バファルッツ、帰還開始!
フランカ、シャルモーと別れて少し時間が経ち、
「あのー、シャルモーさんがフランカさんに力なく引きずられて行ったんですけど、あの人死んじゃったんですか?」
「いや、さすがに死んではないと思う……。多分だけど」
「でもワタシらの前を通った時の彼女の顔ときたら、恐ろしいったらなかったぞ。顔をひどく紅潮させて。目なんかはもう何人か
「全くの同感です。絶対にあいつはただ者ではない……」
「ただ者じゃないのは間違いないけど、多分照れてただけだと思うからあんまりひどいことは言わないであげてな。あいつも一応女子だし」
二人と話し合うために離れてもらっていたクラリスが、団長とハインツを連れて戻ってきた。
ということで、言いつけを破って失踪しやがった馬鹿どもには予定通り説教を……するつもりだったが、ちょっと精神的疲労がすごいので、今日のところはやめておく。
「まあ冗談はそれくらにして。クラリスから話は聞いたが、彼女らはアルトの友達で、しかもバリバリの冒険者らしいな。バファルッツの活動について、何か言われたか?」
「一応、黙認みたいな感じになったのかな? 俺たちが悪いことをしない限りは冒険者として手出ししないみたいなこと言ってたから、国に通報するとかはしないと思う」
「おぉ、そうか! それは良かった良かった」
「ひとまず最悪の事態は避けられたか……。まったく、これからはお前も、友達相手だからといってバファルッツの活動内容をほいほい話すんじゃないぞ」
「話すわけねえだろ! 今回は事情が特殊すぎたんだよ!」
街中でそんなことを言ったら速攻捕まるし、知り合い相手なら縁切り間違いなしだ。
「……それで、アルトさん? 私のモンスター寄せの方は……?」
「そんなもん没収に決まってんだろ。二度と持ってくるんじゃないぞ」
「ひどい! この人でなし!」
クラリスがまたギャーギャーと騒ぎ出したが、これを返してしまうと、絶対持ってきてはいけない場所に絶対また持ってきてしまうので、今回の返却はなし。
(ていうか、今度からクラリスの持ち物チェックが必要になるな……。めんどくさっ!)
「よし! もう探検も一通り済んだし、バファルッツはここらで退散するか」
「ちょ、ちょっと待ってください! も、モンスターは、奥にモンスターの子たちはいましたか⁉」
「いや、モンスターどころか蟻の子一匹いなかったぞ」
「……帰りましょう。こんなしょうもない場所からは、すぐに帰りましょう!」
「それにしても、今回のダンジョン潜入は大成功でしたね。……で、お前はなんでそんな不満そうな顔をしてるんだ?」
「別に。ただ、人の苦労も知らないでお気楽な連中だなー、って思っただけ」
かわいいモンスター(個人の感想です)を危険も顧みずに求め続けるクラリス。
好奇心を満たすためだけに、何も考えずにダンジョンの奥に突っ込んでいく団長。
そんな団長をなぜか尊敬していて、その行動の全てを肯定するハインツ。
どいつもこいつも自分の欲望に忠実すぎて、もはや羨ましさすらある。
(まじで、振り回される俺の身にもなってくれよ……)
こうして、俺のバファルッツの一員としての初めての活動はとてつもなく大きな不安要素をいくつも残し、
「それじゃあ帰りもちょっとした長旅になるが、みんなでおしゃべりでもしながら楽しく歩こうじゃないか!」
「あっ、帰るってことはまたあの長い道のりを……。あの、アルトさん? 私の荷物を持ってくれるって、行きの時は何度も言ってくれてましたよね?」
「……ちなみに、モンスター寄せ以外だと、そのリュックに何入れてきたんだ?」
「えっと、首輪とリードが色んなサイズで大量にあってこれが結構重いのと、あとは餌用の乾燥した虫の死骸とかですね」
「うん、そんな貴重品は自分でしっかり管理しろよ」
俺たちは普通のダンジョンとは少し違う、この奇妙なメビフラダンジョンを後にした。
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