第13話 国庫が増えたよ

 ドツイン帝国の王と王女は解放され、飛竜に乗って帰国してから数日後。

 骨宰相から報告がもたらされた。


「魔王様、教国連合から帝国軍が撤退しました。」

「そっか。わかった。」


「あと、戦費補償の金貨60万枚(600億)を受け取っております。」

「お金増えたね。今、国庫にどれぐらいあるの?」


「はい、金貨135万枚(1350億)ございます。」

「今回の戦争でもブランズに金貨13万枚とポランドへ金貨2万枚支払ったから、増えないね。」


「はい。自国の戦費や戦艦建造費で常時消費もしておりますので。」


 空母の建造は進んでいるのか確認した。

 造船所の増築とドッグの新設を同時に進めているそうだ。


 直轄都市となったシガポルから、造船技師を派遣させて急ピッチで建造しているとのこと。そして、ブランズとポランドの造船技師も研修を兼ねて、多数が建造に参加しているそうだ。


 投下弾と迫撃砲は実戦投入した結果、投下弾は非常に効果が高かった。

 しかし迫撃砲は陸戦が無かったので未使用で終わった。

 引き続き、投下弾と迫撃砲の検証を行うように指示をした。


「ねえ、骨宰相、戦略物資の調達ってどうしてるの?」

「はい。ミスリル、鉄、魔石、木材、銅、オリハルコンの

 優先順で進めております。」


「調達状況は?」

「ミスリルの調達が困難です。価格を問わずで市場から購入しているのですが…。」


「ミスリルの代替金属ってあるの?」

「オリハルコンで可能ですが、希少すぎて流通量と価格で現実的ではありません。」


「鉄じゃ無理なの?」

「鉄は合金にして強度を上げられますが、付与術が乗らないのとミスリルより強度が低いのです。」


「そっか。わかった。引き続き物資の調達をお願いね。」


 そして、ブランズ王国へ進軍してきた教国連合軍は、帝国が撤退したのを機に全軍退却をした。僕たちは追撃をせず、軍を引き上げ再戦の準備を整えることにした。


 ミスリルの調達が滞っているため、シガポル戦艦5隻の改修が進まない。

 ポランドの戦艦2隻は改修済み。空母は新造を含めて5隻は準備が完了している。

 海軍は合計で、空母15隻と改修戦艦7隻で艦隊を組む予定だ。


 飛竜隊は陸600,空100,海500を合わせ、計1200匹を配置している。

 現在も増員させているが、飛竜の生息数が少なく限界になっている。


「ねえ、骨、飛竜ってもっと捕獲出来ないの?」

「ほ、ほねって…」


「なに?」

「い、いえ。飛竜は元々個体数が少なく希少種なのです。性格は大人しく御しやすいので乱獲された経緯もありますが。」


「他の飛ぶ魔物はどうなの?」


「魔族でグリフォンやワイバーンの協力を得られれば、大幅に増員が可能と思われます。」


「どこに居てるの?」

「魔国領内にも住んでおりますが〝神の眠る島〟で数多く生活していると聞きます。」


「魔族ってことは、喋るんだよね?」

「はい。魔物ではありません。民として受け入れる必要があります。」


「神の眠る島って何?」

「詳細は不明ですが、結界があり、侵入が行えない島との事です。」


「結界?なにそれ?」

「不可視の壁があり、一定の海域から中には入れません。」


「神ってゼウスの事?」

「それは分かりません。伝承で聞き伝えられている程度ですので。」


「ふーん…」

「あの…、なにか…」


「よし、そこを占領しよう!」

「ええ! 結界があり無理ですよ!」


「ゼウスに嫌がらせするんだ!これは決定だ!」


 僕は神の眠る島に興味が湧いた。

 空母と戦艦の改修と建造が完了したら出撃することを決定した。

 島への出撃まで時間があるので、領内のグリフォンとワイバーンを捜索して連行するように命令した。


 ─━─━─━─━─━─━─━


 サザ教団の布教がドツイン帝国との条約により、一気に加速した。

 現在、自国領内、ブランズ、ポランド、シガポル、ドツインの国内はサザ教団の勢力下になった。

 サザ教騎士団も小国に匹敵する軍事力を有している。

 異端審問官の数も相当数増えた。

 次にコリアラ王国とスイスル中立国に版図を広げるように指示をした。


 カトリク教国は侵攻から動きがない。軍事行動も使者も来なくなった。

 僕は面白半分で使者を送り、戦後保証金として金貨100万枚を支払えと恫喝した。

 すると教国は、あっさりと金貨100万枚を支払ってきた。

 恐らく、報復侵攻を恐れて金で解決を望んだと思う。


 でも、準備が整い次第に攻めるけどね。


 これで国庫が、金貨235万枚(2350億)と膨大に膨れ上がってきた。

 魔国が貧国だと思うのだが、元から考えると相当に余力が出てきたと思う。


 ─━─━─━─━─━─━─━


 魔国、ブランズ、ポランド、シガポルの地域で戦時特需に沸いている。

 僕が軍備や戦略物資の調達を推し進めているからだ。

 人と物と金がさらに流入し、好循環を生んでいる。結果論なんだけどね。


 一方、間者からの情報では、ドツイン帝国は元からの不況に加えて賠償金の支払いや戦費などで大不況に陥っているらしい。

 重税と略奪、横領が横行し、難民が魔国にまで流入している。

 僕は難民を全て受け入れ、手厚く保護を行い、開墾している土地と家を与えた。

 手に職が有る者は魔国で就職や軍備増強に係り、力や魔法が得意な者は軍部に入隊していった。


 そして僕はナイにとある事を教えていた。


「ナイ、こうリズムよく、程良い強さで叩くんだ。」


 パンパン スッパパーン


「こうでしゅか?(ニヤリ)」


 バンバン バチバチドーン


「いったーい」


「違う!こうだ。」


 パンパン スッパパーン


「あっ…」


「ご主人しゃま。こうでしゅね。(ニヤリ)」


 ボゴッ! ドゴッ! ガンガンドーン!


「グギャー イタイィィ 死ぬぅ!」


 メビウスとマヨネルがご褒美を要求してきたので、ナイに教えながら尻を叩いた。

 天国と地獄に分かれて恍惚な表情をするマヨネルと地獄の叫びを上げるメビウスだった。

 この二人はご褒美を与えるとクネクネするので気持ち悪かった。

 だから、ナイに覚えさせて押しつけようとしたのだ。


 だが、ナイは加減が分からず?全力で叩いて彼女らを泣かせていたのだ。

 最近ナイは、メビウスに抵抗して僕にずっとひっついてる。対抗しているのだろうか?

 反抗期だったら心配だ…。



 そんな日々を過ごしていた、ある日のこと、骨宰相から少数のグリフォンとワイバーンを連行したと報告を受ける。

 僕は彼らに会い、戦力になって貰うために話し合おうと思った。


「やあ、はじめまして。魔王のキミヒトだよ。」

「おい、俺たちをどうするつもりだ!」


 連行されてきたのは、グリフォンが32匹、ワイバーンが21匹だった。


「君たちに仲間になって欲しくて来て貰ったんだ。」

「俺たちを襲って捕縛してるじゃないか!これで仲間になれだと!ふざけるな!」


「ありゃりゃ。怒っちゃったね。じゃあ殺そっか。」


「「「「「 え? 」」」」」


「だって仲間にならないんでしょ?じゃあ敵じゃないか。」

「いや、そんな極端な…」


「久しぶりに僕が動くよ。最近、運動してないからね。

 勝てたら解放してあげるよ。」


 骨宰相が危険だと注意をしてきた。


「魔王様、彼らは1匹でも相当の力量を持っています。危険です。」

「ん?大丈夫だよ。鑑定!」


 僕は参考にグリフォンの1匹を鑑定した。


 ━━━━━━ステータス━━━━━━

 名前 :ギリフォル

 レベル:16

 HP :187

 MP :142

 攻撃力:201

 防御力:94

 ──────呪文───────

 ウィンド ファイヤ ウォーター


 ──────スキル──────

 飛翔


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━


「まあ、こんなものだろうね。

 じゃあ、君と君と君、3匹でかかっておいで。僕は素手で戦うよ。」


「貴様、俺たちをバカにしてるのか!ぶっ殺してやる。」


 捕縛を解かれたグリフォン2匹とワイバーン1匹が

 空に飛びウィンドの魔法を唱えた。

 風が刃となり僕に目掛けて飛んでくる。それを手で振り払い、ワイバーン1匹に向けて炎の槍をイメージしてファイヤを唱えた。


 炎の槍は、ワイバーンを貫き全身を燃やす。

 飛翔していた彼は地面に激突して絶命した。


 その隙にグリフォン1匹が急降下して、鋭い爪で僕を狙う。

 僕は爪を後方に回避して、グリフォンの顔面を全力で殴打した。

 殴打されたグリフォンは頭部が飛び散り即死した。

 その血肉は捕縛されている彼らに降り注いだ。


 空中で絶句しながらホバリングしている

 最後のグリフォン目掛け、僕は全力でジャンプした。


 バシュッ… ボキッ… ブチブチ…


 彼を捕まえ空中で羽を引き千切る。

 揚力を失った彼は、落下しながら僕に頭部を潰された。


 兵士も骨宰相も捕縛されている彼らも絶句している。

 ナイだけがキャッキャッ喜んでいる。


「あ~、服が汚れちゃったな。さて、次は誰にしようかな?」


 すると骨宰相が僕の前にでて、話し出した。


「き、貴様ら!これが最後のチャンスだ!兵士として忠誠を誓うか?」


「「「「「はい」」」」」


 骨宰相の機転により、命を救われた彼らは心から忠誠を誓い飛行隊へと配属されたのであった。


 後日、僕は魔王様ではなく〝悪魔様〟と陰で呼ばれていることを耳にして、ショックを受けた。



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