蒼月の節「最強の聖女」



 レグルスは早速身支度をしていた。


 絶対に仲間にしなければならない二人。

 その内の一人を今からスカウトしに行くところだった。



「さてと……必要な物はこれでいいが、この世界でのがゲームと同じ性格だとしたら、かなり面倒だな……」



 レグルスはため息をついた。



「あなたがそんなに弱腰なんて珍しいわね」


「―っ、アーデルハイト!?」



 いつの間にか、アーデルハイトが部屋の中に入っていた。



「おいおい、何でこんな所に居るんだよ?」


「決まってるじゃない。ついて行くのよ」


「はぁ!?」


「当然でしょ! 私があなたの為に推薦状を書くのよ? それに、推薦に値する人物なのか私自身の目で見極めさせてもらうわ」



 おいおい嘘だろ……アーデルハイトがついて来るなんて予想もしてなかったぞ!?

 ってか、絶対ついて来たらダメだろ!アーデルハイトとアイツらを初対面で会わせたら、絶対面倒な事になる!!!



「―なぁ、アーデルハ……!?」



 じーっ。



 あぁ、ダメだこりゃ。

 この目は、絶対何がなんでもついて来る目をしてる……。



「だぁーっ! もう、わかったよ! その代わり、交渉は全部俺がするから邪魔だけはするなよ!?」


「えぇ、もちろんよ! 私はこの目で確かめたいだけだから」



 レグルスは再び大きなため息をついた。



「じゃあ、これから転移するぜ……俺の肩に手を置きな」


「えぇ、わかったわ!」



 ―ピョン!



 アーデルハイトは嬉しそうに、レグルスの両肩に手を置いた。



 …ったく―瞬間移動。




 ★☆★




 ―レグルスとアーデルハイトは、とある修道院の前へと転移した。

 とても大きな大修道院で、歴史ある風格を漂わせていた。



「…ここに、あなたが推薦したい人物が居るの?」


「あぁ。このノートル・デア大修道院には、とんでもねー聖女が居るんだよ」


「とんでもねー聖女?」


「あぁ、とんでもねぇ……聖女だ」



 そう言って、レグルス達は修道院の中へと向かった。



 ―修道院の大聖堂は美しいステンドグラスに囲まれており、中央には巨大な女神像と聖歌隊の祈りの歌声が響いており、とても美しい空間だった。



 レグルスは一人の修道女へと話しかけた。



「すまない、少し聞きたい事があるんだが」


「はい。何でございましょうか?」


「ここに聖女が居ると思うんだが、会えないだろうか?」


「え、聖女様にですか……?」



 おい、真面目そうな修道女が、聖女と言う言葉を聞いた瞬間に露骨に嫌な顔をしたぞ。


 アーデルハイトだけが、何やら不思議しうな表情をしていた。



「頼む、急用なんだ。今すぐ聖女に会わせて欲しい」


「わ、分かりました。では、私について来てください……」



 二人は修道女の後へとついて行った―。



 大聖堂から少し歩くと、何やら修道院には似つかわしくないド派手なピンク色の建物に案内された。



「うっわ、何よこの建物。趣味悪いわね……」


「ここが聖女様のお住いとなっております」



 うわー、こりゃ完全にゲームの世界と一緒だな……って事は、間違いなくで確定だな―。



「では、少々この場でお待ちくださいませ。聖女様にご面会の許可を頂いて参りますので……」


「あ、その前にこれ。多分てか絶対面会しないって言うと思うから、そしたらを渡してくれるか?」



 レグルスは修道女に小さな袋を手渡した。



「は、はぁ……承知致しました……」



 シスターは袋を受け取ると、ピンク色の建物の中へと入って行った。



「…ねぇ、レグルス。あなた、さっき何を渡したの?」


「ん? あぁ、アレを渡さないと、絶対に面会してくれないイベントなんだわ」


「イベント? よく分からないけど、何だか変な聖女みたいね……」



 いや、それは違うぜアーデルハイト。

 変な聖女みたいじゃなくて、なんだよマジで。



 すると、建物から修道女が駆け足で出て来た。



「あ、あなた一体何を渡されたのですか!? あなたの言う通り最初は面会を拒否されたのですが、袋を渡して中を覗いた瞬間、会ってもよいと! こんな事初めてですよ!」


「な? 言ったろ。よし、じゃあとんでも聖女とご対面といきますか! 気合い入れろよアーデルハイト? アイツの前だと体力がいくらあっても足りねーからな」


「―? わ、わかったわよ……」



 二人はピンク色の建物の中へと入っていった―。




 ★☆★




 ―建物の中は、まるでおとぎ話に出て来るかの様なメルヘンの空間だった。


 ユニコーンの置物。

 ピンク色と紫色の家具。

 更には、おびただしい程の量のぬいぐるみ達が飾られている。



 アーデルハイトはその光景を前に、既に顔色を悪くしていた。


 そして、部屋の中央にある天使の玉座にだらしなく座る一人の少々が居た。


 ピンク色の髪に、ハートのリボンを付けた派手な少女だ。



「お前が余に会いたいと言っていた男だな?」


「あぁ、そうだ。その証拠にソレを受け取ったろ?」


「うむ。お前、よく余がコレを欲しがっていると分かったな。褒めてやるぞ!」



 アーデルハイトはレグルスの背後でこっそりと話しかけた。



「ちょっとレグルス。まさかあの派手な子があなたの言っていた推薦したい人物なの?」


「あぁそうだぜアーデルハイト。とんでも聖女にして、この世界での聖女―」



 リア=ヴァレンタインだ。




 —————————

 あとがき。

 最後までご高覧頂きまして、ありがとうございます!


【次回】とんでも聖女の正体が明らかに!?


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