栄冠の節「仲間の力」
―現在残り三万の魔軍。
ヘンリエッタによる圧倒的な開幕戦が開始されていたが、魔軍は怯む事無く帝国への進軍を続けていた。
角笛が鳴り、魔物の骨組みで作られた太鼓を叩きながら、ゴブリンとオーク達は雄叫びを上げる。
「…では、攻撃に入ります」
「うむ。行くぞヘンリエッタよ!」
―魔力上昇
ヘンリエッタはリアからバフを掛けられると、テュルソスの杖を構え、黒魔法と白魔法を同時に展開した。
再びヘンリエッタの左右には黒と白の球体が出現したのだが、今度はその二つの球体が一つの球体へと
本来なら混じり合うはずのない二つの属性魔法はその色を灰色へと変え、更に高密度に圧縮されるとやがて
全てを呑み込みし黒き闇と全てを照らす白き光よ、混沌と成りて全てを無に返せ
ヘンリエッタの詠唱と共に、紫の球体は魔軍の頭上へと飛んで行く。
―無爆
紫の球体は更に小さく圧縮されると次の瞬間、凄まじい爆発を引き起こした。
その爆発により、約二万の魔軍がまたも一瞬にして消滅してしまった。
「はぁ……あたしに出来るのはここまでです。後は任せましたよアーデルハイト、ギルベルト……」
―ヘンリエッタの攻撃時、アーデルハイトとギルベルト、そしてリアは正門の前へと集まっていた。
アーデルハイトは黒馬に跨り、ギルベルトもその隣で馬に跨っていた。
目の前には槍と盾を手にした帝国の兵士達が整列していた。
皆の目にはもはや恐怖など無く、帝国を守らんとする男達の闘志溢れる眼差しが光っていた。
「聞け! 誇りある帝国の兵士達よ! 今我等の仲間が魔軍を圧倒し、ある男は闇の竜騎士を一人で抑えている。だが、この帝国は我等の故郷だ。そんな我等がただ何もせず、戦いを眺めているだけなど帝国の恥だ!」
ギルベルトは大声を上げ兵士達へと喝を入れた。
「これより帝国軍は正門を出て、魔軍を正面から迎撃する。帝国に誇りがある者なら、私の後に続きなさい。この国は……私達が守るのよ!」
うおぉぉぉぉぉ!!!
兵士達は次々と声を上げる。
その場に居る全ての兵士は、アーデルハイトと共に正面から帝国を守る決意は既に固まっていた。
「おわ! 皆気合いが入っておるの! では、アーデルハイトにギルベルト、お前達に余の
リアはカドゥケウスの杖を取り出し二人にバフを掛けた。
―攻撃力上昇
―防御力上昇
―魔力上昇
―魔防上昇
―速度上昇
―自動回復
二人同時への六つのバフ。
アーデルハイトとギルベルトは一気にそのステータスを上昇させた。
流石のリアも再び魔力を消耗し尽くし、ヘトヘトになっていた。
「ゼェ……ゼェ……よ、余はもう流石にこれ以上は何も出来ぬぞ……後はお前達だけで魔軍を倒すのだぞ!」
「えぇ、言われるまでもないわ。ありがとうリア!」
「後は俺達帝国軍に任せておけ。ヘンリエッタと共にゆっくりと高みの見物でもしているといい」
魔軍接近! 間もなく帝国へ到着します!!!
兵士の声がアーデルハイト達の耳へと入った。
「いよいよね……皆、準備して! 魔軍を一匹残らず打ち倒すわよ!」
アーデルハイトの掛け声と共に、砦の上に待機していた弓兵達が前に出た。
矢を構え!
指揮官の声が響き渡る。
弓兵達は帝国へ正面から進軍して来る魔軍に矢を向け、ギリギリのタイミングまで待機した。
放て!!!
指揮官の号令と共に一斉に矢が放たれる。
その光景はまるで天から降り注ぐ矢の雨だった。
放たれ矢は魔軍へと降り注ぎ、次々とゴブリンやオーク達に突き刺さった。
続々と倒れ消滅する中、ついに帝国の正門が開かれた―。
★☆★
正門が開かれると、先頭には黒馬に跨りグングニルを掲げるアーデルハイトの姿があった。
そして、その隣には同じく大剣を背に馬に跨るギルベルトの姿も。
その背後には数千の帝国兵士達が声を上げ、鼓舞をしながら二人の後へと続いた。
「見てなさいレグルス……これが私達、帝国の力よ!」
―雷
激しい稲妻が正面の魔軍の群へと襲いかかる。
リアのバフにより強化されたアーデルハイトの雷は、一瞬にして数十体以上の魔軍を消滅させていた。
「我が帝国に進軍した事を後悔するがいい……魔軍共よ!」
―破撃
ギルベルトが振るった大剣は凄まじい斬撃を放ち、目の前の魔軍を群れを一気に斬り裂く。
上半身を真っ二つに吹き飛ばされた魔物達は、叫び声を上げる間もなくその体を消滅させた。
「さぁ、皆で魔軍を殲滅させるわよ!」
「兵士達も後に続け! 我ら帝国の力を思い知らせてやるのだ!」
うおぉぉぉぉ!!!!!
アーデルハイトとギルベルトと共に帝国軍は魔軍と正面衝突した……。
―その頃、帝国王城。
「…お、何か随分と外は盛り上がってるみてーだな。やっぱりアーデルハイトのやつ、魔軍をリアとヘンリエッタだけには任せてはいられなかったな?」
さてと……。
レグルスの視線の先には、体から首を斬り落とされた闇の竜騎士の姿があった。
だが、その体は消滅する事なく静かに座ったままだった。
「おい、お前
すると、首を切り落とされた闇の竜騎士の体だけが動き出し、切り落とされた頭を自分の首へとはめ込むと、ボキボキと首を鳴らしながら再び蘇った。
「コイツ……どうやら
—————————
あとがき。
最後までご高覧頂きまして、ありがとうございます!
【次回】まさかの不死身の敵を前にレグルスはどうする!?
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