第12話 理由
「ここでしたか、瑤」流迦の美しい声に瑤迦は振り向いた。夕日に照らされ溶けてしまいそうなほど美しい流迦に、見慣れている瑤迦もハッと息を呑んだ。
「あなたは本当にここが好きですね。…ああ、もう日が沈む」隣に立つ流迦に瑤迦はうんと声だけで返事をした。
「龍たちが落ち込んでいましたよ。何かあったのですか?…いえ、天帝に何を言われたんです?」
瑤迦は天帝と話したことを流迦に話した。
「無論、否だ」
瑤迦の質問を聞いた後、天帝は人払いをし、瑤迦と二人になってから答えた。
瑤迦は何も言わず、次の言葉を待った。
「今のお前は人間だ。龍使いでなければ、天人ですらない。瞳だけはそなたの魂魄に呼応して紫に変化したようだが、力は使えまい。使えたとして、人間の身体は弱い。すぐに限界がこような」
思っていた通りの答えだった。
「では、なぜ、私は再び天界に戻らされたのでしょうか?」
「分かりきったことを。そなたが必要だからだ。『龍使い』がおるだけで軍の士気は上がる。たとえ力がなくともな」
「皆を騙しても良いと?」「言わねば分からん」
瑤迦はたまらず眦を吊りあげ声を荒らげた。
「見せかけでも良いと!?それが天帝の言うことかっ!」
天帝は終始落ち着いていて、呆れているようでもあった。それが瑤迦を余計に苛立たせた。
「そう直情的だから前の時やられたんだと、なぜわからん。自分の力を過信した。それはお前の奢りだ」
そんなことは分かっている!自分が一番!
「お前が弱かった。だからやられたんだ。結果、天界を危険に晒した。今回も同じ過ちを冒す気か」
そんなことはしない!天界は私が守る!…そう言えたらよかったのに。瑤迦は何も言えず、俯いているだけだった。
「いつまでそうしているつもりだ?他にないならもう行くが」天帝の容赦ない言葉にピクリと肩を振るわせ瑤迦は力なく尋ねた。
「ではなぜ、あの時人界に転生させたのですか…」天帝は、はぁと一つため息をつき言った「言っただろう。お前の存在が必要になると思ったからだと」
そして思いついたように続けた。「ああ、でも、天人として紫の力を使うことはできるぞ」その言葉に瑤迦はハッと顔をあげて
縋りつくような目で天帝を見上げた。
「他の天人の身体にお前の魂魄を入れれば良い」
一言告げた後、天帝は振り返ることなく、執務室を出て行った。
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