第51話 決起
「よく聞け。今まで、永い間続いてきた古の龍との戦いを終わらせる」
天帝の言葉に、今まで数々の戦いを勝ち抜いてきた猛者たちも驚きを隠せなかったのか、ザワザワとし始めた。
どこからともなく、「しかし、俺たちだけで勝てるのか?」「龍使いの瑤迦様はもういらっしゃらないんだぞ」「そうだよな」という声が聞こえる。一方で、「天龍軍と特魔様がいれば大丈夫だ」とか「天帝陛下も皇太子様もいらっしゃるから問題ないだろう」とかいう声も聞こえてくる。だが、声のほとんどは自分以外の誰かに頼るようなものばかりで、明らかに恐れているのが見てとれた。唯一天龍軍だけが声を出さずに次の天帝の言葉を待っていた。
天帝の隣に立つ信は、「予想通りの反応ねぇ」とか言って面白がり、信の反対側に立つ周は、動揺する武官たちを見て、無理もない、と思った。
―無理もない。今まで、古の龍との戦いが起こっても、一時的に封印することが精一杯だった。歴代天帝の誰も戦いを永遠に終わらせたことはない。前回の戦いは一万年程前で、もちろん今いる天人たちは誰もその時のことなど知らないが、記録によると、天界も天宮もめちゃめちゃに破壊されまくったらしい。約三十年前の戦いでは、外宮軍、天龍軍、特魔の働きで、天宮には被害がなかった。しかし、敵が全力でないことは明らかだった。全力がどれほどの力か、誰も知らない。不安に思う空気を感じ取ってか、天帝が言葉を継いだ。
「鎮まれ。戦いは終わらせる。絶対にだ。今からお前たちの不安を取り除いてやる。瑤迦!」
名前を呼ばれ、天帝の方を見ると、視線で前へ出るよう促された。皆に顔を見せてやれ、と言われ、武官たちから姿が見えるところまで進むと、一斉に歓声が上がった。中には泣きながら喜ぶ者もいた。それまで声を出すことのなかった天龍軍も喜びの声をあげていた。
天帝はさらに言葉を継いだ。
「今まで、特魔が五人全員揃った時代はない。天龍軍は最強。外宮軍、内空軍も力は申し分ない。紫の力は朕だけでなく、皇太子にも受け継がれておる」
喜びの声で溢れかえっていた場が、天帝の言葉を聞こうと今度は静寂に包まれていた。
天帝は不敵の笑みを浮かべ全員に問うた。
「皆、私について来てくれるな?」
再び割れんばかりの歓声が上がり、天帝は見事に武官の心を一つにしたのだった。
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