第28話 激怒
「鈴!ここだ!」
呼ばれて瑤迦の状態を見た鈴の顔も青ざめた。「なんてこと!」
「見ての通りだ。鈴、お前たち、時間がない。私の言うとおりにしろ!」鈴も特魔たちもはいと返事をした。
「鈴。これから瑤の魂魄を身体から切り離す。身体の方を頼む」天帝の言葉に異を唱えたのは特魔たちだった。長い時間を生きる天人たちにも当然死はある。肉体か、魂魄のどちらかが失われ、還る場所を失くした時、天人は消滅する。消滅するのだから、転生もありえない。だからこそ、特魔たちはそれぞれ声を荒らげた。
「天帝!?何言ってんだ!?そんなことしたら瑤は消えるだろうが!」
「瑤を助けないのですか!?」
「天帝!瑤を助けてよ!」
「見損なったぜ、天帝」
言うとおりにすると言っておきながら言うことを聞かない特魔たちを黙らせたのは、鈴だった。
「お黙りなさい!誰が助けないと言いました!?助けます!今は言うことを聞きなさい!」
普段怒鳴ることなどない、やわらかい春の風を纏う皇后の一喝に特魔たちはビクッと身体を震わせ、押し黙った。
静かになったところで、鈴はふぅと息を吐き天帝に向き直った。
「瑤迦を転生させるのですか?」「そうだ」
二人の会話に特魔たちは全員驚きを隠せなかった。
「転生って…できんのか?魂魄と身体切り離したら消滅するんじゃないのか?」炎迦が疑いの目で天帝を見て尋ねた。天人は魂魄か肉体か、どちらかが失われたら消滅する。特に肉体は、魂魄が抜けた瞬間、ただの器になる。生気のない器は生命体ではない。…維持できず、霧散する。特魔たちはそうやって消滅した天人たちをたくさん見てきた。それは、天帝や鈴ももちろん同様だが。絶対に助かるのでなければ、そんなことはさせられない。一か八かは瑤迦を消滅させてしまう。
流迦も静かに尋ねた。「天帝…瑤が消滅することは本当にないんですか?」
「ない。大丈夫だ。詳しい説明は後だ。今は時が惜しい。言う通りにしてくれるな?」
自らが仕える主の力強く、迷いのない言葉に、今度こそ、全員心から御意と答えたのだった。
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