第34話 主人の帰還
(さっきの水……もしかしなくても流か?)
流れてきた大水の難をなんとか逃れた炎迦は、山の中へ消えていった流迦を探しに行きたい気持ちでいっぱいだったが、勝手に動いたら後で流迦にめちゃくちゃ怒られそうだったので、ぐっと堪えて天門前で待つことにした。何より天帝がまだ帰ってこない―……。先ほどの火が天帝が言った暴走だというのなら、瑤迦の魂魄は拒絶されたということか? 急に不安になった炎迦は天門を睨みつけた。ぐっと拳を握り締め一歩踏み出そうとした時、天門の空間が歪んだ。
「なんだ?お前一人か?流迦はどうした?」
いつもと変わらない天帝の声に、離れていた時間は長くはないのに、もう何日も会っていなかったような感覚を覚えた。
「天帝……」
いつもの自信たっぷりでカラッとした明るさをもつ炎迦とは思えない不安げな表情と頼りなげな声だった。俯く炎迦の背後に目をやると、山裾から中腹にかけての面積の半分ほどが火に焼かれていた。何か起こるかもしれないと思ってはいたが、正直ここまでのことが起こるとは思っていなかった天帝は目の前の惨状に言葉を詰まらせた。
「ごめん……天帝、急に天門から熱風が吹いて、気がついたら山が燃えてた。流が雨降らせてだいぶ消してくれたんだけど、完全には消えなくて、上から消すって言ってあいつ、山ン中入っていっちまって……でも、」
息継ぎもせず話す炎迦を天帝は手で静止した。
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