第44話 消息
「陛下がいらっしゃいません!どこにも!」
「皇后様もいらっしゃいませんわ」
「特魔の奴らもだ!」
「アタシの迅迦ちゃんもいなぁい」
侍従長、女官長、近衛の前衛・周、後衛・信が天帝の執務室に駆け込んできた。いや、その中の一人、近衛の後衛、信だけは口調と同じくゆったりとした足取りで入ってきた。執務室にいた飛龍は鬼のような形相で入って来た者たちを睨みつけた。
「つまり全員行方不明というわけだな」
飛龍の凄まじい剣幕にその場にいた全員が気圧された。
今朝一番最初に異変に気がついたのは飛龍だった。昨日は感じられていた瑤迦の気が消えていた。すぐさま昇龍を叩き起こし、瑤迦の部屋に向かったが瑤迦の姿はなく、寝台も綺麗に整えてあった。飛龍は昨夜のことを思い出し、激しく後悔した。
あの時、強引にでも部屋に踏み込んでいたら―
飛龍は話をしようと昨夜瑤迦を訪ねていた。しかし、明日だと言われ、顔も見せてもらえず瑤迦の部屋を後にした。それが今日、姿を消した。
明日など、来ないこともあると、俺はあの時、知ったのに―
嫌な予感が背中を這い上ってくる。最悪の事態が頭をよぎったその瞬間、昇龍に名前を呼ばれてハッとした。
「ぼーっとするな!私は水脈で天界中を探すから、お前はこのことを天帝と皇后、それから特魔に伝えろ!何か知っているかもしれん。龍弥と龍椰にも探すのを手伝うよう言ってくれ」
「分かった」
そう言って二人は分かれ、昇龍は近くの水脈、飛龍は天帝の居室を目指した。
天帝の居住区域に着いた飛龍だったが、四天龍といえども、押し入ることはできず、侍従長に止められた。時間が惜しかったので、侍従長には詳しく話すこともできず、天帝、皇后、特魔に至急伝えたいことがあるとだけ伝えると天帝の執務室で待つように言われ、仕方なく、そちらに向かった。
苛立ちながら待っていると、龍弥と龍椰も慌てた様子で駆けてきたので、瑤迦がいなくなったことと、昇龍が水脈を使って探していること、手分けして探して欲しいことを伝えた。二人とも動揺はしていたが、深く追求はせず、分かったとだけ言って飛龍に背中を向けた。去り際、龍弥が振り返り、いつもの可愛い笑顔で言った。
「飛ぃ兄、瑤迦様は絶対見つけるからね!大丈夫だから!」
その言葉に、飛龍は自分が今、どんな顔をしているのかとハッとし、ギュッと拳を握り締め、少しだけ冷静さを取り戻したのだった。
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