がデコメガネだ先生に!』

「黒野ちゃん先生たぶんそれキュートでイカした夜空色な耳が武器っすよ!! ウサギはうさ耳が武器って相場が!!」

「ほんとだーーっうさうさーーーあはは」

「……うさうさっ……」

「うむ。うさぎといえば創作物古くから夢幻の案内人……うらやましいな?」

『なんだなんだどいつもこいつも担任にボケを大挙して重ねるなっふざけているな、まったくオッほんとに……耳がナギナタァァ!!? フザ』

「っと──何はしゃいでやってるんだか」

「ってなんで乗ってんのーーーー!!! って姉ちゃん!?」

「あんたの姉ちゃんじゃないけどねぇーっ、はぁ相変わらずいつみても死にかけてるわねあんた死神? 疫病神どっち?」

「死神でもピータンでもなんでもいいからさ右アシにいってくれ!」

「はぁ? ワタシがあんたのくっさい脚なんてありえないから(今の流れのピータンってなによ)」

「なんでぇ姉妹セットで右左だろ?」

「……っ……」

「はぁあ??? 妹の上は姉って決まってんのよ!!! のきなさい右っじゃなくて左の黒いヤツ、そこは私専用のソファーよ」

「わ、わかった。したがおう、上手くない私が脚だと脚を引っ張りそうだボディにいかせてくれヒトミくん」

「了解マッキー所長っ俺も鼻の高い魚屋の姉ちゃんがボディだと落ち着かない!」

「ってなんでどこもかしこも女しかいないのよ! しかもパツキン外人! マッキー!? って誰が鼻の高い魚屋の姉ちゃんよ! 最強のシャドウユニコ」

「みえ姉ちゃん任務中はやくして……」

「はぁあ?? ぬえッ、とっろい任務もこなしたことないあんたに言われたぁ?? ふふふふ、いいわ脚ひっ」

「Totally!!! 敵は待ってねぇイクゾおおおおおおお!!! フルキマイラだ!」

「いったれえええええ、とーたりーーー」

「ちょっ!!!」

「うん、脚はまかせて、Totally」

「うむ! Totally!」

『おい充瞳! なんでもいいからどうすればいいか作戦を先生におしえろ!』

「とりあえず素人の先生は危ないからメガネ割れちゃう前に下がっててくれって! 眼帯ムとポチャイムのおもりをたのむぜ!」

『素人だとォ?? 相変わらずお前は先生を舐めてるなァこれでも先生はな亜能力クラスEの特待生だったんだぞ“血統入学者充瞳”! それに奇しくもこのきゃきゃっと…失礼うさっとな良くも悪くもワルくも染み付いた薙刀ならナァ真夏の底無武闘大会でもロボットに乗っていようともそこそこイケルぞ! もっとも砲には劣るがな』

「はははははセンセイ何言ってるかさっぱりでしょ戦闘中っすよ! マァ……クラスEかなんかしらないけどそんなに自信あるなら生徒たちについてきてくださいよ先生!」

『馬鹿か生徒にただついていく給料泥棒な先生がいるか!(先生だぞ先生一応) この訳の分からんバトルにちゃんと勝算はあるんだな1Bの遅刻魔充瞳!』

「フルキマイラならおくれるかよッやれる気しかしないって! 称賛ならァァァ終わってからたのむよッ、ソコナシに──いくぜ!!!」


次々とハッピースライムヤードの野に投げ入れられたトメラレナイ運命、繋ぎ合わせるのは巨大合体機獣キマイラ、その元に。


折れた片耳の黒兎はもう片方の耳を射出──手持つ薙刀にし、ぐるりぐるりと頭上で旋回させ意気揚々に啖呵とカゼを切った。


左腕にはいつの間にやら参戦した新たな強大なチカラ、イッカクはその長い刃をいまかいまかと妖しくギラつかせている。忍ぶ必要のない青い帽子は既に投げ捨てられた。


充瞳、スライム王女、沼津縫栄、沼津魅枝、明智明深、五人5つのホノウをその身に宿すフルキマイラ。

生徒のピンチに駆けつけた職業高校の教師、黒野凪名くろのなぎなは黒兎に乗り込みここが夢であろうが見据えるレンズの先モニターの先に躊躇いはない。

ハッピースライムヤードの住人眼帯ムポチャイム操るチワワスナイパー、モチットラビットタンクもまだ残弾を残し健在、彼女らにも恐れというものはない。


イーターの軍勢とキマイラ充瞳たちの、まさに総力戦が今はじまる。



「ちょっと無視して長々学生ごっこやってんじゃないわよ、フンッ、このワタシを使うんだから敵はぜんぶ【ブンカイ】しなさい充瞳!!!」

「待って充くん、みえ姉ちゃんの【ブンカイ】は強力だけど電量を食い過ぎるわここは冷静に出力の上がったキマイラでわたしの忍縫を」

「はぁあああああ!? ぬえアンタ馬鹿言ってんじゃないわよセーターも編めずにべそかいてたあんたのしょぼい忍縫???」

「あははハピスケわたすもわたすもつかってにんぽーーっ」

「戦力はかなり増えたが電量は有限だ、たのむぞヒトミくんゲームオーバーはまだ早いまだまだ夢を見させてくれっ」

『なーにが夢だ、むずがゆいむずがゆいそんなもんより成績を上げろ充瞳、称賛じゃなく勝算だ考えて考えろ夢を見てようが思考だ思考必要なものは知識それよりも創造力だアインシュタインもそうしてきた』

「うむ。それがすなわち夢だ夢幻世界だ」

『ちがうぞ、なに人の言葉をかっさらおうとしてんだ夢バカ』

「アインシュタインがまだ少女だった頃の私に明晰夢で言った言葉だ、メガバカ」

「【ブンカイ】するわよいい大人が!!!」

「あははブンカイブンカイいいいいーーーー」


「……──ソコナシにいくぜ!!!」




青年の赤い瞳はメラメラと熱帯びる、この物語の先へと伸びゆく。


セカイに底無しに棲む悪意の種を青年は知らない、


だが青年はワラう見据えるヒカリの先へただ────────

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押忍!合体機獣カプセルギンガ ~敵襲!ハッピースライムヤードを救え!~ 山下敬雄 @takaomoheji

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