第3話 四天龍
「皆、久しいな。もう大丈夫だ。待たせてすまなかった」
「姫……良かった」
4人の男が瑤迦を庇う様に立ち、それぞれにつぶやく
瑤迦は4人の顔を見て、言った。
「話は後だ。飛龍(ひりゅう)はこの男、龍弥(たつみ)と龍揶(たつや)はここの人たちの守護、安全確保、昇龍(しょうりゅう)と私は後ろから来る邪悪な気配たっぷりの奴らの相手」
その言葉に4人のうちの1人が眉根を寄せて納得いってないという様な明らかに不機嫌そうな顔で尋ねる。
「なぜその配置なんです?」
声の主は、4人の中で一番背が高く、がっしりと逞しい身体つきをしており、背中の真ん中まである赤毛を首の辺りで一つに束ねている。不思議と人目を引く容貌の男だ。一番の特徴は、軽装だが武装であるにも関わらず、眼鏡をかけていることだろう。鋭い目つきに妙にしっくりくる眼鏡だ。
「龍弥と龍揶は見た目が可愛くて人当たりが良いからみんなを怖がらせないで済むしその方が移動もスムーズに出来るから」
人差し指を立て、腰に手を当て、胸を張り堂々と瑤迦が答える。
龍弥と龍揶と呼ばれている少年と言っても良いくらいの年頃の2人はそれぞれ
「ですよねー」
「うん!知ってる」
と言わんばかりの得意げな顔でにっこりと飛龍を見ている。彼らは自分たちが可愛いということを充分に知っていた。
「あいつらではない!俺が言ってるのはあなたの隣のそいつだ!昇龍!なぜお前が!」
眼鏡の向こうの燃えるような緋色の瞳が今にも射殺しそうな視線で睨みつけている。昇龍と呼ばれた男は飛龍とは対照的に穏やかな雰囲気を纏っており、
顎のあたりで切り揃えられた黒髪と深い青色の瞳、瑤迦を護るように立つその姿は一目で誠実さと冷静さ、優しさを感じさせる。
「だそうですが、姫」
昇龍は瑤迦に尋ねた。
瑤迦は一つため息をつき飛龍に答えた。
「もう決めた。時間もない。それとも一人であいつを倒す自信がないのか?ならば仕方ない。あいつは昇龍に任せ―」
「俺1人で充分だ!」
飛龍は戦装束の男を目がけ文字通り飛び出した。
「あーあ、飛ぃ兄行っちゃったー」
「ホント単純…」
と口々にするのは龍弥と龍揶だ。双子と思えるほど似たような容姿だが、2人の髪はそれぞれ金と銀。龍弥は茶目っ気たっぷりの薄茶色の瞳で龍揶は吸い込まれそうなほど美しい翡翠色の瞳だ。
(この2人でアイドルユニット組んでデビューとかしたら絶対売れる)と瑤迦はちょっと本気で考えた。
「みんなを頼んだよ。二人とも」
瑤迦の言葉に愛嬌たっぷりの顔で頷き二人は全員を部屋の一ヶ所に集め始める。
瑤迦と昇龍は殺気と妖気が漂うただ一つの出入り口であるドアの前に立ち、瑤迦の合図と共に昇龍は手を前に突き出した。
昇龍が呪文の様な言葉を唱えると大量の水がドアを弾き飛ばした。それと共にドアの向こうに立ち込めていた殺気と妖気は消え去り、飛龍が相手をしていた戦装束の男も消えた。
「姫、これはどういうことでしょうか」
昇龍は瑤迦に尋ねる。
「うん……小手調べか宣戦布告しに来たか……もしくはお前たちを引っ張り出すためか……」
昇龍は首を縦に振り答えた。
「全て……でしょうね、おそらく。貴女が本当に龍使いかも見極めるために………ところで姫」
瑤迦はどうしたと首を傾げる。
昇龍は軽くため息をついた後今瑤迦が1番触れて欲しくないだろうことをさらっとしかも爽やかな笑顔で尋ねた。
「どうします?この状況」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます