第50話 大舞台

雲一つない青空の下に寸分の乱れなく軍隊が並んでいる。その日の鳳凰山の山裾には天界中の天帝に従う武官が揃っていた。天宮の外側を守護する外宮軍三部隊、天宮内部・鳳凰山を守護する内宮軍二部隊、天帝の近衛・前衛の周と後衛の信、天界最強の軍、天龍軍。そして、特魔の五人と四天龍。

 少し高くなった大舞台に構えられた玉座に、天帝が腰掛け、その両脇を近衛の二人が固めている。特魔はその後方、天帝の背後に並んでいた。

「んーっ!壮観な眺めねぇ…屈強な男たちを一度にこんなにたくさん見られるなんて…最高!ありがとうございます、天帝」

「壮観であることは間違いないが、お前の男選びのためではないぞ」

「分かってますよ。それに私は迅迦ちゃん一筋ですもの」

そう言って迅迦の方に振り向き、バチっと片目を瞑った。自分がなぜ気に入られているかは分からないが、好かれている自覚のある迅迦は絡まれることにも慣れているので、無表情で受け流した。天帝は前々から疑問に思っていたことを聞いてみた。

「そういえば、お前なんで迅迦が好きなんだ?」

まさか理由を聞かれるとは思っていなかった信は少し驚いた表情を見せたが、すぐににっこり笑って答えた。

「アタシ、強い男が好きなんです」

その答えに今度は天帝がキョトンとした顔をした。

「強い男?だったら周の方が強いんじゃないか?」

「冗談でもやめてください」

それまで黙って聞いていた周も流石に声を出さずにはいられなかったのか、天帝の言葉に食い気味で入ってきた。

「そうですよ。アタシにだって好みがあるんですよ、こんなガタイが良いムサイ男は好みじゃないんです!」

確かに周はかなりガタイが良かった。身長も天界でおそらく一、二を争うほど高く、肩幅も広く、背中も広い。首も太く、逆三角形の体型はどこからどうみても武官だった。顔も柔らかさなど微塵もなく、頬にある傷のせいで正直、いかつい印象だ。小さい子どもなど、目が合っただけで泣き出しそうだ。

隣に立つ見るからに頼りがいのある武官を見て、妙に納得した天帝だった。

そんな緊張感のない会話をしていると、ジャーンとドラが鳴った。

同時に天帝が立ち、大舞台の欄干まで歩を進めた。場が一気にシンと静まり、全員が天帝の言葉を待った。

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