蒼月の節「暴君の聖女」
リア=ヴァレンタイン。
かつて、ノートル・デア大修道院が襲撃された時、突如として姿を現した少女。
リアは、数千の兵士達を
それだけではなく、リアは兵士達によって傷つけられた修道女達を一瞬にして治癒し、修道院の人々はリアを女神の使い『聖女』として崇めた。
この時、リアは僅か十二歳の時だった―。
しかし、リアが十五歳になる頃、修道院の人々はリアを聖女として崇めた事を
「このお菓子甘くない、もっと甘いお菓子持って来て!」
「このご飯美味しくない、もっと美味しい物食べたい!」
「この部屋地味過ぎる、もっと可愛いお部屋が欲しい!」
「お小遣いが少ない、もっとお金ちょうだい!」
「あのハゲ神父嫌い、もっとかっこいい人に変えて!」
これは嫌だ、あれが良い。
こうして、あぁして。
リアは成長を重ねる度に、要求という名のワガママがどんどんエスカレートしていった。
あれは聖女などではない、
そう言い残して、修道院を去る者も増えていった。
しかし、ノートル・デア大修道院が今もこうして平和に保たれているのもまたリアの存在のお陰だった。
近隣国ではリアの強さ―とんでも聖女の噂は広まっており、修道院に手を出そうとする国はひとつもいなかったのだ。
そんなこんなで六年目、今年十八歳となるリアの前に現れたのがレグルスと帝国皇女アーデルハイト。
今日この日を境に、ノートル・デア大修道院の行く末は良くも悪くも変わろうとしていた―。
「―それで? お前達は、余になんの用なのだ?」
「あぁ、単刀直入に言うぜ。リア、俺達と一緒に帝国へ来い! そして俺達の仲間になるんだ」
「…本気で言ってるのか?」
「本気じゃなかったら、わざわざこんな所まで来ねーよ」
―プッ、プハハハハハ!!!
部屋中にリアの笑い声が響き渡る。
「…はぁ、こんなに笑ったのは久しぶりだぞ? 本当に笑わせてくれるな。余にお前達の仲間になれだと?」
「あぁ、何度も言わせんなよ。こっちは
―フッ。
「愚かだな。余は聖女だぞ? ここに居れば何不自由無く毎日好きなように暮らせる。お前達の仲間になるメリットがまるで感じられないな」
「…帝国に来れば、それなりの待遇は約束するぜ? ってか、お前ここで
「ば、バカを言うな! ここの人々は皆余に感謝してるのだぞ! 余の事を嫌うわけがなかろう!?」
「はぁ……無自覚ってほんと恐ろしいな。マジでとんでも聖女だぜこりゃ……」
すると、レグルスはリアの前で人差し指を立てて見せた。
「取引だリア。お前が俺達の仲間になるなら、今お前が
「余の一番欲しい物をだと? 無理無理!そんなの用意出来るはずがない!」
「でも、俺が渡した
「あぁ……これのことか」
リアは袋から金平糖を取り出し、口の中へ放り込んだ。
「確かにこれは余が欲しかった菓子だが、この程度の事で余を
「いーや、俺がお前に渡したかった本命は
そう言って、レグルスはある物を取り出しリアに見せつけた。
すると、リアの表情が一変する。
「ま、まさか……そ、それは……!?」
顔中から吹き出る汗、驚きで見開く瞳、そして今にも喉から手が出そうな程リアは身を乗り出していた。
「見ろ! この世でひとつしか存在しない、最古の
レグルスは両手で天にクマちゃん人形を掲げて叫んだ。
その光景に目を輝かせるリア。
そして何故かアーデルハイトまでもが、クマちゃん人形に目を奪われていた。
「クマちゃーん! 欲しい、絶対欲しい! お願い、そのクマちゃん人形を余にちょうだい!!!」
「ククク、なぁ欲しいだろ? なら、このクマちゃんが欲しければ俺達の仲間になるよな?」
「む、そ、それは……」
「あれー? このクマちゃん人形欲しく無いの? どうするクマちゃん? リアは君のこといらないんだってさ〜」
『じゃあ、僕はアーデルハイトちゃんの物になろうかな! 本当はリアちゃんが良かったのに、残念だな……』
「ま、待って! お、お願い……クマちゃんは余に……余にください!!!」
「―じゃあ、仲間になってくれるよな? リア
「わ、わかった……余は、余はお前達の仲間になってやる!!!」
―交渉成立。
はぁ……マジでゲームと同じ
リアを仲間にする為に、世界中の何処にあるかも分からない『最古のクマちゃん人形』を探すクエスト。
攻略サイトの情報と瞬間移動を覚えてなけりゃ、絶対諦めてたもんな……。
レグルスからクマちゃん人形を手渡されたリアは、とても嬉しそうにクマちゃんを抱きしめていた。
「いいなぁ、最古のクマちゃん人形……」
何故か羨ましそうに眺めるアーデルハイトであった―。
—————————
あとがき。
最後までご高覧頂きまして、ありがとうございます!
【次回】アーデルハイトとリアが正面衝突!?
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