第53話 上空にて
瑤迦は飛龍の背に乗り、上空から天界を眺めていた。眼下に広がる平原、東の方角の遠くの方に見える砂漠。そして、天宮と向かい合うように真南に聳え立つ我龍山。これから自分たちが行く場所を見つめ、顔を険しくした。
数日間体力の回復に努めた瑤迦だったが、思ったより体力の回復が早くピンピンしていたので、天帝のそろそろ龍穴を見に行ってほしいという頼みを二つ返事で承諾した。炎迦と流迦は心配そうに大丈夫かと尋ねてきて、自分たちの仕事を放り出してでもついてきそうな勢いだったが、その意見は厳しく退けた。結果、当初の予定通り四天龍と瑤迦で天界を見て回ることになった。
「久しぶりだな。こうしてみんなで飛ぶのは」
風を気持ちよさそうに受け、瑤迦が言った。四天龍はそれぞれ、そうですね、と答えた。自分に付き従う四匹の美しい龍を見ながら、瑤迦は満足そうに微笑んだ。水龍族は藍、火龍族は紅、雷龍族は黄、風龍族は白の鱗を持っている。それぞれが族長一族である彼らの鱗はくすみのない色で、至上の輝きを放っており、誰が見てもため息をこぼすほど美しい。瑤迦は目を伏せ、地龍族の鱗は黒だったと言われているな、と見たことのない古の龍の姿を思い浮かべたのだった。瑤迦は我龍山の山頂をキッと睨みつけ、龍たちに伝えた。
「龍穴には私と飛龍で行く。お前たちは、それぞれの里に戻り、族長たちに現在の状況を詳しく聞いてほしい」
その言葉に龍たちは一斉に反応した。
「瑤迦様!?」
飛龍以外の三つの声が見事に重なった。
「危険です、瑤迦様」
昇龍が落ち着いた声で告げた。あとの二人も、そうですよ、と声を揃えた。
「大丈夫だ。龍穴に一番近いのが火龍族の里だからな。そちらにも行ってくる」
龍族の里はそれぞれ、水龍族が我龍山の内陸側の山裾、雷龍族は反対側の海側の山裾、風龍族は東の砂漠付近、そして、火龍族は我龍山の中腹にあるもう一つの火口近辺。龍穴というのは我龍山最大の山頂にある火口のことを指している。天帝の任務はその龍穴の確認だったのに、他のことを頼まれた三人は不満の声を漏らしたが、瑤迦の性格上、何を言っても聞かないので、渋々従うことにした。
こうして、それぞれの目的地に向かって四方向に飛んでいったのだった。
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