第14話 産業革命だよ
グリフォン30匹とワーバーン20匹を「飛竜隊」改め「飛行隊」に編入した。
彼らには飛竜と同族の捜索を任命して飛行隊の増強を進める。
木造空母の新造は、まだ時間が必要だというので海軍の増強は現状進行として、次は陸軍の増強を進めることにした。
海軍と言えば空母や戦艦。
陸軍と言えば戦車でしょ!
僕は骨宰相に相談することにした。
「ねえ、骨っち、陸戦はやっぱり歩兵が主戦力なの?」
「ほ、ほねっち!? コホン…、えー、歩兵が主戦力とは?」
「戦闘に特化した乗り物とかは無いの?
つまり、自走できて砲撃を行う乗り物とか。」
「自走ですか?乗り物は馬車や飛竜などですが、他に何かあるのですか?」
「魔力による推進機関とかは無いの?」
「推進機関ですか?? それはどの様な物なのでしょう?」
「それはね、エネルギーを回転力などに変換してそれを動力にする機械なんだ。蒸気ボイラーと逆止弁、制御バルブ、配管、復水器、ギア、クランクなどの色々な部品で構成されている装置なんだ。」
「魔王様、何を仰っているのか分かりません。」
「そっかー。ドワーフって鍛冶が得意なんだよね?」
「はい。武具に限らず様々な道具や機械も製造しております。」
「じゃあ、属国と他国から強引でも構わないからドワーフを集めてよ。そして魔国に大工業地帯を作るんだ。製鉄所、加工工場、部品工場、組立工場、整備工場、魔道研究所、鍛冶研究所、素材研究所、工業学校などを作って魔導技術と工業技術を融合させて最先端の軍事兵器を作るんだ。」
「そ、そんなに沢山の施設を建造なさるのですか?国庫が尽きますが…」
「大丈夫だよ。お金は色々な方法で稼ぐから。大至急、取り掛かって。サザ教にも連絡してドワーフを見つけたら魔国に連れてくるように指示しておいてね。」
「し、承知しました。」
キミヒトの思いつきにより、魔国は工業大国の道へ進む。
国庫から大規模な予算が投じられた。魔国の王都から少し離れた川沿いの地域が工業特区に選定され、建設ラッシュとなる。
同時に属国や周辺国のドワーフが一斉に姿を消した。サザ教騎士団と魔族軍により大規模な勧誘と拉致が行われたのである。技術力で優位性を示していたドツイン帝国は特に人材を狙われた。
恭順を示したドワーフには管理職や好待遇技術者として迎え、抵抗し拉致されたドワーフは収容所で強制労働をさせられた。
そしてサザ教団がカトリク教団と同規模の勢力を持ち始めた頃、異端審問官がカトリック教徒を捕縛し宗教裁判所と言う名の処刑場へ送り込む。有罪となったカトリク教徒は全ての財産を没収され処刑された。
その没収された財産は全て魔国本山へ送られ、国庫に蓄えられた。カトリク教徒の人々は異端審問官を恐れ、水面下で信仰を続けていた。
だが、異端審問官たちは各地に大量の信仰スパイを放っていた。その信仰スパイは誤認捕縛を避けるため、とある仕組みを使って識別していた。
それは水晶の魔道具である。
水晶の魔道具とは、関所や壁門で入場者の犯罪履歴を調査するため、国家が設置している記録照会の魔道具である。
この魔道具に信仰スパイの魔力波を登録し、該当すればグリーンに光るように改造していた。その水晶魔導具を審問官が携帯して、グリーンに光れば信仰スパイ、そうで無ければ異端者として捕縛する仕組みを構築していたのである。
仕組みの発案は、キミヒトだった。水晶魔道具の利便性とスパイへの高額報酬と安全を担保し、大量の信仰スパイを各地へ放ったのである。
これにより「恭順な信徒へは安寧を異端者へは迫害を」を合言葉に国境を越えて合法的な略奪が始まった。自国内と属国内、ドツイン帝国は布教済みのため異端者が少なかったが、他国は依然、カトリク教徒が多かった。最も被害を受けたのはカトリク教国だった。
教国は、貴族制ではなく、各教会が領地を治めていた。サザ教会はカトリク教国内へも布教侵略を行い、領地を含めて接収していった。そしてサザ教団の布教攻勢により、徐々にカトリク教国は領土が削られ、サザ教団が独自で領地を持つようになった。
サザ教団を通じて、大量の資金が魔国へ流入する。その資金を人材と物資の購入で属国へ大量にばら撒く。各属国と都市国家シガポルは空前の好景気で国内は湧き、自治権を与えられた王族も魔国へ恭順を示す。
その状況は各地へ伝えられ、他の都市国家であるホングコングとマカロは魔国併合を申し出てきた。
「君たちが併合を申し出てきた都市国家の元首だね?」
「はい。私は都市国家ホングコングの元首リチャンと申します。」
「私は、都市国家マカロの元首リスボアと申します。」
「そう。よろしくね。双方とも政治形態が違うから直轄都市になるけどいいよね?」
「はい。我々はマカロは議会制です。市民の生命と財産を保護して頂けるなら問題はございません。」
「我々、ホングコングも同様です。既に議会で可決しております。」
「そうなんだ。じゃあ宜しくね。議会は解散とし、都市管理官は魔国から送るけど、公的機関の人達は全部そのままでいいからね。」
都市国家は多少の自衛力を有するが、基本的には経済活動を目的として独立した小国家である。
その経済が魔国連合に集中したことにより、他の都市国家の経済活動が困窮してしまった。特にシガポルは凄い収益を上げている。その活性を目の当たりにして、併合を決定したのだろう。彼らも商売人の都市なのだから。
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僕は木造空母の新造と工業地帯の建設を待つ間に
〝神の眠る島〟を侵略することにした。
次の標的である、エゲレス王国への侵略予行演習として
大規模海戦を想定して艦隊を編成した。
随時新造されている船舶も今回の出撃に含める。
現在、航行可能な戦艦は以下の通り。
空母 7隻 搭載部隊 飛行隊計700(陸から200編入)
戦艦 7隻 砲改修済 海兵計350
輸送船 20隻 搭載部隊 歩兵計4000
物資船 3隻 水、保存食、資材などを積載
この各船舶はガレオン船と同様の構造となっている。
外洋での航行を前提に設計された船舶だった。
ただし空母のみ貫通甲板である必要から、マストを無くし砲弾の技術を流用した風魔法による風力噴射推進方式としている。運航には付与術師と魔導士、そして魔石を多く使用することからコストが非常に高かった。
「魔王様、島一つを侵略するのに、これだけの規模を編成なさるのですか?」
「そうだよ。神様が寝ている島なんでしょ?これでも不足しているぐらいだよ。」
「そ、そうですか。お気をつけて。」
「ナイ、行くよ。じゃあ、行ってきま~す。」
「あいさー」
僕たちは〝神の眠る島〟へ向けて出航した。
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出航してから、約2週間。索敵の飛竜から「前方に島を発見」と連絡が入った。
僕は飛竜隊に結界が張られている海域境界を調べるように指示を出す。
「陸地より約10km手前にて結界確認」と報告を受ける。
その結界付近で滞空し、目印となるように伝えた。
滞空している飛竜が目視可能な距離となった。
艦隊に速度を落とすように伝達する。
島影も視認出来た。僕は飛竜を呼び、搭乗して結界の所まで近付いた。
「うわっ。すげー!完全に不可視な透明壁がある!」
コン コン
「これは凄い技術だな。神の力ってやつかな?ちょっと叩いて割ってみるかな。」
ガツン! ガツン!
「うーん。無理か…。でも海水は通過しているみたいだね。
もしかして海中には結界が無いとか?」
僕は戦艦からボートを下ろし海兵を数名、海に潜らせて結界を調べさせた。すると海兵たちは結界の向こう側へ難なく潜り抜けた。
「やっぱり。海面の少し上から結界が発生しているね。という事は海面からの結界の始点を狙えば強度が弱いかもね。少し試してみよう。」
僕は海面のボートへ降り立ち、結界を触って端部を調べる。そして、その端部を全力で殴った。
ガキィーン… キィーン… ィーン…
「ふむふむ。やっぱりヒビが入ったね。光の屈折度合いが変わった。上部は衝撃を面で受けて伝達分散させているけど、端部は応力を逃がせられずに耐久限界値が低いみたいだ。よし。この端部をマーキングして戦艦からミスリル砲を一か所集中で打ち込むか。」
僕は海上のボートから旗艦へ戻る。そして戦艦へミスリル砲の一斉射撃を命じる。
「撃てぇ!」7隻の戦艦から一斉に砲撃が発射され、結界に大きな衝撃を与える。
「どうだ!海兵調査しろ!」僕は興奮しながら指示を出す。
「結界に損傷確認。次射願います。」効果はあった。
「次弾装填!」指示を拡声魔道具に叫ぶ。
「撃てぇ!」
不可視の結界が大きく揺れた気がした。
「結界一部欠損!次射願います!」
「次弾装填!」
緊張した空気が漂う……
「撃てぇ!」
バリンッ!と大きな音が海域に響き渡った。結界が崩壊した瞬間だった。
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