第14話 龍使い

「なーに、瑤泣かせてんだよ、流」と炎迦が軽い調子で声をかけ、「えー、なんで瑤泣いてんのー?流が泣かせたのー?」「いや、流に限ってそれはないだろ」と雷迦と迅迦が続く。「人聞きの悪いこと言わないでください。違いますよ」と瑤迦の頭を撫でながら流迦が答えた。

瑤迦は後から来た三人をキッと睨み「のぞいてたの!?悪趣味!」と言ってみたが、炎迦に「へーん!今のお前に怒られてもこわくねーもーん。泣き虫のチビ姫ー」といなされたあげくバカにされた。ムカつく。瑤迦が言い返そうとしたとき、炎迦がハタと動きをとめ、首を捻って不思議そうに瑤迦に聞いた。

「そういや、瑤、オメーいつ気づいたんだ?自分が今龍使いじゃないって」「ああ…それなら最初からわかってたが」「そうなのか?」と今度は迅迦が聞く。「うん。龍使いってね、四肢をそれぞれ龍に喰わせて契約するんだけど」「ええっそれじゃ、瑤の手足はあいつらが食べちゃったの!?でもちゃんとあるよね!?」と慌てて雷迦が瑤迦の手足を確認する。「いや、実際に食べるわけじゃないから。要するに、体の一部を共有することで私は龍たちの力を使えてるわけだけど」そう言うと瑤迦は左腕の袖を捲り、包帯の巻かれた腕を見せた。

「人界で敵にやられたのに、共有してるはずの飛龍は無傷だった。本来であれば損傷は半々になるはずなんだけどね」「へー。じゃ、お前の左腕は飛龍と共有してんのか」と、炎迦が納得という表情で言った。「そう。それとこれだ」と言って、瑤迦は着物の合わせをはだけさせ、白い胸元をあらわにした。

「なっ、なっ、なっ、何してんだー!瑤ーーー!!!」と炎迦だけがなぜか顔を真っ赤にしていた。

「何もありませんが…」「うん。ないね」「ねぇな」と他の三人はしっかりと確認した。その光景に、炎迦は瑤迦を背に三人の前に立ち、

「お前ら、何みてんだよ!瑤、しまえっ!早くっ!」となぜか一人焦っていた。

なんかちょっと失礼だな。と思いながら、合わせを直し、瑤迦は言った。

「何もないことがおかしいんだ。龍使いの特徴は、『紫の瞳を持つ女』というだけではないからな。私の本来の身体には五芒星の印があった。それも龍使いの特徴らしい」「後からつけたものではなく?」「違う。生まれた時からあったらしい」「なるほどな。じゃ、今のお前は本当に何の力も使えんという訳だな」迅迦の容赦のない言葉に他の全員がビクっと反応し、瑤迦が答えた。「そうだ」迅迦はさらに突っ込んだ質問をした。「それで?これからどうするつもりだ?」若い四人だけだと馴れ合いになり結論を後回しにしそうな話題だが、迅迦がいることでその場は引き締まり、結論を出さざるを得ない状況になった。最年長の迅迦はまだまだ若い四人のお守り兼お目付け役なのだ。瑤迦はしばらく考え、意を決して口を開いた。

「天帝の言うように、せめて、紫の力だけでも使えるようにするべきだと思う。そうすれば、少しは役に立てる。でも、そのためには…」

「他の天人にお前の魂魄を入れなければならない。つまり、誰かが消滅しなければならない」

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