栄冠の節「不死身の騎士」



 レグルスは再び闇の竜騎士へと攻撃を放った。


 縦に真っ二つに斬る、炎で燃やす、跡形もなく消し飛ばしたとりと、ありとあらゆる手を使ってみるも闇の竜騎士は何度でも蘇った。



 ―HPが確実に0になるところは、何度もこの眼で確認している……それでもコイツは再びHPを全開にした状態で何度でも蘇って来やがる。

 やっぱりどう考えても明らかにだよな? 現実世界なら運営へ即追放レベルだぞ?



 ―ギィーン



 今度は闇の竜騎士がレグルスへと剣を振るって攻撃を仕掛けて来た。

 いかにレグルスのレベルが100であっても、闇の竜騎士もレベル80と十分に強い。

 この世界へ転生して今まで戦った中では間違いなく一番の強敵だった。


 今までどんな相手でも決して本気を出さ無かったレグルスだったが、今回ばかりは流石のレグルスもマジで応戦していた。



 ―スパッ



 闇の竜騎士の剣がレグルスの頬へと傷をつけた。



「へぇ〜流石Lv80……この俺になんて、やるじゃねぇか!」



 レグルスは片手で一瞬で顔の傷を治癒すると、再び闇の竜騎士と剣での応戦に入った。



 ─しかし参ったな……このままだとラチが明かねぇ。

 どう言う理由でコイツが不死身なのかは分からねぇが、このままだと永遠に倒す事が出来ねぇぞ?



「仕方ねぇ……試してみるか」



 ―ドンッ!



 互いにぶつかり合った剣圧が、周りの城壁を派手に破壊した。

 二人の激しい攻防は、王城を徐々に破壊していた。



「悪いが、これ以上ここで殺り合うと王城が破壊されそうなんでな……アーデルハイトにも後からいろいろ言われるのも嫌だし、ちょいとさせてもらうぜ?」



 レグルスは闇の竜騎士の肩へと触れた。



 ―瞬間移動



 レグルスと闇の竜騎士は王城から姿を消した―。




 ★☆★




 レグルスの瞬間移動により、二人は巨大な岩山の上へと転移していた。



「ここなら誰にも迷惑かけねーし、どんだけ殺り合っても問題ないだろ……っで、お前一体何もんだ?」



 レグルスの問に闇の竜騎士は沈黙したままだ。



「もしかして喋れないのか? 参ったな……お前らのの事を聞き出したかったんだがよぉ……」



 ―ギィーン



 闇の竜騎士は一瞬でレグルスの元へと移動し剣を振るった。

 レグルスは瞬時に剣で受け止めながら、闇の竜騎士への問いを続けた。



「おい、コイツを操ってる奴。どうせコイツを通して俺の事見てんだろ? コソコソしてねぇで出て来いよ! 直接俺と殺り合おうぜ!」



 レグルスは闇の竜騎士を蹴り飛ばすと、魔法を放った。



 ―獄炎



 最上級の炎の魔法が闇の竜騎士を燃やし尽くす。

 そして、闇の竜騎士はそのまま灰と化してしまった。


 しかし、灰となった闇の竜騎士は黒い渦を巻き起こしながら再び元の姿へと戻っていった。



「あー畜生! もうこれはどんな攻撃をしても全然意味ねーな……ってか、ガチのチートじゃねぇかよ!!!」



 レグルスは心の底からキレていた。

 なぜなら、ゲームをこよなく愛するレグルスはチート行為がだったからだ。


 この世界の原作ゲームは元々の難易度が高かった為、現実世界でもチートを使うプレイヤーも数多く出回っていた。


 敵から攻撃を受けても減らないHP、どんな敵でもワンパン出来る攻撃、レベル上げをせずとも全てカンストしてしまうステータスなど、レグルスにとってその行為は全て許せるものでは無かった。


 そして、明らかにチート使用の敵が今自分の目の前に居る。

 しかし、そんな闇の竜騎士を倒せない自分自身をレグルスはもっと許せずにいたのだ。



「…仕方ねぇ、本当はこの世界で試したくは無かったんだが……この際贅沢は言ってられねぇもんな」



 すると、レグルスは手元から剣を消してしまった。



「おい、チーター野郎! お前がこのままチートを使って来るなら俺にも考えがあるぜ?」



 ―フンッ!



 レグルスが構えると、体から膨大な量の魔力が溢れ出して来た。



 ─俺はこの世界へ転生して自分の目でいろいろ見て来たが、決め手となったのはヘンリエッタが魔力で魔軍を殲滅した時だ。

 俺が思うにきっとこの世界の源はなんだ。

 つまり、膨大な魔力を持つ者ならこの世界に良くも悪くも影響を及ぼせるって事だ。


 レグルスから溢れる魔力が更に増していく。

 その光景に闇の竜騎士は沈黙したままレグルスに視線を向けていた。



「おい、チーター野郎。その騎士を通して今俺の事を見てるよな? 俺が今から何をしようとしてるか気になるだろ? 特別に教えてやるよ。それはな……」



 ―だ。



 ゲームではチート以外にもバグ技と呼ばれる裏技が数多く存在している。

 この世界の原作ゲームにもバグは存在しており、ゲーム内である一定の行動を起こすと様々なバグを引き起こす事が出来た。


 そしてレグルスは今この世界が魔力を源として構成されているものだと仮定し、自身の膨大な魔力でにバグを引き起こそうとしていたのだ。



 そして、レグルスの思った通りそれは見事に成功した。



 レグルスの体はノイズを引き起こしながら、その姿が徐々に変わっていった。


 そして、ノイズが完全に消えると、なんとレグルスの姿は美少年からへと変化してしまった。



「さーて……主人公ちゃんのお出ましだぞ〜?」




 —————————

 あとがき。

 最後までご高覧頂きまして、ありがとうございます!


【次回】まさかのレグルスが女の子に!?


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