第31話 天道
天帝といえども余程のことがなければ天門内に入ることはまずない。天界に問題がなければ天門、その中の天道に異常が起きることはないからだ。だから天帝が天門内に入るのもこれが初めてだった。暗闇の中を歩いていると、主人の帰還を歓迎するかのように一筋の光が行く先を示してくれる。しばらく歩いて行くと、色とりどりの光の玉がたくさん集まっている場所にたどり着いた。
「これが人間の魂魄か…朕も初めて見るな…」
色、濃淡、大きさ、光の強さ、一つとして同じものはない。美しい…と思った。手のひらの上でふわふわと浮いている紫の光の玉を見ると、大きさは小さいが、色も光の強さも、どの光の玉よりも濃く、強かった。異物…つい先ほど炎迦と流迦に言った言葉が妙にしっくりきた。そう、天人の魂魄は異物なのだ。人間よりも遥かに長い時を生き、転生することのない天人は人間よりも個が強く、刹那的な生き物だ。人間の器は、この魂魄に耐えられるか…そう思いながら、天帝は光の玉が集まっている柱を見つめた。上も下も終わりが見えない玻璃でできた巨大な柱。「天道…」はじめて見るのにこの道とは口が裂けても言えぬ柱が天道だとはっきりわかったのは、何百か何千ではきかぬ光の玉が柱の中に『居た』からだ。先程から何個かの光の玉が柱の中に入っていくのも見た。
(つまり、この柱に瑤を入れたら転生できるということか)手のひらの上でふわふわ浮いている瑤を柱に近づけてみたが自分からは入ってくれそうにないし、吸い込まれていく様子もなさそうだった。どうしようかと考えた結果、気で押し込めてみようと思い立ち、手のひらにさらに気を込め、柱に押し付けてみた。押し返されている感覚はあったが、構わず押し込めていると、瑤が柱の中に入った瞬間、元々柱の中に『居た』光の玉の大半が弾き出されてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます