栄冠の節「狂剣との決闘」
新たな仲間達との交流を深める為、まずは剣術の科目を選択したリオンだったが、なんと学院でのはじめての授業内容はいきなり決闘と言うとんでもない内容であった。
教師のベアナードはニヤリと笑いながら、リオン達新入生を見ていた。
「本気ですか!? いきなり初日の授業から決闘など、正気の沙汰とは思えませんが……」
ギルベルトは冷や汗を垂らしながらベアナードに言った。
「お前はたしか、将軍の倅のギルベルトだったなぁ? なかなかの腕前の戦士だとは聞いてるが、まだまだ考えは甘ちゃんの坊やな様だな。お前も分かってるとは思うが、実際の戦いってのは全て一回きりの決闘と同じなんだよ。敵がわざわざこっちの剣術の練習相手でもしてくれると思ってんのか? 俺はなぁ、そんな生ぬるいもんを教えるつもりなんてねぇんだよ」
鋭い眼差しで睨み返すベアナードに、ギルベルトは一言も言い返す事が出来なかった。
「フッ、俺もその意見には賛成だ。元より、つまらんお遊びの授業内容だったら即座にこの場から去るつもりだったからな」
「ほー、そこの細面の少年はなかなか見込みがありそうだな。たしか、ウルリックと言ったな……よし、お前さんを決闘の一番手にしてやろう。特別に相手を選ばしてやる。誰とやり合いてぇんだ?」
ウルリックは腕を組みながら周りを見回した。
そして、ある人物に視線を止めると、ゆっくりとその人物の元へと歩み寄った。
「…俺の相手は……貴様だ」
ウルリックが指名したのは、なんとリオンだった。
「へ? わ、私ですか………?」
意外なご指名に、リオンも思わず焦った表情を見せた。
「お、おいウルリック! 相手は女性だぞ? それにリオンはまだこの帝国へ来たばかりで環境に慣れていないのだ。お前の相手はこの俺のはずだろ!?」
「それがどうしたと言うのだ? 戦いに男も女も関係ないだろ。それに俺は、この女に
ウルリックはリオンの顔に近づきながらじーっと見つめた。
―おいおい近いって! 何なんだよいきなり……急に俺の事指名しやがって。ここは普通ギルベルトだろーが!
何考えてんだコイツは!?
「貴様、自分の強さを
そう言ってウルリックはリオンから離れて行った。
―アイツ、俺の強さに気づいてるのか? いや、まさかな……。
「よし! じゃあ早速おっぱじめるか! まぁ安心しろ、決闘にはちゃんと木刀を使うからよ。そん代わり、お互い本気でやり合えよ。なぁに、怪我しても俺が医務室まで運んでやるから心配はすんな!」
★☆★
リオンとウルリックは木刀を手に持ち、互いに向き合った。
―はぁ……何か前と似た様な展開だなこりゃ。もしかしてデジャブか?
ため息をつくリオンに対し、ウルリックは肩に木刀を置きながらこちらをずっと見ていた。
リオンはチラっとウルリックの方へと視線を向けた。
ウルリックLv50。
やはり、アーデルハイトのレベルが上昇している為、ラスボスの仲間であるウルリックも初期から高レベルの状態に引き上げられていた。
―帝国学院の新入生がいきなり闘神オーディンと同じレベルスタートとはねぇ……自分で言うのも何だが、大分この世界のレベルの基準がバグって来てるなぁ。
「おい女、はじめに言っておくが俺はギルベルトの様に甘くはないからな。怪我をしても恨むなよ」
ウルリックは木刀を構えると、やる気満々の眼差しで言った。
「じゃあ始めるぜ。どちらかが戦闘不能になるか、負けを認めればそこで終了だ。では……始め!」
リオンは再びため息を吐くと、仕方なく木刀を構えた。
対してウルリックは既に攻撃体勢へと入っていた。
「さぁ、貴様の実力をこの俺に見せてみろ……」
―ドッ!
ウルリックは力強く踏み込み、リオンへと突進した。
―ガツン!
ウルリックはもの凄い勢いの突きをリオンの喉目掛けて放った。
リオンはギリギリの所で木刀で攻撃を防いでいた。
―おいおい、初手いきなりから喉を狙って来んのか!?
相手は可愛い女の子のリオンだぞ? コイツ、本当に男とか女とかお構いなしだな……ってか、普通の生徒なら今の突きで一発病院送りレベルだぞ……。
だが、ウルリックの容赦ない攻撃は即座に続いた。
木刀を激しく何度も振りかざし、木刀で懸命に防ぐリオンの姿は、周りから見ればか弱い女の子をただ虐めているだけにしか見えなかった。
凄まじい猛攻はまさに『狂剣』そのもの。
リオンはその姿に、原作ゲームで戦ったラスボスの仲間であるウルリックの姿が重なって見えていた……。
「おい、戦いに集中しろ」
―ドゴォ!
ウルリックの蹴りがリオンの腹へと命中し、リオンはその場へしゃがみ込んでしまった。
「ウルリック!!! お前、一体何をやってる!?」
ギルベルトの怒号が響き渡った。
「何だ? 剣以外の攻撃が禁止とは聞かせれていないぞ。それにこれは決闘のはずだ。なら、蹴りを喰らわせても何の問題もないはずだろ」
「あぁ、ウルリックの言う通りだ。何の問題もねぇ」
ベアナードはウルリックの発言に眉ひとつ動かす事無く平然と答えた。
「クソ……一体どうなってるこの授業は。大丈夫かリオン? これ以上は無理をするな!」
リオンはひとり沈黙していた。
そして、ニヤリとその口元を上げて微笑んだ。
―ありがとよ、ギルベルト……だが、心配いらねぇよ。
ちょっと久しぶりに俺も
リオンはゆっくりと立ち上がると、木刀を構えウルリックを正面から見た。
「…………」
そのおぞましいリオンの顔にウルリックは思わず息を飲み込み、思わず身震いをしてしまっていた。
「獅子の尾をお前は踏んだんだ……てめぇに本当の剣術ってのを見せてやるよ? 覚悟しろよ……」
—————————
あとがき。
最後までご高覧頂きまして、ありがとうございます!
【次回】リオンがキレちゃう!?
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