蒼月の節「ぶっ壊れの天才」



 アーデルハイトは、リアの前に槍を向けた。


 戦血により正気を失ったアーデルハイトは、もはや冷酷なラスボスそのものだった。



「―余を本気で殺るつもりなのか……?」



 はは……アッハハハハハ!!!



 追い込まれたせいなのか、リアの中で



「調子に乗るなよクソアマがあぁぁぁぁぁ!!!」



 リアはを展開した。

 訓練場の床は、巨大な光の魔法陣が浮かび上がっていた。



 ―ったく、どいつもこいつも頭に血逆上せやがって……。



「あぁぁぁぁぁ!!!」


「はぁぁぁぁぁ!!!」



 槍を振りかぶるアーデルハイト。

 杖と共に白魔法を展開するリア。


 両者の手から最後の一撃が放たれようとした瞬間だった―。



 ―ヒュッ



「!?」



 なんと、一瞬にして二人の武器が手元から

 二人の間には、槍と杖を両手に持ったレグルスの姿があった。



「…おい、お前ら。これはただの腕試しだぞ……誰がをしろって言ったよ?」



 ―ゾクッ



 アーデルハイトとリアは、レグルスに巨大な獅子の幻覚を見た。

 まるで自分達が獲物かの様に思える威圧感。


 レグルスの言葉に、二人は一瞬にして我に返った。



「―あれ、私は何を……うっ!」



 元に戻ったアーデルハイトだったが、既に残りの体力は限界を迎えており、毒がそのとどめを刺す寸前だった。



「―ったく、本当に世話がやけるぜ……」



 レグルスはすぐさまアーデルハイトに回復と解毒の治癒を施し、アーデルハイトはすっかりと体力を回復させた。


 さて、お次はと……。


 レグルスは壁に横たわるリアの元へと駆け寄った。



「ほら、次はリアの番だぞ。じっとしてろ」


「…いい。それより、余に杖を返せ。回復は余でする……」



 レグルスはリアに杖を返すと、リアは一瞬で自分を完治して見せた。



「さすが、最強の聖女様だな」


「フン、当然だ。余を誰だと思っている!」



 すると、アーデルハイトが二人に近づいて来た。



「あ、あのう……私、何かまずい事しちゃった……?」


「貴様、何も覚えていないのか?」


「え、えぇ。あなたから魔法を受けてそのまま意識が無くなってたみたいだから……もしかして、私負けたの?」


「いや、この勝負はだな。審判の俺がそう判定した」


「ひ、引き分けだと!? どう見ても余の方が圧勝であったではないか!」


「いーや、引き分けだ。リアは後一発でお終いだったし、アーデルハイトも後一回毒が発動してたら終わりだったからな!」



 むーっ!



 納得のいかない様子で、リアは膨れっ面をした。



「馬鹿野郎、お前ら本来なら失格だからな!? 誰が本気の殺し合いをしろって言った。俺が仲裁してなきゃ、最悪二人共死んでたぞ?」



 アーデルハイトとリアは、少し反省した様子で目を逸らした。



「わ、悪かったわよ。よく分からないけど、私がムキになってたのは事実だし……」


「ま、まぁ余も少しやり過ぎた…かな? すまなかったな……あ、


「え、今私の名前……」


「な、なんだ!? ムチムチの方がよかったのか?」


「そ、そんな訳ないでしょ!? 何言ってんのよ!」


「あ、今余の名前を……」



 二人は何やらお互い恥ずかしげにやり取りしていた。



 はぁ……ほんと、どっちもとんでもねー皇女様と聖女様だぜ……。




 ★☆★




 ―翌日。



 レグルスは早々に、次ののスカウトの準備をしていた。



「よし! これだけあれば問題ないな。後はアイツの居る場所へ転移すればいいだけだが―」


「それで、次は何処に行く気なの?」


「…何で当たり前の様に俺の部屋に居るんだよアーデルハイト」


「当たり前でしょ! 前にも言ったけど、推薦状を書くのはこの私なのよ?」


「いや、もうついて来なくていいだろ? 大人しく帝国で待ってろよ」


「なら、が代わりについて行こうか?」



 何でリアまで居るんだよ!?


 二人の間に何故か、リアの姿があった。



「レグルス、余は暇だ。遊んでくれ」


「……ガキかよ」



 ―数十分後。



「―おい、何故この俺がをしなくてはならんのだ」



 不機嫌そうにリアの隣に立つギルベルトの姿があった。



「悪いなギルベルト。俺とアーデルハイトの用事が終わるまで、そいつの相手をしてやっててくれ!」


「お願いギルベルト。あなたにしか頼めないのよ」


「アーデルハイト様がそう仰るのであれば……子守りをするのは不本意ですが」


「おい、デカいの。余を子供扱いするな」


「じゃ、頼むわ!」



 レグルスはそう言い残して、アーデルハイトと共に瞬間移動した。



「おい、デカいの。ぬいぐるみは好きか?」


「……」




 ★☆★




 ―よっと。



 レグルスとアーデルハイトは、とある屋敷の前へと転移した。



「レグルス、ここがあなたの言う二人目の居る場所なの?」


「あぁ、そいつはここに住んでるのさ」


「…まさかとは思うけど、またじゃないでしょうね?」


「お! さすがアーデルハイト様、よくお分かりで」


「はぁ……なんだかもう帰りたくなって来たわ……」



 するとレグルスは急に真顔になり、屋敷の方へと視線を向けた。



「…なぁ、アーデルハイト。ってこの世に居ると思うか?」


「天才? そうね……まぁ、あらゆる分野でそう呼ばれる優秀な人達は居るとは思うけど?」


「いや、そうじゃねーんだ。俺が言いたいのはの事さ」


「本物の天才? 一体どういう意味よ?」



「…アーデルハイト、そいつと会ったら世界の常識ってやつが今日で崩れるぜ。それくらい今回のやつはてるんだよ―」




 —————————

 あとがき。

 最後までご高覧頂きまして、ありがとうございます!


【次回】ぶっ壊れ級の天才とは!?


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