蒼月の節「白と黒の温もり」
―しばらくして、ヘンリエッタは目を覚ました。
「…あら、やっと気がついたのね!」
ベッドの上で横になる自分の隣には、椅子に座りながらヘンリエッタを見つめるアーデルハイトの姿があった。
「……あたしは……この部屋はどこですか?」
「あなた数時間程ずっと気を失っていたのよ? ここは家政婦さんの話だと、あなたのお母様の寝室みたい。あなたの部屋はかなり散らかっちゃったから、今家政婦さんとレグルスが掃除をしているわ」
「……お母さんの寝室……」
ヘンリエッタは少し落ち着いた表情を見せた。
「おーい……やっと部屋片付いたぜ……」
レグルスが部屋のドアからダルそうに入って来た。
「お疲れ様レグルス。家政婦さんには上手く誤魔化せたのかしら?」
「あぁ……みんなで
じーっと見つめて来るレグルスに、アーデルハイトは視線を逸らし知らんぷりした。
「……あの、あたしはこれからどうすればいいのでしょうか……」
「そうねぇ……とりあえず今日はゆっくり休みなさい。後日またレグルスと一緒に出直して来るから。その間にあなたも荷物をまとめたり、お父様との話もあるでしょうから」
「……でも、本当にあたし何かが……あ、
「アーデルハイトでいいわよ。もちろんよ! むしろ、私達の方からお願いしてるんだから。だからあなたもお父様と……そして自分自身にしっかり
アーデルハイトはヘンリエッタの手を取って握った。
ヘンリエッタは顔を赤くし、少し照れくさそうにしていたが、アーデルハイトの握る手は温かくヘンリエッタはその温もりを心から感じ取っていた。
「―じゃ、今日はこの辺でおいとましますか! 帝国へ帰るぞ、アーデルハイト」
「えぇ、そうするわ。じゃあねヘンリエッタ、また明日!」
「また明日なヘンリエッタ!」
アーデルハイトとレグルスはそう言って部屋から出て行った。
「……また明日……か」
ヘンリエッタは布団を被り、しばらく布団の中でニヤニヤした―。
★☆★
―レグルスとアーデルハイトは帝国へと瞬間移動で帰国した。
「…俺なんかもう疲れたわ……もう部屋で休ませてもらうわ……」
「待ちなさい。ちゃんとギルベルトとリアの様子を確認しておかないと……リアの子守りを押し付けちゃったんだから!」
「えぇ〜めんどくせーなー……」
アーデルハイトとレグルスはリアの部屋へと向かった。
すると、部屋の中から何やら楽しそうな二人の声が聞こえていた。
「…あら? やけに楽しそうね。一体何をしているのかしら……」
「
「……そんなはずないでしょ。ギルベルトとリアよ?」
「……まぁ、ねーわな」
アーデルハイトはドアをノックしてドアを開けた。
「おー! やっと帰って来たな二人共! 遅かったではないか」
「お帰りなさいませ、アーデルハイト様」
「……おい、ギルベルト。お前が手に持ってる
レグルスとアーデルハイトの視線の先には、
「それがなぁレグルス! ギルベルトは本当に凄いヤツだぞ!? 余にこんなにも
「そう褒めるな。別に大した事ではないさ……ほら、今度はホワイトドラゴンちゃんのぬいぐるみだぞ!」
ギルベルトはとても可愛らしい白いドラゴンのぬいぐるみをリアへと手渡した。
リアの手元には、ドラゴンの他に多数の動物のぬいぐるみがあった。
何と全てギルベルトの手作りのぬいぐるみであった。
「……おい、アーデルハイト。ギルベルトには
「あー、ギルベルトは昔から手先が器用なのよ……裁縫もそうだし、料理の腕もプロ並みよ?」
「人は見かけによらないって言うが、この帝国へ来てから
「ふふふ、そこが彼のいい所なのよ」
「―っで、肝心のアーデルハイトはどうなんだ? 裁縫も料理も
「…………」
「おい」
「あら! ギルベルト、今度は何を作ってるのかしら?」
「アーデルハイト様、今度は黒のユニコーンくんです。リアがとても好きみたいなので」
「ギルベルト、余はお前の事が気に入ったぞ! ほれ、アーデルハイトにも一つ分けてやろう」
「こら! アーデルハイト、無視するなよー!」
その後、リアの部屋では四人の楽しそうな笑い声が夜まで続いたそうな―。
—————————
あとがき。
最後までご高覧頂きまして、ありがとうございます!
【次回】帝国に衝撃の事態が迫る!?
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