栄冠の節「急劇の展開」



 ―栄冠の節。



 この世界のはじめての王が戴冠したとされる節。


 栄光と共に、次の世代へと移り変わる時期だ。


 アーデルハイトとレグルス達は、エリスリーゼ帝国学院へ入学する為の準備の日々に追われていた。

 学院への入学は既に来週に迫っていたのだが、ここでもある問題が発生していた―。



「…ヘンリエッタ……ヘンリエッタ! あなた帝国へ来てからもまたじゃない! ちゃんと入学の準備は進んでいるんでしょうね!?」


「……」


「何だ? ヘンリエッタのやつ帝国へ来てもまだずっとしてんのか?」



 ドアの前でため息をついているアーデルハイトに、レグルスが話しかけて来た。



「まったく……ここへ来た時は、ヘンリエッタはもう自分とお父様とは白黒つけたって言ってたから少しはホッとしてたのに……学院の入学話をした途端にずっとこの調子よ!?」


「……だって、いきなり来週には帝国学院へ入学なんてあんまりじゃないですか! アーデルハイトは、引き籠もりでコミュ障のあたしをですか!? 非常識です!!!」


「まぁ、その気持ちは分かるぜヘンリエッタ。連れて来られていきなり学校ってのは正直キツいよなぁ……」


「何言ってるのよ!? 元々はあなたがリアとヘンリエッタを推薦してくれって言ったんでしょ! もう学院にはあなたを含めて三人分の入学許可はもらったんだから、ちゃんと責任もってよね!」



 ギィーッ



 突然、ドアの隙間からヘンリエッタが覗き込んで来た。



「……レグルス、今の話は本当ですか……?」


「ん? あ、あぁ…確かに俺がアーデルハイトにリアとヘンリエッタを推薦してくれって頼んだのは本当だぜ?」


「…………最低ですね」



 バンッ!



 ヘンリエッタは再びドアを閉めて引き籠もってしまった。



「はぁ……とにかく、私も自分の入学やらいろんな手続きで忙しいのよ。だから、ヘンリエッタの事はレグルス、あなたがちゃんと責任持って何とかしてよね? それじゃあよろしく……」



 アーデルハイトはレグルスをひとり残して去って行ってしまった。



「―ったくよ、リアとヘンリエッタの二人を帝国へ引き込んで仲間に出来たのは良かったが……何でまたこんな面倒な目に合わないといけねーんだよ……」


「お、レグルスではないか! どうかしたのか?」



 頭を抱えるレグルスの前にリアが現れた。



「あぁ……リアか、ヘンリエッタが帝国へ来てからもずっと部屋で引き籠もってんだよ」


「あー、先日お前達が連れて来たと言う少女の事か……そう言えば余はまだそやつとは会って無かったな……」



 リアはそう言って、部屋のドアをノックした。



「おい、ヘンリエッタと言ったな? 余はリアと申す。これから一緒にお茶でもどうだ?」


「……結構です」


「む、そうか……では、ぬいぐるみ鑑賞などはどうだ? 余の自慢のコレクション達を特別に見せてやるぞ!」


「……興味はありますが、部屋から出るのは嫌です」


「おいレグルス、こやつワガママ過ぎるぞ!」


「…お前が言うなよ」



 するとリアは、を取り出した。



「……おい待てリア、まさかとは思うが……」


「シシシ、少し離れていろレグルス……少々に行くぞ」



 ―ドンッ!



 リアは杖から魔弾を飛ばし、部屋のドアをぶち破ってしまった。



「わ、私の部屋のど、ドアがぁぁぁぁっ!? な、なななな何やってるんですかあなたは!?」



 部屋の中で慌てふためくヘンリエッタの姿があった。



「うむ! これでもう引き籠もる事も出来まい!」


「…ちょ、こ、ここの人達は何でこうも強引なんですか!?」



 ―すまんなヘンリエッタ。俺もそう思うわ……。




 ★☆★




 三人はリアが破壊したドアの後始末をしていた。



「…何故余がこんな事をしなければならないのだ」


「仕方ねぇだろ……こんなのアーデルハイトに見つかったらめちゃくちゃうるさいぞ?」


「……当然です。ドアが無いと引き篭る事が出来ませんから」



 ブツブツと言いながら掃除をしていると、突如ギルベルトが血相を変えて走って来た。

 かなり慌てている様子で、珍しく息切れを起こしていた。



「はぁ……はぁ……お、おい。アーデルハイト様はここに居るか?」


「お、ギルベルトどうしたんだ? アーデルハイトならここへは居ないぜ?」


「そ、そうか……それより、何故部屋のドアが破壊されている?」


「まぁ〜いろいろあってな! それより、そんなに慌ててどうしたんだよ?」



 ギルベルトは深呼吸をして、少し落ち着いた。

 そして、真剣な表情でレグルス達に答えた。



「お前達……落ち着いてよく聞けよ? 今この帝国へ謎の軍が進行しているとの情報が入った」


「謎の軍だと?」



 その言葉にリアとヘンリエッタも手を止めた。



「あぁ……しかも、明日には帝国へと着く程の距離だ。事態は急を要する所まで既に迫って来ている」


「それで、その謎の軍ってのは何処の国の連中なんだよ?」


「……」


「どうしたのだギルベルト? 早く答えぬか」



 ギルベルトは額の汗を流しながら、その口をゆっくりと開いた……。



「闇の竜騎士率いる、ゴブリンとオークの軍団……その数およそだ」




 —————————

 あとがき。

 最後までご高覧頂きまして、ありがとうございます!


【次回】帝国に迫る魔軍とは!?


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