第11話 初めての港町だよ
魔国の国庫から大量の資金と人材、そしてブランズ王国、ポランド共和国から人を集めて急ピッチで港町を作った。魔国王都からの街道も未整備だが、それは後回し。これは軍事拠点だからね。
そして、属国の両国から軍艦を徴収した。
都市国家シガポルから造船技師は約50名拉致している。
家族を含めると200名以上の大所帯だった。
飛竜で何度もシガポルと港町まで運んだ。
大変だった。街道を未整備なのは逃亡を阻止する事も理由なんだよね。
港町の近郊に収容所を作って、そこに家族と造船技師を住まわせてる。
別々にだけどね。面会は可能にしている。
でも、家族は外出が出来ないように厳重に監視しているんだ。
属国から徴収した戦艦は旧式が3隻と新型が2隻。
この世界には火薬が存在しないんだ。魔法があるからね、僕も今は無意味だと思うけど、開発は必要だと考えている。
旧式3隻は貫通甲板にして、空母にする。
そのために飛竜と魔導士を集めているんだ。ブランズ王国に使った、上空から攻撃を行う飛竜爆撃隊を発着させて街と軍艦を狙うんだ。
新型2隻は基本構造はそのままで、ミスリルで砲台を沢山設置するんだ。
この砲台は、薬莢に鉛玉と風魔法を限界まで圧縮した魔石を封入する。
薬莢底部を撃鉄が叩くと魔石が破壊され、風魔法が発動する。
内圧が上がった薬莢内は、鉛玉を押し出し、砲身のライフリングを通り高速で回転して発射される。
この武器はキミヒトが発案して、急ピッチで検証と試作されている。
魔法を使えない魔族や船員が遠距離攻撃を行える仕組みとなっている。
欠点は魔石が消耗品で費用が高くなることだ。
しかし、その欠点を上回る軍事的優位性がある。
そして、封入魔力量と威力、飛距離の検証が終わり
命中精度が実用段階になった。
その砲撃飛距離は5キロにも及ぶ。魔法到達距離を遙かに超す飛距離だった。
自国領内も含め、他国にまで砲弾用魔石を収集する部隊が大勢出発した。
砲身は鉄や鋼だとやはり強度が不足した。
当初の計画通りミスリルで生産を進める。
コリアラ王国から数百キロのミスリルが調達出来た。
最近、大量に採掘されたそうだ。
ミスリルは希少金属で流通量が少ない。
しかし、これで軍艦へ搭載する砲身作成の目途がついた。
もの凄い勢いで国庫の蓄えが減少してゆく。骨宰相が日々悩んでいる。
僕は他の国を攻めるから金は入るよ。と安心させてあげた。
そして1隻の空母が完成した。まずは訓練艦として海上で昼夜の発着訓練をした。
搭載可能な飛竜は、1隻に100匹。これが限界だった。
飛竜隊は何とか集まったのだけど、空母が3隻なので300匹しか搭載出来ない。
都市国家レベルだと侵攻に問題はないけど、大きな国だと戦力不足だ。
拉致した造船技師をもっと働かして、あと空母を12隻作ることにしよう。
それなら、中規模の国も攻められると思う。
宗教の方は順調に版図拡大しているとの事。
最近はドツイン帝国のカトリク教を排除しているみたい。
カトリク教国から何度も使者がきて、信仰の侵害だと言ってくる。
「貴国のサザ教団に我らカトリク教会が襲撃され、占領され捕縛されています。
即刻、捕虜の釈放と襲撃の停止
そして占領している教会の明け渡しを要求します。」
僕は互いの信仰心から衝突することはよく有ることだから気にするなってアドバイスをあげた。
「使者殿のお話は伺った、では僕から提案をしましょう。
今すぐ黙るか、首だけとなって帰国するか選んで。」
「な、他国の使者を殺害すると申すのか!私はそんな脅しには屈しませぬぞ!」
「ナイ~、これ切って。」
「あいさ~」
シュパッ…
「骨宰相、この首を教国に送ってて。」
「は、はぃぃぃ。」
僕が折角チャンスをあげたのに使者が無視するんだから、仕方がないよね。
その後、カトリク教国はサザ教団と魔国を〝人類の敵〟として連合討伐軍の要請を各国に出した。
そして、カトリク聖騎士団が教会奪還を目的として出陣した。
しかし、そんな事は予測済み。
僕はブランズ王国とポランド共和国に入国拒否をするように言ってある。
それでも強行突破をする時は、国軍で撃退せよと厳命しているんだ。
連合討伐軍として、動くことが予想されるのはドツイン帝国とコリアラ王国だ。
チャイナル人民国は宗教思想が違うらしくて、カトリク教国とは交流が無い。
エゲレス王国とジパング皇国は島国なので出撃出来ない。
都市国家は軍事力が低く、要請に応じる余力が無い。
他の国は遠いので今は問題ないらしい。
さて、敵が多くなってきたけど、まあいっか。
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それからしばらく経って、空母と戦艦改修が完了した。
空母の新規建造は休まず進めている。造船技師も少し諦めて従事しているようだ。
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僕はブランズ王国から2万の兵士、ポランド共和国から1万の兵士
そして魔国から1万の兵士と軍艦5隻を出撃させて都市国家シガポルに向かった。
魔国を出撃して2週間、都市国家シガポル付近に到着した。
僕は先に軍艦で海上封鎖を行い、飛竜隊で停泊中の最新軍艦3隻を押さえた。
宣戦布告無しで急襲したので、警備兵しか居なかった。
2隻の軍艦は巡回航行中と思われる。
100匹の飛竜隊で巡回航行中の2隻の軍艦を捜索する。
海上数十キロの地点で発見した。
この世界は制空権と言う概念が無い。
と言うか魔族以外は空を飛ぶ手段が無い。
そのため、多少の戦力差があっても魔族の優位性が保たれる。
飛竜から停船勧告の手紙を戦艦へそれぞれ投げ落とす。
そして僕らの戦艦2隻が約5キロ手前まで近付いたとき、威嚇射撃を1発、放った。相手の戦艦には当てないように命令してある。あとで接収して使うためだ。
威嚇射撃は船体の数十メートル横に着弾した。手紙には停船しないと次は当てると警告してある。そして、2隻の戦艦は停船した。
都市国家シガポルの周囲を4万の兵士で包囲した。陸上も封鎖した。
空母から200匹の飛竜隊を発艦させて、都市の上空を旋回するよう指示を出す。これも威嚇が目的だった。
そして、都市外の駐屯地にある指揮所まで元首と議員、そして他の有力者2名が出頭するように使者を送った。
使者を送ってから、待つこと数時間。都市国家の元首たちが指揮所にやってきた。
「やあ、はじめまして。僕は魔国の魔王キミヒトだよ。」
「こ、こんな非常識な侵略が許されると思っているのか!」
都市国家の元首が挨拶も無しに怒鳴ってきた。
「うーん。話が出来ないなら他に人に代わってもらうけどどうする?」
「宣戦布告もせず、民を戦火に巻き添えする輩に交渉の余地などない!」
「あ、そう。ナイ、宜しく。」
「あいさ~」
シュパッ…
「さて、次は誰が元首になる?この人は商店ギルドの長だよね?
てことは貿易の人かな?それとも土地所有のひとかな?」
「か、彼らは議員ではありません。元首が死亡した今は代行が不在ですので…」
「別にこの街を滅ぼしてもいいんだよ?どうする?早く決めて。」
「そ、それは…」
「元首に何かあった時、それを代理出来る法律は整備されているでしょ?
知っているよ。これ以上、嘘を付いたら全員死ぬよ。」
「わ、わかりました。書記長が元首代行となるように定められております。」
「で、その書記長はだれ?」
後ろから白髪で小太りな男が返事をした。
「はい…。私です。」
「ん、じゃあ。貴方がシガポルの代表でいいんだよね?」
「はい。今はそうです。」
「じゃあ、伝えるね。今すぐ無条件降伏するなら戦闘を停止するよ。
そして、住民とその財産を保護する事も約束するよ。
ただし、自治権は認めない。議会制は僕たちの政治形態と合わないんだ。
これからは、魔国の直轄都市となってもらうよ。」
「い、あ、私の一存では決められないのですが…」
「じゃあ、誰が決められるの?」
「議会で法案を作成して、住民投票を行い、その評決に従い決定されます。」
「あっそ、じゃあ、議員が全員死んで、警察機構が壊滅し、公的機関も破壊すればいいんだね。」
「いや、それは街の混乱を生み、都市として成り立たなくなります。」
「ん?別にいいよ。焼野原になっても。次の街を攻めるし。」
「ひぃぃっ…」
「あと、知ってるんだ。議会制を取っているけど、持ち回りで務めているのを。
特に有力者と呼ばれる3人が交代で元首をしてるでしょ?
今すぐに決めないと、みんな殺して街を焼くよ?」
「わ、わかりました。無条件降伏致します。」
「そう。良かったね。生命と財産を守れて。
あと、ここにいる全員は、この魔道具の契約書に血判を貰うよ。
もし1人でも裏切ったら、全員が死ぬからよろしくね。」
こうして、被害者1名のみで都市国家シガポルが魔国の直轄都市となった。
そして元首であった、商店ギルド長の財産を没収して、シガポルの国庫金を全額接収した。
その額は合わせて、金貨120万枚、日本円で1200億相当にもなる額であった。
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