栄冠の節「黒の飛竜」
帝国上空より、突如その姿は現れた。
漆黒の翼を広げながら、この世のものとは思えぬ雄叫びを上げる黒の飛竜の姿に、先程まで賞賛の声を上げていた兵士達の表情は一気に絶望へと変わっていた―。
王城へと急降下したワイバーンは、二万の魔軍を一瞬で消滅させたヘンリエッタ目掛けて口から炎を吐き出した。
「……え」
次の瞬間、ヘンリエッタの姿は業火の炎中へと消えた。
「ヘンリエッタ!!!」
叫びと共に、アーデルハイトとギルベルトがヘンリエッタの元へと走り出す。
ギャオォォォォン!!!
しかし、再びワイバーンの口から炎が吐かれ、二人の行く手を炎が遮った。
「クッ、なんという炎だ……これでは近づけん!」
「ヘンリエッタ……ヘンリエッタは無事なの!?」
すると地面に尻もちを着いた状態のヘンリエッタの姿が炎の中から現れた。
ヘンリエッタの周りには、ヘンリエッタを守る様に
「ナイスだぜリア! よくとっさにヘンリエッタを守ったな!」
レグルスの視線の先には、カドゥケウスの杖を構えるリアの姿があった。
「ぎ、ギリギリ間に合ったわ……後一瞬でも遅れていたら、ヘンリエッタは黒焦げであったぞ……」
しかし、何やらリアの様子がおかしい。
防御魔法を展開しているだけなのに、額には汗を流し、魔法を維持するのが精一杯の表情だった。
…リアの魔力が既に消耗している? たった炎を防ぐだけで一体どれだけの魔力と集中力を消費してんだよ!?
レグルスはワイバーンへと目を向ける。
そしてワイバーンの強さ……そのレベルがレグルスの瞳に映し出された―。
おいおい……マジかよ。
「お前ら! 今すぐこの場から全員退避しろっ! 絶対あのワイバーンと闇のりとは戦うんじゃねーぞ!!!」
レグルスの大声に、その場の全員が異変を感じ取っていた。
この場に居る者達はレグルスの強さは十分に理解している。
だからこそ、レグルスの言葉には今自分達に
「ギルベルト! あなたはすぐにヘンリエッタを連れてここから離れなさい! 私はリアを連れて行くわ!」
「わかりました! 兵士達にはどのように通達をなさいますか?」
「決まってるでしょ! レグルスの言う通り、絶対にあのワイバーンと闇の竜騎士には近づけさせないで! ここはレグルに任せるのよ!」
アーデルハイトの言葉にギルベルトは即座に動いた。
動けないままでいるヘンリエッタを担ぎ上げると、即座に下の階へと飛び降りた。
また、アーデルハイトも激しい魔力の消耗によりフラフラになっているリアの肩を持つと、ギルベルトの後を追いかけながら下の階へと飛び降りた。
「全兵士に告ぐ、絶対にあのワイバーンと闇の竜騎士には近づくな! 攻撃をする事も許さん! 我等は魔軍のみに集中せよ!!!」
ギルベルトの声と共に、唖然としていた兵士達は次々に行動を開始した。
今自分達がやるべき事は魔軍の進軍を食い止める事のみ。
今最も帝国の脅威であるワイバーンと闇の竜騎士をたった一人のレグルスへと託したのだ。
「…流石だぜアーデルハイトにギルベルト。俺の言葉を即座に理解し行動に移すなんて……思わず感激しちまったじゃねぇか。なぁ、お前もそう思うだろ?」
レグルスの目の前には、空中で羽ばたくワイバーンとこちらに視線を向ける闇の竜騎士の姿があった。
黒いワイバーンLv70。
闇の竜騎士Lv80。
レグルスが捉えた瞳には、本来なら
「こいつは、何かのバグか? なんでストーリー中盤前にこんな奴らが突然現れるんだよ……」
★☆★
突如現れた魔軍に、バグレベルの黒いワイバーンと闇の竜騎士の出現。
この時、流石のレグルスも目の前の現実に困惑していた。
―本来ならこの時期の通常の敵のレベルはせいぜい30前後。
なのに何だこいつらは?
既にストーリー終盤のラスボス手間で出てくるレベルじゃねーか!
そもそもこんなヤツら原作のゲームに登場すらしてねぇ
ギャオォォォォン!!!
ワイバーンはレグルスへと炎を吐いた。
炎に直撃し業火に焼かれるレグルスは、炎にその身を包まれながらも分析を続けていた。
「んー、やっぱりLv70の強さだなこりゃ……俺じゃなきゃ他のヤツらだと一瞬で黒焦げだわ」
レグルスは剣を出現させると、一振で炎をかき消した。
「…とりあえず
レグルスはワイバーンの前へと飛び跳ねると剣を振るった。
―ズバッ
ワイバーンの体は真っ二つに別れ、そのまま消滅してしまった。
レグルスの攻撃と同時にワイバーンから飛び降りた闇の竜騎士は、剣を片手にレグルスの前へで構えた。
「さて……いよいよ本命の登場だな」
闇の竜騎士を前に、何故かレグルスは嬉しそうな表情であった。
「どうやらこの世界ではじめて
—————————
あとがき。
最後までご高覧頂きまして、ありがとうございます!
【次回】ヘンリエッタが再び攻撃を再開するのだが……。
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