第36話 現状報告
天帝と炎迦、流迦が天帝の執務室に戻ると、鈴をはじめ、迅迦、雷迦の二人も、瑤迦の四天龍も戻ってきていた。
いつもは偉そうな龍たちも俯き、黙り込んでいる。天帝はそんな龍たちを冷たい目で一瞥し、椅子に腰掛けた。
「瑤迦はどうなったのですか?」
全員が一斉に声の主に注目した。
天帝が話しだすのを待たずに発言したのは迅迦だった。特魔最年長で出仕年数も長く、天帝との付き合いも長い迅迦には珍しいことだった。それほどに緊迫して切羽詰まった状況だったのだろう、と龍たちは全員顔面蒼白になった。
「魂魄と身体は切り離した。……身体の方はどうだ?鈴よ」
切り離したという言葉に事情を知らない龍たちは息を飲み絶句した。龍たちが言葉を発することができない状態だと分かってはいたが、構っていられる状況ではなかったので、天帝は無視して鈴に発言を促した。
「はい。天帝の指示通り身体の時を止めて修復しております。ただ、血を流し過ぎております……助かるかどうかは……」
「五分五分といったところか。よし。……魂魄の方だが……おそらく無事に天道に乗ったはずだ」
その言葉に、鈴も特魔たちも心から安心した表情をみせ、顔を見合わせ喜んだ。
「でも、天帝よくあんな方法思いついたよねー。魂魄と身体を切り離して魂魄は転生させて身体は修復するなんてさ。人界の魂魄は絶対天界に戻ってくるし。身体は修復すれば問題ないし!……でも、なんで身体消滅しなかったの?鈴様が身体の時間止めてたから?」
その場を見ていない雷迦は気になっていることを素直に聞いてみた。
「それもあるが……一番大きいのは龍の血だな」
「あ!そっか!瑤って半分龍なんだっけ」
「そうだ。龍の生命力はどの種族よりも強い。紫の力で瑤迦が龍として覚醒することはないが、半分とはいえ龍の血を引くなら魂魄を切り離してもすぐに身体が消滅することはないだろうと思ってな。だからこの方法はお前たちには使えん。覚えておけよ」
なるほど!と雷迦は深く頷き納得していた。
それでもまだ、龍たちの顔は青ざめたままだった。その様子を見て流迦が大丈夫ですか?と尋ねるまで、昇龍でさえ、一言も発することができなかった。
流迦は心配になり、龍たちを安心させるように言った。
「天帝と鈴様が手を尽くしてくださったのです。もう大丈夫ですよ」
流迦の優しい表情と声で龍たちもほぅっと息を吐き、少しだけ安心したようだった。
しかし、天帝はすぐさまその安心を打ち砕いた。
「誰が大丈夫だと言った」
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