栄冠の節「学院での選択」
エリスリーゼ帝国学院の入学を無事に終えると、次はいよいよ本格的な科目を選択し授業を受ける事となる。
生徒達はそれぞれ自分の長所を伸ばしたり、逆に短所を補うなど己自身の選択でこの三年間の間に成長して行くのだ。
例えば、アーデルハイトの場合は将来女帝として素質をより高める為に指揮の科目を選択し、また自身の武器の槍の技術を高める為に槍術の科目も選択する。
この様にして、自分に合った科目を選択して授業を受けて行く訳なのだが、リオンは一人部屋で悩んでいた。
「さて、どうすっかなぁ……既に全てのステータスをカンストしてる俺にとっちゃあそもそもどの授業を受ける意味なんてねーんだよなぁ」
そう、既に最強のステータスの状態で転生したレグルスにとって授業を受ける事などなんの意味も持たなかった。
「でも、だからと言って何の授業も受けずに過ごしてたら間違いなく留年……いや、この学院の事だ。一発退学ってのも有り得るな。そうなったらせっかく推薦状を書いてくれたアーデルハイトに顔向け出来ねぇし、ってか、絶対にブチ切れるに決まってるもんなぁ……」
リオンは大きくため息を吐いた。
「そうだ、俺がこの原作ゲームで王国側に居た時はそこで出会った仲間達と一緒に戦いを乗り越える度に絆が深まっていってたよな。って事は、今度はこの帝国学院で帝国側の仲間達と一緒に授業を受けたりすれば同じ様に絆が上がっていくんじゃねぇのか?」
リオンは入学式の後の事を思い出していた。
アーデルハイトにギルベルト、そしてリアとヘンリエッタとはそれなりに上手くやって来れたが、この学院で新たに出会ったラスボスの仲間の四人と、新たに現れた謎のロザリアとはまだひとつも交流が無い。
ゲーム上でもそうだが、これから先共に歩んで行く仲間とは絆を上げてどんな状況下でも上手く連携を取れる仲にしておかなければならない。
リオンは、この学園生活で自分がやるべき事は自身を成長させる為ではなく、一人でも多くの仲間と交流し絆を深める事が重要であると気づいた。
「よし、そうと決まったら選ぶべき選択は決まったな。まずはこの科目で
そう言ってリオンは部屋から飛び出して行った―。
★☆★
リオンはとある訓練場へとやって来た。
今日ここでは、剣術の授業が行われる予定なのだ。
「お、リオンではないか。まさか初日から剣術の科目を選んで来るとはな」
ギルベルトが爽やかな笑顔で話しかけて来た。
「はい! 私、基本の戦術は兄と同じ剣術を使用するので、もっと剣を極めたいなと思いまして!」
「ふむ。それはとても良い心掛けだ。剣は一見単純に見えるが奥が深いからな。リオンの選択は正しいと言えるだろう……」
「おい、また女に鼻の下を伸ばしているのか? 授業の前に随分と余裕だなギルベルト」
ウルリックが皮肉な口調でこちらに近づいて来た。
ウルリック=ヴァン=ブレイク。
―コイツは将来ギルベルトが将軍になる様に、親父と同じ帝国軍団長となる男だ。
しかも、そのあだ名は『狂剣』のウルリック。
凄まじい猛攻の剣術とその速さで、戦場で敵を切り倒す危険な野郎だ。
実際、ゲームでも最も仲間を殺された敵キャラランキングのダントツ一位がコイツだからなぁ。
そう言う意味では、ギルベルトやラスボスのアーデルハイトよりも要注意人物だ。
まずは、この一番厄介なキャラから新密度を高めて行くしかないわけだが……。
リオンはウルリックの前に立ち、手を前に差し出した。
「よろしくお願いしますね! ウルリックさん」
「…フン」
ウルリックはそのままリオンを無視して離れてしまった。
「すまんなリオン。アイツは昔からあぁ言う性格なんだ。特に、女性とはほとんど距離を置こうとしない……ウルリックが興味あるのは戦いと強者のみだからな」
―なるほどねぇ……要はめちゃくちゃ面倒臭いキャラって事なのね。
「…リオンさん」
振り返ると、そこにはロザリアの姿があった。
「あれ? ロザリアも剣術の授業を受けに来たの?」
「はい。私、あまり剣術は得意ではありませんので、この際少しでも上達しておこうと思いまして……」
「なるほどねぇ……でもちょうどよかった! 初日の剣術の授業は私以外にむさ苦しい男二人しか居なかったから、同じ女の子のロザリアが居てホッとしたよ!」
(むさ苦しい男二人とは俺とウルリックの事だよなぁ……)
ギルベルトは少し苦笑いをしていた。
「よーし! 新入生のガキ共は全員集まったようだな。俺が今日の剣術の授業を担当するベアナードだ。まぁ、よろしく頼むわ」
茶髪の短髪に髭を生やした、いかにも戦士らしい風貌の大柄な男が登場した。
「先に言っておくが、俺は他の教員みてぇに本を読み聞かせたり執筆させたりする様なタイプじゃねぇ。剣術は実践あるのみだ! ってな訳で、お前達には早速剣で互いに語り合ってもらうとするぜ?」
「剣で語り合うとは、一体どういう意味ですか?」
ギルベルトが質問すると、ベアナードはニヤリと笑って答えた。
「そんなの決まってらぁ。
—————————
あとがき。
最後までご高覧頂きまして、ありがとうございます!
【次回】まさかの授業で決闘!?
【お知らせ】本日から筆者の新連載がはじまりました!ファンタジーミステリ作品となっておりますので、そちらの方もどうかご愛読の程よろしくお願い致します!
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