第35話 下山
(おそらくあの時だな……)天帝は瑤迦を天道に押し込んだ時に弾き出された魂魄のことを思い出していた。
(数が減ったようには思わなかったが……衝撃が熱として天門の外に伝わったか)
天帝は焼けた山を見渡して炎迦に尋ねた。
「して、その火は流迦が消したのか?」
「え……あ、ああ、多分……でも、わかんねぇ。急に洪水みたいに大量の水が流れてきて火を飲み込んで消したんだ」
天帝は何かを考えるように、顎に手を当てそうかと答えた。その時、山の方からガサガサと音がした。見ると、流迦が山を降りてきていた。ただ、いつもと様子が違う。ぼーっとして視点も定まっていないように見える。何があったのかと心配になった炎迦は駆け寄り、流迦の肩をガシッと掴み、大きく揺さぶった。
「おい、流!何があった!?」
炎迦の大きな声と、激しく揺さぶられたことでバチッっと焦点があった流迦は今、現実に戻ってきましたというふうに答えた。
「炎……もう、だいじょうぶ、です……」
そして、今度ははっきりと天帝の姿を捉え、安心したように言った。
「天帝、ご無事で、よかった……」
「ああ、すまん。心配かけたか。ところで、流迦。左魔を人形に顕現できたようだな」
「わかるのですか!?」
「当然だろう。私が作ったのだぞ。あれは。……これからはそなたが主だ。名も与え、大切にしろよ」
「はい」
二人のやりとりに炎迦は顔をキラキラさせ、鼻息荒く流迦に言った。
「本当か!?じゃ、さっきの洪水みたいなすげえのは左魔がやったのか!?……あれ、つーことは、もしかして……右魔と左魔どっちも人形に顕現できてねーの俺だけじゃん!」
流迦は困ったように微笑み、そうですね、とだけ言っておいた。そして、天帝に向き直り、ここに来た本来の目的がどうなったのか尋ねた。
「天帝、瑤はどうなりましたか?」
その言葉にハッとなり、炎迦も天帝に向き直った。
「戻ってから話す」
天帝は表情を消し、それだけ答えたのだった。
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