第24話

「よぉジン、制服なんて似合わねぇじゃねぇか。写真撮らせろよ」


学園長の長い長ーいありがたいお話を聞き、そつなく式をこなして教室に入ろうとした最中、戦友のガーベラに出会った。なんでコイツが…とも思ったが、旧友に出会えて嬉しい気持ちも確かにある。


「お前、そんな歳じゃないだろ。なんでここに?」


「非常勤講師ってやつ?結構金貰えるみたいだから引き受けてやったのさ」


「お前らしい」


「金なんていくらあっても困らんだろ?妹もいるわけだしな」


妹…コードネーム『ローズマリー』か。年齢は知らないけど、背は高いがアイツが先輩になるなんて嫌だぞ…


「そういや名前はどうすんだよ。偵察部隊の名前が世間に知られていいのか?俺らは表向きには『存在しない』ことになってるが…」


「偽名以外ないだろ。ここでは俺のことは金木龍二って呼べ」


「金木龍二、金木龍二ねぇ…あんまり似合わないな」


「仕方ねぇだろ?」


コイツに非常勤とは言えお堅い仕事が務まるのだろうか。などと思いつつ、記念に写真を一枚撮影した。ガーベラと並んで分かったが、探索部隊時代より少し角が取れたように見えた。


「んじゃあまた会おうぜ、相棒」


「いつから相棒になったんだか…」


アイツのことを金木先生、なんで呼ぶことになるのだろうか。学園ではあまり顔を合わせないことを祈るばかりだ。


「遅かったですね、トイレですか?」


教室に入るや否や、ルナリアに声をかけられた。知り合いがいるのは心強いのだが、知り合いというには関係が深すぎて辟易する。


「ちょっと予想外の人間に出会っただけだ。ところで…どうだ、上手くやれそうか?」


「どの口が言うのやら。404小隊は全員幼馴染みたいなものなので構いませんが、初対面の女の子を口説いたりしないでくださいね」


「俺がお前達相手に口説いたことがあったかよ…」


俺は心配でならない。マトモだが常識知らずなルナリアが学園で上手くやれるのか…


「そういやここでの名前何だっけ?ルナリアって呼ぶわけにはいかないだろ」


黒百合朔良クロユリ サクラと。可愛らしくて、私みたいでしょう?」


「…誰が決めたんだ、その名前?」


「フェリシーからです。彼女は博識ですからね」


一般的な感性なら、花言葉など当てにならない、そう一蹴することもできるが、俺にとってはコードネームに隠された花言葉は無視できないものだ。…クロユリの花言葉には『恋』『呪い』と言ったニュアンスがある。それをわざわざ選ぶあたり…


「可愛くは…無いよなぁ……」


「なにか?」


「何も…」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る