第12話 周辺国が攻めて来るよ
都市国家シガポルを陥落させた僕たちは、次にカトリク教国との対戦は引き延ばす方針にした。
サザ教団が成長すれば、自動的にカトリク教団は力を無くす。
今は無理をして正面衝突をする必要は無い。
僕はミスリル砲弾の改変として、投下弾と迫撃砲を開発してる。
内容はシンプル。魔石の周囲に尖った金属片で包み、それを紙玉で覆う。
問題は魔石の起動をタイマーにしないと即爆発することかな。
でもタイマーも作れるんだ。
撃鉄に安全ピンセットをする。
そしてピンを抜くと撃鉄が動いて、最初の小粒魔石を破壊する。
小粒の魔石を周囲に並べているから、順次連鎖反応して最後の大魔石破壊する。すると圧縮された風魔法暴発して、金属片を吹き飛ばす。
これを試作させ、飛竜で投下試験をしているんだ。
今は、安全高度とタイマーの調整中だね。
対空兵器や対空魔法で対抗された時は、これで高高度から一方的に攻撃をして撃滅する。
迫撃砲は、砲弾の底に小魔石を取り付けて雷管の代わりとしている。
砲身に砲弾を投入すると雷管の小魔石が割れ、砲弾内部の大魔石が破壊起動して弾頭を飛ばす仕組みなんだ。
弾頭にも魔石を入れている。鉛で保護をしてその中に風魔石と金属片を入れてるんだ。着弾時に破裂するようにね。
これは、開発が終わって実用訓練中なんだ。もうすぐ実戦投入するから楽しみだ。
ブランズ王国が出兵により国庫が枯渇したので、融資を申し込んできた。
僕は魔国から戦費配当として、ブランズ王国に金貨20万枚(200億)とポランド共和国に金貨10万枚(100億)を分配した。
両国とも泣いて喜んでたよ。飴も必要だからね。
そして、ドツイン帝国内でカトリク教団とサザ教団が衝突激化している。
僕は国軍からサザ教騎士団へ人員と予算を割いて、軍備増強した。数週間もすれば優勢になるだろう。
各地に放っている間者から、重要な情報が寄せられたと骨宰相が報告してきた。
「魔王様、ご報告です。」
「なに?」
「カトリク教国が諸国と連合討伐軍を編成して
魔国領のブランズ王国へ進軍しております。」
「敵の兵数は?」
「はい。その数推定7万で
教国4万、ドツイン2万、コリアラ1万と思われます。」
「微妙な兵数だね…どうするかな…」
「よし、決めた。ブランズ王国には1万の兵士を増援で送って。」
「い、1万ですか…?」
「うん。それで撃退しなくてもいいから
膠着状態に持っていくように指示をして。」
「はい。」
「それから、ドツイン帝国に4万で攻め込む。」
「ドツイン帝国へ攻め込むのですか?」
「そうだよ。恐らく、ドツインはカトリク教国を迎え撃っている間に魔国に攻めて来る。ならば、こちらから攻めて王都を破壊してやるんだ。」
「王都を破壊?ですか?」
「そうだよ。開発中の試作品も含めて、投下弾と迫撃砲を全て用意してドツイン帝国にぶち込んでやるんだ。」
「では作戦のご説明をお願い致します。」
「うん。飛竜隊500匹で先にドツインの王都まで飛び
王城を高高度から投下弾で爆撃してきて。」
「はい。飛竜隊の速度なら半日で到達可能でしょう。」
「そして、王城が混乱している間に王と王妃、王女を拉致してきて。」
「ま、また拉致ですか…?」
「うん。交渉材料になるからね。飛竜別動隊を50匹、拉致特務隊を乗せて爆撃後に王城に侵入するんだ。」
「上手く行きますでしょうか…?」
「失敗してもいいよ。
進軍している魔国3万とポランド1万の兵士で帝国軍を迎え撃つから。」
僕は、作戦を骨宰相に説明して、ドツイン帝国の教国連合参加軍を撤退させる事を第一目標とした。帝国が撤退して自国防衛に専念したら、魔国連合軍に優位性が大きく傾く。かつ留守を狙われることもない。王族の拉致が成功したら、彼らを交渉材料とし、色々と作戦も練れるからね。
そうして、その日の間に飛竜隊の550匹が終結され、ドツイン帝国に出撃した。
そして翌日のこと。飛竜隊の将校が報告のため現れた。
「報告します!ドツイン帝国、王都爆撃成功!」
「よし!王族の拉致は?」
「はい。王と王女の拉致に成功しました。王妃は所在不明。戦死の可能性あり。」
「彼らはどこにいるの?」
「現在、地下牢に勾留しております。」
「よくやった。飛竜隊の皆を褒めてあげて。」
「はい!!」
「あと、地下牢から王と王女を王座の間まで連行してきて。」
「承知しました。」
地下牢からドツイン帝国の王と王女が王座の間に連行されてきた。
「魔王様、連行しました。」
僕はドツイン帝国の王と交渉を始める。
「ようこそ、魔国へ。そして、はじめまして。
魔国王のキミヒトと言います。宜しくね。」
「貴様、何の真似だ?悪い事は言わん。すぐに開放しろ。」
「アナタ!こんな真似して帝国軍が許しませんわよ!」
「あ? お前に発言の許可は与えてない。死にたくなければ黙れ。」
ナイが短剣を抜き、王女の側に立ち、ニコリを微笑む。
「ひぃっ…」
「さて、貴方たちには二つの選択肢があります。
1つは、生きること。
2つ目は、死ぬこと。
どっちがいいですか?」
「どういう意味だ?」
「簡単です。生か死か。どっちがいいですか?」
「……。」
「ふーん。答えられないんだ。じゃあ生きたくないって事だね。王女から先に死んでもらうね。」
「ひぃぃぃ。お父様、助けてぇぇ」
「ナイ、首を切って。」
「あ…」
「待て。話を聞こう。」
「違う違う。生か死か。貴方の回答はコレだけ。他は無いよ。」
「ナイ、首切って」
「あ…」
「わかった。生きたい。助けてくれ…」
「生きたいんですね。
じゃあ、貴方には生への対価が必要になります。それをお支払い下さい。」
「…。何が欲しい。」
「それは貴方が支払う命の値段です。ご自分で決めて下さい。」
「教国連合から撤退しよう。あと戦費保証を金貨30万枚支払う。」
「それが貴方が支払う命の値段ですか?」
「そうだ。これ以上は支払えない。」
「まあ、いっか。じゃあ、連帯で魔道具に血判契約をしてもらうよ。」
「わかった。ワシも王だ。嘘はつかん。」
ドツイン帝国の王と王女が魔道具に血判契約をした。不履行の場合は双方が死ぬ内容だった。
「はい。これで貴方は命を取り戻しました。」
「は?どういう意味だ?」
「だから、貴方には生への対価が必要って言ったでしょ?彼女は別料金だよ。」
「き、貴様ぁ!騙したな!」
「いやいや。僕はちゃんと説明したよね?ほら、血判契約も破棄されてないし。」
「ぐぬぬ…」
「あはは、"ぐぬぬ"って初めて聞いたよ。」
「さて、お次は彼女が自分で決める番です。生か死か。どちらにしますか?」
「た、助けて!死にたくない!」
「それは、生きたいって事ですか?」
「そうよ、生きたい。死にたくない!」
「では、貴方にも料金をお支払いをして頂きます。」
「わ、私はお金を持ってないわ。何を払えばいいのよ!」
「お父上にお借りしてもいいのですよ?」
「お、お父様…助けて…」
「くっ…追加で金30万枚を支払おう…。」
「僕たちはお金は持ってるからねぇ。それじゃ足りないよ。」
「ぐっ…他に何を払えばいい?」
「そうだね、国交とか価値の有る物が色々あるじゃない?」
「教国と国交断絶しよう。」
「うーん。もう一声。」
「そうか…わかった。仕方が無い…」
「1年の期限付き不可侵条約とサザ教の布教許可
カトリク教の排除命令を出そう。」
「ぴんぽーん!良く出来ました。流石は王様だね。察しが良くて助かるよ。」
再び、王と王女が魔道具に血判契約をした。
今回も不履行の場合は双方が死ぬ内容であった。
「お買い上げ、ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。」
「ふんっ。後悔するぞ。」
「後悔?あはは、そうだね。でも僕はゼウスに仕返しをするんだから。」
「な、なにを言っておる?」
「まあ、気にしないで。帝国までの飛竜運賃はサービスにしておくよ。」
こうしてドツイン帝国の王と王女は無事解放され、飛竜に乗って帰国した。
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