栄冠の節「圧倒の幕開け」



 ―テュルソスの杖。



 この世界において、カドゥケウスの杖と並ぶ最強の杖だ。


 カドゥケウスの杖には、回復魔法を高める効果と特殊魔法を一段階上昇させる効果がある。

 つまり、リアの場合回復魔法を使用すれば通常より多く仲間を回復する事ができ、バフを使用すれば始めからその効果がした状態となるのだ。


 なのでカドゥケウスの杖はもっぱらリアの愛用杖として多くのプレイヤー達が装備をしていた。


 そして、テュルソスの杖に関しては完全にの杖だった。


 ヘンリエッタ=フォン=ヴェルグ。


 ゲームキャラクターの中で最も魔力が高く、この世界で唯一黒魔法と白魔法を同時に覚え展開させる事の出来る天才。

 そんな最強であるヘンリエッタを更に飛躍的に活躍させる事が出来たのが、このテュルソスの杖だった。


 テュルソスの杖は魔力を高める効果と、を伸ばす効果がある。

 特に重要なのが後者である、魔法の射程が伸びる効果だ。


 リアもそうだが、ヘンリエッタはキャラクターの中で最もキャラクターでもあった。

 もし、リアとヘンリエッタが敵から物理攻撃を受ければ、あっという間に死亡してしまう程の紙耐久なのだ。


 なので、リアとヘンリエッタは常に後衛に配置し、遠距離から支援を行わければならない。

 その為、テュルソスの杖で魔法射程を伸ばす効果はヘンリエッタにとって大きなアドバンテージとなったのだ。



 では、実際にヘンリエッタにテュルソスの杖を装備させた状態で戦うと一体どうなるのか?


 転生する前のレグルスがラスボスであるアーデルハイトの帝国軍と戦った際、帝国軍のさせたのがテュルソスの杖を装備したヘンリエッタだった。


 更に驚くべきところは、ヘンリエッタ自身は帝国内には足を踏み入れてはいなかったのだ。


 このバグとも言える魔法射程は、プレイヤー達の間でもとして全ての攻略サイトでは文句なしのSSS評価。


 さすがに運営から修正されると思いきや、結局修正される事は無くヘンリエッタとテュルソスの杖は全プレイヤーにとって完全に必須の存在となっていたのだ。



 ―テュルソスの杖を構え、左右に黒魔法と白魔法の球体を出現させたヘンリエッタ。


 レグルス達と帝国中の兵士達が見守る中、ヘンリエッタはついに攻撃に出た。



「…では、遠慮なくいかせてもらいます……」



 全てを呑み込みし黒き闇よ、無に帰せ



 ヘンリエッタの詠唱と共に、黒魔法の球体は魔軍の頭上へと飛んで行った。



 ―黒洞



 黒魔法の球体は大きく膨れ上がり、魔軍を呑み込むと一瞬で呑み込んだ魔軍と共に消え去ってしまった。


 あまりの一瞬の出来事に、全員が言葉を失っていた。



「…ちょっと……一体何が起こったのよ……」


「うーんそうだな……多分今ので殺ったんじゃねーか?」



 …………は?



 レグルス以外の全員が同時に声を出した。



「…ではレグルス、次も遠慮なくいかせてもらいますよ……」


「あぁ、どんどんぶちかましてやれヘンリエッタ!」



 全てを照らす白き光よ、打ち消せ



 またもヘンリエッタの詠唱と共に、白魔法の球体は魔軍の頭上へと飛んで行った。



 ―白光



 白魔法の球体はそのまま弾け飛ぶと、物凄い光を放った。光に照らされた魔物達は塵となりあっという間に消滅してしまった。


 またもや一瞬の出来事に、全員が言葉を失っていた。



「うーんそうだな……多分今のも殺ったんじゃねーのか?」



「……………」



 もはや誰もレグルスの言葉に反応する気すら起こっていなかった。



「…アーデルハイト様……我等は今、夢でも見ているのでしょうか?」


「…そうねぇギルベルト……私もそう思いたいのだけど……どうやらこれは現実みたいだわ……」


「おー! ヘンリエッタはとんでもない奴じゃな! もうあっという間に二万の軍勢を消し去ってしまったぞ!」


「流石ヘンリエッタ! やっぱりこの世界でもヘンリエッタは必須だったぜ! 苦労してスカウトしたかいがあったわ!」


「…あ、あまり褒められると……恥ずかしいです……」



 う……うおぉぉぉぉ!!!!!



 すると突然帝国中の兵士達が声を上げた。

 どうやらヘンリエッタの圧倒的強さを前に沸いてしまった様だ。



「…どうだヘンリエッタ? 皆お前の力にビビり散らかしるぜ!」



 レグルスはヘンリエッタの頭を撫でた。

 ヘンリエッタも自分を見上げ賞賛する兵士達の顔を見て、喜ばしい表情をしていた―。



 ギャオォォォォン!!!



 突如激しい魔物の声が上空から響き渡った。



 ―え?



 全員が一斉に上空へと顔を上げた。


 そこには、天より帝国に向かって急降下して来ると、ワイバーンに跨る漆黒の鎧を纏った騎士の姿があった。



「…まさか……あれは闇の竜騎士……!?」




 —————————

 あとがき。

 最後までご高覧頂きまして、ありがとうございます!


【次回】闇の竜騎士の襲来!?


 少しでも「面白い!」「応援したい!」「続きが気になる!」と思った方は、フォロー、★評価、レビューをして頂けますと作者の励みになりますので何卒。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る