第48話 守護者

ゆすってもピクリとも反応しない瑤迦を見て、昇龍は迅迦に尋ねた。

「眠っているのか?」

「いや、血が足りないんだ。増血剤は飲ませたが、まだ目覚めない。もしかしたら……戻らんかもしれんな」

迅迦の言葉に龍たちは少し気落ちしたように見えたが、安堵の表情を浮かべていた。瑤迦のこととなるとぎゃあぎゃあとうるさい四天龍の思いもよらない反応に驚いた流迦は思わず聞いた。

「どうかしたのですか?もっと食ってかかりそうなものなのに」

流迦らしいトゲのある言い方だったが、そんなことはまるで気にしていないかのように飛龍ははっきり答えた。

「この先がどうであれ、瑤迦様がここにいるならそれで良い」

その言葉に、他の龍たちも笑顔で頷いた。それまでじっとやりとりを見ていた炎迦も明るい調子で言った。

「ま、そういうことだ。とりあえず部屋に運ぶぞ。しばらく様子見だ」

その言葉に静かな声で怒りを表したのは飛龍だった。

「なんでだ?」

「ん?」

「なんでお前たちが運ぶんだ?」

「なんでって……」

「迅迦!瑤迦様かせっ!俺が運ぶ!お前らを瑤迦様の部屋に入れてたまるか!」

飛龍の叫びを皮切りに龍弥と龍椰で迅迦と炎迦を羽交締めにし、飛龍が無理やり迅迦から瑤迦を奪ったのを見て、

今度のことで龍たちも少し大人になったのかも……と思っていた流迦は少し高くなっていた龍たちの評価を叩き落としたのだった。


特魔と四天龍たちが騒いでいるのを尻目に執務室に戻ろうとした天帝と皇后だったが、自分たちの優秀な部下はそれを許してくれなかった。

「ちょっと、天帝?勝手にフラフラするのは良いんだけど、せめて行き先ぐらい言ってよね。心配するじゃない」

「すまんな。急だったから」

二人揃って誰にも言わずフラフラ仙界まで行っていた、自分たちが偉い人だという自覚の薄い夫婦は、近衛、侍従長、女官長から一通り文句を言われるハメになった。しかし、全て事実なので、二人は仕方なく最後まで聞いた。近衛の二人は瑤迦について聞きたいことが盛りだくさんだったが、天帝が威厳を失うのも可哀想だったので、執務室で三人になるのを待ってから問い詰めに問い詰めた。途中ボソボソと朕は天帝なのにとかなんとか言っていたが、二人ともひと睨みして黙らせた。そして最後に信がにっこり笑って尋ねた。

「もう隠してるコト、ないですよねぇ?」

その顔と言葉にうっと喉を詰まらせた天帝だったが、フーっと息を吐き、答えた。

「慎重に進めたいことがある。時期が来たら、話す」

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