第27話

「急に呼び出してすまないね」


研究所…つまり俺達の家でもあるこの施設において、研究所としての役割はこのフェリシーが一人で回している。旧メンバーは皆実験事故で亡くなったり、魔物の侵攻で犠牲になったりしたのだ。


「構わない、それで用件は?」


「協会が君に名指しで依頼を出した。とある行方不明者の捜索なのたが…君の学校の関係者なんだ」


「生徒か?確かに一つ空席があったな。俺に頼むってことはダンジョンで迷子ってことか?」


「鋭いな。準備ができたらまたここに来てくれ。亀裂はここから繋げる」


俺はフェリシーの元を離れ、準備を進めた。もう何日もダンジョンに行っていない。それに、最後の方は変則的なダンジョンばかりだむった。全部『あの女』のせいだが…


————————————————————


『警告、これより先はマッピングされておりません。未知の脅威に注意してください』


「…分かってるよDSAS。でも、進まなきゃいけないでしょ?」


『私に直接干渉することはできませんので』


「はいはい…あんた本当にAIなの?」


『解答。DSASはアストラ社によって開発された試験的ダンジョン支援モジュ————』


ぷつん、と音がして映像が切れる。


「…まったく…おかげでとっくに入学式終わっちゃったよ…」


少女は身の丈に合わない巨大な兵器を担ぎながら、暗闇を進み続ける。何の音もせず、どこまで繋がっているのかも分からない。


「次からはアストラの依頼なんて受けないようにしよ…」


手探りで進み続けると、扉が見えてきた。他に進む場所も無いので、取っ手に手をかけた。冷たい金属の触感を頼りに、扉を開けた。


「なるほど、ボス部屋って感じね…」


少女は身構える。バイザーが降り、肩のキャノンも前方に展開した。程なくして、巨大な龍が現れる。全身が赤く、凶暴な目つきをしている。


「未登録のモンスター…」


視界情報には眼前の龍がUnknownと表示される。心の隅に恐怖心が芽生えた。レールガンを持つ右手が震えている。あの瞳に見つめられると、心臓を握られているような感覚に陥るのだ。徐々に心拍が上がっていくのが分かった。息も荒くなっていく。


(そんな…!この私が恐怖で動けないなんて…!まずい…やられる…!)


少女は瞳を閉じて、死を覚悟した。だが、その時は訪れなかった。一発の銃声が鳴り響き、龍の慟哭が聞こえた。恐る恐る目を開ける。自分の目の前に少年が立っていた。


「大丈夫か—————…!?君は…!?」


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心の壊れた探索者とヤンデレガールズ Jack4l&芋ケンプ @imo_kenp

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