栄冠の節「栄光の入学式」



 ―エリスリーゼ帝国学院の入学式が始まった。



 学院の敷地内に建てられた大聖堂で行われており、学院の聖歌隊の歌声と共に今年の新入生述べ三十名が入学した。


 それぞれの学年毎に寮が三つに別れており、今年の新入生は各寮に十名ずつ振り分けられる。

 アーデルハイトとレグルス達は同じ第一寮の生徒となっていた。


 そして、今年の新入生代表としてアーデルハイトが輝かしく学院長のダガから祝辞を受けていた。

 二人の背後には、帝国とこの学院の名前の由来にもなっている女神エリスの巨大な石像が建てられており、まるで新入生達を向かい入れる様にこちらを向いていた。


 そんな中、リオンは席に座りながら何やら落ち着かない様子であった。

 新入生は学院から支給された黒と赤の制服に着替えていたのだが、生まれて初めてを履いた男のレグルスは違和感と恥ずかしさで全く入学式に集中できずにいた。



 ―女のリオンの体とは言え、いきなりスカートを履いてこんな大勢の中に居るなんてマジで地獄だぜ。

 アーデルハイトのやつ好き勝手に俺の髪を整えたり、俺はズボンがいいって伝えてたのに勝手にスカートなんて持って来やがるし……ありゃもう完全に着せ替え人形遊びだな。


 レグルスが心の中でブツブツ言っている間に、入学式は終わりを迎えようとしていた。



「では、新たなる生徒達に栄子と祝福を!」



 学院長のダガの言葉と共に入学式は無事終了した―。




 ★☆★




「だぁーやっと終わった……」



 リオンは外に出ると思いっきり背中を伸ばした。



「あなたって外見は変わっても中身は全く変わらないのね……」



 アーデルハイトが皮肉な目をしながら大聖堂から出て来た。



「仕方ねぇだろ。俺はこういう学校行事ってのは昔っから嫌いなんだよ。それに見ろよ? 人生初のスカートなんて履かせやがって! なぁ、アーデルハイト今からズボンに変えてくれよ!」


「そんな事出来る訳ないでしょ? それに学院内ではその言葉使いは止めなさい。今あなたはリオンなんだから」


「はいはい……気をつけますよーだ」



 すると、今度はリアとヘンリエッタ、そしてギルベルトの三人がこちらへと向かって来た。

 特にヘンリエッタの顔色は真っ青で今にも倒れそうだった。



「おい、アーデルハイト。ヘンリエッタが今にも死にそうだ。余は先にヘンリエッタと部屋へ戻っておるぞ?」


「まったく……初日からこの調子で大丈夫なのか? 学院での生活はまだ三年もあるのだぞヘンリエッタ」


「…さ、先の事など考えたくもありません……と、とりあえず今は一刻も早く部屋へ戻りたいです……」


「はぁ……仕方ないわね。じゃあリア、申し訳ないけどヘンリエッタを連れて部屋へ戻っていてちょうだい。後で気分治しのお茶でも持って行くから」


「なら何か美味しいお菓子も頼むぞ! ほれ、戻るぞヘンリエッタ。しっかりせぬか」



 そう言ってリアはヘンリエッタを連れて部屋へと戻って行った。



 ―相変わらずだなヘンリエッタのやつ。でも、リアは何だかんだ言ってよくヘンリエッタの面倒を見てやってるよなぁ。

 ヘンリエッタを妹とでも思ってるのか? まぁ、何にしても良い傾向にあるのは良い事だぜ……。



「おい、確かレグルスの妹のリオンと言ったな?」



 ギルベルトかリオンへと近づいて来た。

 しかも、何やら険しい表情だった。



 ―げっ、ギルベルトのやつやっぱり俺の事まだ疑ってるのか?

 まさか、初めて会った時みてぇに決闘をまた申し込んで来たりしないよなぁ!?



「は、はい……私に何かご、御用でしょうか?」



 すると、ギルベルトは険しい表情から一変して、優しい表情を見せながら答えた。



「いや、帝国へ到着してからいきなりレグルスの代わりにこの学院へ入学する事になっただろ? なので不安なのではないかと少し思ってな。まぁアーデルハイト様が付いておられるから心配はないとは思うが……もし何か困った事があれば俺に相談するといい。無論、遠慮などはいらんからな」



 まさかのギルベルトの優しさリオンは思わず唖然としてしまっていた。



 ―おいおいギルベルトくんよぉ、男のレグルスの時とえらい違いじゃねーか?

 レグルスの時は初っ端からずっと喧嘩売りっぱなしだったのに……女の子には随分と優しいではありませんか。

 もしかして普段は男に対しては厳しくて、女の子には紳士振りを発揮するキャラなのか?

 よし、ならちょっとだけギルベルトくんの心を揺らがせてみるか……。



 リオンはギルベルトの両手を握り見つめた。



「ありがとうございますギルベルトさん。私、とっても嬉しいです! これからもいっぱい頼りにさせて下さいね!」



 そう言ってリオンはギルベルトにウインクした。



「あ、あぁ……ま、まぁ俺の時間が空いている時ならな。後、さんは付けなくて大丈夫だ。ギルベルトと気軽に呼んでくれ」



 顔を赤くしながらオドオドするギルベルトを見ながらレグルスは心の中で大爆笑していた。


 そんなリオンをアーデルハイトは冷たい眼差しで見ながらため息を吐いていた。



「…おい、女に色目を使われたくらいで動揺するとは、随分と腑抜けた戦士になったものだなギルベルト……」



 声の主の方へ視線を向けると、そこには四人組の男女が居た。


 そして、リオンにはその顔ぶれには見覚えがあった。



「あら、あなた達久しぶりね! そうだわ、リオン紹介するわね。この子達は帝国が誇る優秀な新入生であり、私の大切な友達よ!」



 そう、この四人は後にラスボスのアーデルハイト率いる最強の帝国軍の重要なだったのだ―。




 —————————

 あとがき。

 最後までご高覧頂きまして、ありがとうございます!


【次回】新たな仲間達の登場!!!


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