蒼月の節「聖女の秘密」



 リア=ヴァレンタインの強さの秘密とは?



 レグルスが絶対に仲間にしなければならないと言った二人の内の一人。


 とんでも聖女とまで呼ばれるワガママ少女が、何故最強と呼ばれる聖女なのか。



 実は、リアは白魔法を得意とする白魔道士だった。

 と同時に、回復魔法にも非常に長けており、ヒーラーとしても重宝される存在だ。


 では、何故ヒーラー職のリアが最強と呼ばれるのか?



 その秘密はリアの持つ強化魔法―『バフ』が強過ぎるからだった。


 リアは原作のキャラクターの中で、最も強化魔法を覚えるキャラクターだ。


 攻撃・防御・回復・速度を強化するありとあらゆるバフを扱え、自身と仲間の戦力を一気に上げる事が出来る。


 齢十二のリアが、修道院を数千の兵士達からたった一人で食い止め壊滅させる事が出来たのも、自身をバフで強化したからであった。


 レグルスが原作のゲームで、ラスボスであるアーデルハイトの帝国軍と戦う際は、必ずリアのバフで自身と全ての仲間を強化して挑んだ。


 帝国軍に勝利出来たのも、このリアのバフがあったお陰と言っても過言ではない程重要な存在であった。


 なので、リアがとんでも聖女であろうとも、仲間にする以外の選択肢はレグルスには無かったのだ。


 なぜなら、リアは帝国軍との戦争がはじまると、自動的に王国の仲間になるシナリオだからだ。


 レグルスの居た王国とノートル・デア大修道院は協定を結び帝国と対立した。


 だからレグルスは、そうなる前にリアを帝国側の仲間にすると同時に、リアを引き取る事によってノートル・デア大修道院にを売った。


 そのお陰で現在修道院は、帝国側に非常に好意を抱いている。


 つまり、リアを帝国の仲間にし修道院とも友好的な関係を作る二つのメリットをレグルスは同時に叶えてみせたのだった……。



 ―さて、そんなリアだが、早速お得意のバフを開始早々自身に付与していた。



 ―防御力上昇


 ―速度上昇


 ―魔力上昇


 ―自動回復


 ―即死無効



 おいおい、リアのやついきなりもバフを付与しやがったぞ?

 流石に開幕からやり過ぎだろ……アーデルハイトとのステータスの差がもうついちまったぜ。



 アーデルハイトLv40

 リアLv45



 元々のレベルはリアの方が上だ。


 しかし、タイマン勝負になれば圧倒的に物理攻撃が上で実戦向けなアーデルハイトの方が有利。

 あくまでもリアの強みは、仲間を強化するサポートタイプだからだ。


 だが、その事はリア自身もよく分かっている。


 だからこそ開幕からバフを連発し、アーデルハイトとのタイマン対策とステータスを上昇させたのだ。



「行くぞムチムチ。少しは余を楽しませてくれよ?」




 ★☆★




「―強化魔法……私と対等にやり合える様に自分を強化したわけね」



 アーデルハイトはリアの出方を伺っていた。


 しかし、リアの開幕からのバフの連発付与はアーデルハイトにも予想外の事であった。

 バフを五つも付与したリアと、何も付与していないノーマル状態のアーデルハイトとでは既に大きな差が生じている。



 これ以上の差はつけられない―。


 アーデルハイトは槍を強く握り、先制攻撃を仕掛ける事を決意した……。



 ―ビリ……バリバリバリバリッ!



 槍の先端に雷を集中させ纏わせる。


 アーデルハイトもリアと同様、いきなり開幕から気だった。



「行くわよ? 精一杯防御しなさい……」



 アーデルハイトは勢い良くリアへと突進した。



 ―戦技・雷槍



 雷を纏った凄まじい槍の刺突がリアに放たれた。



「ほう、雷を槍に纏わせられるのか……」



 ―ガキィン



 雷槍は、リアの防御魔法の壁によって防がれてしまった。



「まだまだよっ!」



 アーデルハイトは更に槍に雷を込め、先端から放たれた雷は防御魔法の壁を貫通しリアへと直撃した。



「どうかしら? 私の雷の



 しかし、リアは何食わぬ顔で服の汚れを手で払った。



「そうだな……痺れたぞ?」



 ―自動回復



 リアのHPはあっという間に満タンへと戻った。



 ―リアのやつ、アーデルハイトからダメージを受けてもあっという間に回復してやがる。

 元々魔防が高いステータスだし、アーデルハイトの雷じゃあかすり傷程度だろうな……。



「今度は余の攻撃だ。踏ん張れよムチムチ?」



 ―吸収



 アーデルハイトに向けられた杖は、アーデルハイトの体からリアの体へと吸収した。



「―うっ、何よこれ……急に体力が消耗した?」



 リアのやつ、本当に。既に体力満タンなのに、わざわざ吸収を使ったぞ?

 いや、むしろわざと遊んでんのか?



 レグルスの読み通り、リアの表情はまるで子供をいじめる大人の様に楽しんでいた。


 バフによるステータスの上昇、どんなダメージを受けても自動的に回復する余裕の安全策。


 まさに隙のない万全の対策に、勝負は早くもリアに傾いていた。



 さぁ、どうすんだアーデルハイト?

 早くしねぇと、リアの恐ろしさはまだまだこれからだぜ―。




 —————————

 あとがき。

 最後までご高覧頂きまして、ありがとうございます!


【次回】アーデルハイトに異変が!?


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