第2話 声

 声が聞こえたと同時に風が部屋中を吹きまくる。部屋にいる全員が立っていられずしゃがみ込んだ。室内で風が吹き荒れている訳の分からない状況に全員が慌てふためいている。机の下に隠れる者、部屋の隅でうずくまる者、外に逃げようと床を這ってドアに向かう者、そんな中、数人の悲鳴が聞こえる。白神が声の方を向くと、腕や足に赤い線が見える。(え、これ、かまいたち!?)何が起こっているのかはわからないが、分かっている事はただ一つ。あり得ないことが起こっている。

(よく分からないけど……こんな時狙われるのって………社長は!?)壇上のその人を見ると頭上に風の刃が迫っている。危ない!声になったか分からない。気付けば身体が動き左腕を出していた。

左腕に痛みが走る。

「白神さん!」

「ねえさん!」

社長と真悠が叫ぶ声が聞こえた。

(っ…)痛みによろけ顔を上げると目の前には戦装束という言葉がぴったりの格好をした男が立っていた。


『龍使いと言えど龍がおらねばただの女か』


(この声!)夢で聞いた声だと気がつき恐怖を覚えた。体も震えている。

(龍使い?何それ?何のこと?てゆーか誰?この人?人違い?)

思いつく限りの疑問は声にならない。


『ふん。声も出せぬか。まぁ良い。このまま死んでもらう』男が刀を振り上げたその時、



「瑤迦(ようか)姫」

「瑤迦様」

「瑤迦姫様」

「姫様」


声が聞こえたのと同時に、白神は紫の光に包まれた。ドクン、ドクンと心臓が大きく脈打つ。


(思い…出した…)

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