第39話 魂魄の生還

「わかった。それでは準備を。花音」

「かしこまりました」

花音は侍従に頼んで牀を運ばせた。そして自身は香炉を用意した。

「瑤迦様、こちらへ」

「それは?」

「眠り香です」

瑤迦はありがとう、と言って牀に横たわった。天帝はその牀の脇に立ち、瑤迦に言った。

「魂魄を抜いて元の身体に戻す。そなたは何もする必要はない。眠っている間に終わるからな。楽にしておれよ」

「はい。あの……この身体は……」

「おそらく魂魄を抜いたら消滅する」

瑤迦はそうですか、と言って目を閉じた。天帝は、始めるぞと言って瑤迦の額に手を置いた。全員が見守る中、天帝は手のひらに気を集中させ魂魄を引き抜いた。手のひらでふわふわ浮かぶ魂魄は、前回の時と同じく、大きくはないが、濃い紫色の強い光を放っていた。

「わ、キレーだね。あれが瑤の魂魄……」

「ああ、綺麗だな」

前回の時見ていなかった雷迦と迅迦は思わず言葉を漏らした。全員の視線が瑤迦の魂魄に集まる中、天帝が魂魄の抜けた身体に目を移すと、すでに崩れ始めていた。そして全員が天帝の視線の先に辿り着いた頃には、衣だけを残し霧散していた。天帝はそれを見届けてから、魂魄を元の身体に戻すべく、天道に押し込んだ時の様に瑤迦の額に魂魄を気で押し込んだ。魂魄が全て身体に戻った瞬間、身体を覆っていた白い光は消え、ドサっと天帝の腕に落ちてきた。

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